ストレスと気功・2 〜意識ではない脳を使う〜 2016/7/11

【静観】
みなさん、こんにちは。前回に引き続き、気功とストレスの関係について勉強しましょう。

【楚羅】
気功をするとストレスは独りでに消えていくという話でしたよね。

【静観】
ストレスは外部の条件に対して、自分がこうしたい、こうあってほしいといった自分の思いから起こってくるんですが、このことを既にお釈迦さまも説いていたんですよ。

【柚里】
お釈迦さまがですか?

【静観】
お釈迦さまが坐禅瞑想の結果、覚りを得手、説法を始めた時に、最初に説いたのが四諦説(したいせつ・よんたいせつ)と呼ばれているものなんですね。

【嵯智】
あ、それ聞いたことがあります。「苦集滅道」の四つですよね?

【楚羅】
なーに、それ。

【嵯智】
四諦説の諦というのは、真理という意味の梵語だそうで、人生には「苦集滅道」の四つの真理があるということらしいんですが、それ以上はわかりません。先生、お願いします。

【静観】
簡単に話しますとね、まず、人生は思い通りにならないという真理です。これを「苦」と表していますが、それは、思い通りにならないものを思い通りにしようとするから、そこに苦しみが生じるということなんですね。言ってみれば、いま私たちが取り組んでいる「ストレス」のことなんですね。

【嵯智】
最初の真理である苦諦は、ストレスと理解して良いんですね?

【静観】
四諦説には、嵯智さんが言われたように、「苦、集、滅、道」とあって、人生は思い通りにはならないという真理を「苦」と表し、思い通りにならないのは、思い通りにしたいという思いがあるからだという真理を説き、それを「集」と表しています。

【楚羅】
なるほどねぇ、思い通りにならないものを思い通りにしたくて苦しむのは、思い通りにしたいという強い思いがあるからなんですね。

【柚里】
頭が混乱しそうだわ。

【静観】
その、思い通りにしたいという強い思いのことを執着とか固執と言うんですね。

【嵯智】
物事がストレスになって、心が苦しむのは、その執着という強い思いがあるというのが、「集諦」という真理なんですね?

【静観】
その執着という心をを無くしていくことによって、苦しみ、即ち、ストレスは消えていくという真理を「滅諦」として、三番目の真理が説かれていて、そのことで迷いや苦しみから離れた真の心の安らぎが得られるという訳なんですね。

【嵯智】
そして、その為の実践的な方策が「道諦」ということになるんですね?

【柚里】
何ですか、その方策というのは。

【静観】
その方策というのは、八正道と言って、物事を打算や欲得抜き出見たり考えたりする、偽りのない思いやりのある言葉を使う、心が曇らないような日常や修行を行なうなどといった八つの取り組みを実践するということで、それは勿論、実践すべき正しい教えなんですが、言ってしまえば、出家して仏道に入り、朝晩坐禅を組んだり、食事を作ったり、掃除をしたり、托鉢に廻ったりなどということを日常にする位の生活が必要になってくるんですよね。

【楚羅】
出家しないとダメなんなら、私たちには無理じゃないですか。

【静観】
そうなんですよ。私たちは今の日常から離れた生活をする訳じゃないんですからね。

【嵯智】
私たちは、今の暮らしの中でストレスを無くしていく手段を探しているんですものね。

【静観】
私は、この「道」の部分を八正道ではなく、気功に置き換えて考えてみたんですよね。

【柚里】
やっと気功に戻ってきましたね。

【静観】
気功では、一般には、内観とか内視などと言われるものに近い「意念を向ける」という取り組みをするんですが、それには、技術論的にというか生理学的にというか、きちんと理解しておかねばならない問題があるんですね。

【楚羅】
生理学ですか?

【静観】
体内を内観する、意念を向けると言っても、それは動物性機能としての「意識」を向ける訳ではないんですが、ここが大事なところなんですよね。

【嵯智】
私たちの脳は、殆どの場合、動物性機能としての脳を用いていますからね。

【柚里】
それは、見たり、聞いたり、考えたり、喋ったり、手足を動かしたりといった普段の生活の中で用いている脳のことですよね?

【静観】
私たちの日常は、全てこの動物性機能としての脳を使っていて、意念を向けるという脳の使い方は殆ど経験がなく、従って、内観といっても、動物性機能としての脳である「意識」を使おうとしてしまうんですよ。

【楚羅】
その「意識」を用いていてはストレスを無くすことは出来ないということですか?

【静観】
そうなんです。そこで気功の技が意味を持ってくるんですよ。

【柚里】
何が違うんですか?

【静観】
気功では体内を体感するという取り組みをするんですが、この体感こそが「意識」ではない脳を用い、ストレスから離れることを可能にしてくれるんですね。

【楚羅】
体感は「意識」じゃないんですね。

【静観】
体感は、体性感覚という機能を用いるんですが、それは皮膚によって包まれた体の内部からの情報を受け止める機能なんですよね。

【柚里】
その体性感覚を用いて体内を体感するということですね?

【静観】
そのことによって外部からの情報を受け止める動物性機能としての「意識」の働きは抑制されるんですね。

【嵯智】
そうなると、体はどんな風になるんでしょうか?

【静観】
そのことによって、脳波はβ波からα波に移行し、自律神経も交感神経優位の状態から副交感神経優位へと移行するんです。副交感神経優位に移行すると、皮膚や体内の毛細血管までが拡張し、手足の末端や体の深部まで血液が行き渡るんですよね。そして、そのことによって、皮膚温や体内温度が上昇するんです。

【楚羅】
気功をすると手足が温かくなるのは血液が流れ込んでいっていたからなんですね?

【静観】
体性感覚を用いる練習をしていると、その体内情報をキャッチし、その温かさに没頭することが出来るようになるんです。

【嵯智】
その状態を「意念を向けて意守する」と言うんですね?

【静観】
その温度が上昇した皮膚や体内の状態を体感するという取り組みによって「意識」の働きは抑制され、従って、ストレスも独りでに消失していくんですよ。

【嵯智】
ここで四諦説の中の「滅」ということが可能になるんですね?

【静観】
ですから、「滅」のための方策としての八正道を、気功の技である「意念を向けて意守する」という実践に置き換えることが出来るのではないかという考えに至ったんですよね。

【楚羅】
体感するという取り組みは、イライラしたり、腹が立ったり、ドキドキしたりなどの心の動揺を抑えて、平常心にしてくれるようになるんですね。

【静観】
しかも、体性感覚による体感のフィードバックを繰り返していると、その感覚が脳に刻み込まれていき、何かあった時に、短時間で心を静められるようになり、ストレスを上手く処理できるようになるんですね。

【楚羅】
それが気功の優れたところなんですね?

【静観】
楚羅さんが上手く納めてくれたところで、今日は終わりましょうか。

【全員】
ありがとうございました。

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鍼灸師・気功法講師

1993年から、栄中日文化センターにて「癒しの気功法」の講座を担当させて頂いています。

他に、鍼灸院「和気」(名古屋市中村区)にて鍼灸(はり、おきゅう)の治療をしています。

また、愛知県立名古屋盲学校の非常勤教諭として、専攻科の学生たちに鍼灸と気功の技を指導しています。

昨年の9月から、月に一度、京都の妙心寺大心院にて東日本大震災復興支援のための「元気のつどい」という気功の講習会もしています。

和歌山県出身、日本福祉大卒です。趣味は、陶芸、京都・奈良ウォークなどです。

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