高校生ナンバーワン投手・高橋純平(県岐阜商)の夏を振り返る 2015/7/30

今年、全国で最も注目を集めた球児の一人が県岐阜商・高橋純平投手(3年)でした。3月のセンバツ甲子園初戦で球速150キロをマークし、チームのベスト8入りに貢献。プロ球団スカウトからの評価も高く、高校生ナンバーワン投手として“最後の夏”の快投が期待されていました。

しかし高橋はこの夏、ケガなどで岐阜大会準々決勝のみの登板にとどまりました。高橋を見ようと球場に詰めかけたファンも多く、3回戦(大垣市北公園野球場)・4回戦(大野レインボースタジアム)は外野席が開放されましたが、準々決勝を除き高橋の試合出場はなし。チームも準決勝で敗れ、悔しい結果となった超高校級右腕の夏を振り返ります。

■ケガでも光った一級品の素質

7月21日の岐阜大会準々決勝・中京戦で今夏初めて実戦登板した県岐阜商の高橋純平(長良川球場)

夏の大会開幕の1週間前。実はこの頃から、高橋を追い続けているプロ球団の東海地区担当スカウトの間に“?”印が漂い始めていました。6月27日に予定されていた愛工大名電(愛知)との練習試合。ここで高橋が投げるものとみられ、数日前まではスカウト陣も「上司(スカウト部長級)も連れて見にいく」「12球団のスカウトが集結しそう」「メジャーリーグのスカウトも来るらしい」と待ち構えた様子でした。ところが前々日頃から、この試合には登板しないとの情報が流れ、事実高橋の帯同はありませんでした。

練習試合での登板回避は、右手中指にできたマメなどの影響で大事をとっての措置でした。しかし直後の7月2日、練習中に左足太ももを肉離れしたとみられ、投球できない状態に。そして5日の初戦で左足をひきずるような動作をし、ケガが公になりました。中指のマメと左足肉離れは直接的には無関係でも、“?”印がより色濃くなってしまいました。

それでも万一の登板に備え、スカウト陣は大会に毎試合足を運びました。県岐阜商が戦った5試合中、最も多い日で11球団25人のスカウトが心配そうにその動向を見守りました。

ドラフトの目玉が唯一登板したのは準々決勝の中京戦。わき起こる拍手の中で7回裏のマウンドに上がった高橋は、久々にマウンドに立てた喜びと、ケガに対する不安を交互に表情に浮かべながらピッチング練習を進めると、打者に対しては140キロに及ぶストレートで打ち取っていきました。

「球種がバレバレのようなフォームだったんですが、ストライクが入ってよかったです」

チームも勝利し、試合後にそう話した高橋。コンディションが悪くても、やはり元値が違いました。もともと、軽く投げているようで球のスピードが出るのが彼の良さ。ケガという痛手を負いながらも、春の県大会優勝チームを抑えてしまうあたり、素質は間違いなく一級品と感じさせました。前日の投球練習を見て「あの状態ではストライクが入らないのではないか」と心配するスカウトもいましたが、高橋は悪いなりにまとめました。

スカウトの評価付けに関しては、もともと夏の大会前の時点で概ね済んでいるものなので、今回投げられたことで、その評価が大きく下がることはなさそうです。


■「キャプテンとしてもエースとしても引っ張れなかった」

斐太に敗れた24日の岐阜大会準決勝後、記者陣の質問に答える高橋(長良川球場)

ドラフト1位級という評価は変わらなくとも、高橋にとっては気の毒な終わり方をした大会でした。自身がほとんど投げないまま、チームも甲子園に出られず敗退。県岐阜商の戦いぶりは見事でしたが、最後に力尽きました。

「キャプテンとしてもエースとしても、プレーでチームを引っ張ることができなかった」

24日の敗戦後、囲み取材でそう話した高橋ですが、本人にとって最大の悔いはこの点に集約されるのかもしれません。県岐阜商のような強豪チームは、投手と野手が別々のメニューで練習する時間が長く、主将の高橋がチームを奮い立たせるにはプレーで牽引するしかありません。しかし、ケガにより練習や試合に参加できず、不完全燃焼のままチームも負けたとなれば、心中察するに余りあります。

それでも高橋のこれまでの奮闘は、周りも認めるところでしょう。

「投げられず悔いが残ったかもしれないが、センバツでの雄姿、そこまでの過程、その後のチームの牽引。並大抵の高校生ではできない(集中して取り組めない)環境下、注目を浴びる中でよくやってくれた」

と小川信和監督が称えれば、

「純平はピッチャーなのですが、打撃で凡打したときも(投球に備えて体力温存するのではなく)一塁まで全力疾走するんです。内野ゴロでも野手並みに走り、他のピッチャー陣に対して模範を示しています。自身で流れをもってきたいという考えもあるんだと思いますが、チームとしても、ピッチャーがああして全力で走ってくれると、野手も乗っていけます」

と大会前に村居尚磨選手(3年)も話していました。

大会後、一部で<中京戦で投げたのだし、多少の無理をしてでも準決勝以降も投げて、状態が悪くてもチームを勝たせる気概を見せてほしかった>という旨のプロ関係者の声を紹介した報道がありましたが、筆者は必ずしもそうは思いません。確かに、たとえばセンバツで頂点に立った平沼翔太投手(敦賀気比)のような、炎が燃え上がるような気概やタフさは、高橋に感じにくい要素だと言われていたし、この夏もそれを示せないままでした。しかし、故障をおして無理して投げることとは話は別。高橋の将来を潰すまいと、本人やチームの状態をよく見極めながら、高橋をむやみに起用しなかった小川監督の決断も光りました。

「1年生の夏(左足甲疲労骨折)、3年生の夏とケガで痛い(悔しい)思いをしている。疲れを次に残さないコンディショニングなど、体のケアにより気をつけて、次のステップで悔しさを晴らしたい」(高橋)

この夏、高橋のピッチングを見られたファンはごくわずかだったかもしれません。しかしこれから、おそらくは球界最高峰のステージで、その素質を存分に開花させ全国を沸かせてくれるはずです。今秋のプロ野球ドラフト会議、そしてそこからの未来と、高橋を見続ける機会もその楽しみもまだまだ続きます。


【2015年夏・県岐阜商と高橋純平の成績】
2回戦   ○6-1 本巣松陽
3回戦   ○5x-4 関商工
4回戦   ○4-2 各務原西
準々決勝 ○5-3 中京
(高橋:1回2/3 2被安打1奪三振0失点)
準決勝  ●3-4 斐太

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1984年生まれ、岐阜県出身。東海地区のアマチュア野球(高校/大学/社会人)を取材し、野球雑誌などで記事を発表している。年間のアマチュア野球観戦試合数は120を超える。

数々の野球部を訪れ、ひたむきな球児や情熱的な指導者、工夫した練習法などを取材。ここ数年のうちで東海地区からプロ入りした選手はほぼアマチュア時代から追いかけており、中日ドラゴンズで活躍する濱田達郎投手(愛工大名電高出身)や、西武ライオンズの高橋朋己投手(西濃運輸出身)らもその一人。

無名の好選手を“発掘”するのも得意で、評判の選手がいると聞けば練習試合まで駆けつける。プロ球団スカウトとも交流が深い。

野球場に足を運ぶこと自体の楽しさにも魅了され、学生時代を含めれば10年以上、球場通いを続けてきた。高校野球の地方大会は特に多くのドラマを見てきた部分。今年の夏に思いを馳せる。

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