【地名の由来8】張振甫さんにちなんだ千種区「振甫町」 2012/8/2

優しい顔立ちの初代張振甫像

千種区に「振甫町(しんぽちょう)」という町名があります。これも私が気にしていた町名です。「いったい、振甫って何?」という感じでした。実は、昔中国の明国から帰化した「張振甫」というお医者さんの名前にちなんでいるというのです。

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今もその振甫町に張振甫さんのお墓があるというので、探しに行きました。地下鉄東山線の池下駅から車で数分のところに「振甫町」はあります。ようやく見つけた「張振甫墓所」という看板には、こう書いてありました。

張振甫は明(今の中国)の人、明末の動乱を逃れ、曹数也らと共に帰化した。京都から江戸(東京)に向う途中、知遇を得た尾張藩徳川義直から侍医となるよう懇請されたが固辞し、広く庶民の医療に携わると共に公用あるときには出仕した。彼は食物に精通し、食中毒の治療に優れていた。

江戸でいえば、小石川療養所で庶民の治療に尽くした「赤ひげ」のような人だったのですね。こんなエピソードが残されています。ある人が雉(きじ)を食って腹痛を起こしてやってきたところ、張振甫はすかさず「雉を食って食中毒を起こした例はない。これは雉が食べた半夏(はんげ、薬草の一種)に当たったのだ」と見抜き、見事に治療に成功したというのです。

「張」さんは今は姓を「振甫」に改めていますが、その末裔の方は今も医師として活躍されています。日本では個人名が地名になるということは極めてまれなのですが、さらにこんな素敵なエピソードを残してくれている地名に感謝したい思いです!

張振甫さんの温かい心が伝わってくる町名の話――でした。

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プロフィール

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ノンフィクション作家

1945年長野県松本市生まれ。東京教育大学(現筑波大学)、同大学院博士課程修了。筑波大学教授、理事・副学長を務めるも、退職と同時にノンフィクション作家に転身。

柳田国男研究をベースに、学問の狭い枠を超えた自由な発想で地名論を展開。最近出した『名古屋 地名の由来を歩く』(ベスト新書)、『地名に隠された「東京津波」』(講談社+α新書)はそれぞれご当地でベストセラーに。新著『名古屋「駅名」の謎』が好評発売中。

その他、「地名を歩く」シリーズでは「京都」「東京・江戸」「奈良」編、「駅名の謎」シリーズでは「大阪」「京都奈良」「東京」がある。テレビ・ラジオなどでも活躍。博士(教育学)。

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