コーヒーの名著 Part2 2016/11/17

いつもありがとうございます。今年の秋は雨の日が多く、あまりさわやかな秋日に出会うことなく立冬を迎えてしましました。秋から冬にかけて空気が乾燥しますので、コーヒーの香りが特に際立つ季節でもあるのです。

前回のPart1で紹介した名著から、戦前戦後の貧しい時代に、人々が珈琲にくつろぎと安らぎを覚え、大切に、大事に珈琲に接していたという様がたくさん見て取れたのではないでしょうか?

現代は、世界の良いコーヒーのほとんどが、お金を出せば全国どこからでもすぐにネットで簡単に取り寄せることが出来る大変便利な時代です。

しかし、物の豊かさとは反して、物の本質を見抜くことがないがしろにされているようなに感じるのは私だけでしょうか?

ネット大盛況の時代です。あまりにもたくさんの情報が混在しています。コーヒーの淹れ方一つとっても、「コーヒーオタク評論家」のような方が多くいて、いろいろと独自の観点で解説して、それがさも真実のように、読んでいる人の心に植え付けるようなブログがたくさんあります。

何年もかけて実践を積み重ねた経験からの理論ではなく、そういった方々はあくまでも評論家? で、コーヒーを生業としている方ではなく、一般のコーヒー好きオタクという方が多いように思います。

そんな情報が氾濫している今の状況に、私はなんとも言えない思いを感じています。

勿論、中には素晴らしい観点で珈琲を深く経験、勉強している方もいて、素晴らしい情報を発信しているブログもあるのですが、知識と経験が少ない一般の方は、何が良いのか悪いのか、どれを信じていいのかわからないので困りますよね。

一億総評論家時代といわれて久しいですが、みんながみんな一家言を持ちいろいろな批評をしていますが、コーヒーを毎日楽しむことは、そんなに難しく考えなくてもいいように思いますが・・・

「コーヒーの知識」石光季男著 昭和31年初版

珈琲本を時代時代に観ていくと、昭和30年代頃までは珈琲の本も限られた方による著書しかありませんでした。

それ以降に出た名著としては、前回紹介した井上誠さんの著書(5年おきくらいに珈琲本を出している)もさることながら、昭和31年に出版された、コーヒー生豆商社の「石光商事株式会社」の初代社長がお書きになった、石光季男氏の「コーヒーの知識」があります。

まえがき・・・
前略〜
元来コーヒーの香味は、日本人の嗜好、味覚にぴったり適合し、一度これを飲めばその馥郁たる香気と、そう快感なる美味に魅せられて止められぬ魅力を持っておりますから、将来日本でも茶に次ぐ絶好の飲料として、大量用いられるものと信じます。
〜後略

当時は、まだコーヒーが飲まれ始めたばかりなのが良くわかりますね。内容では、その美味しさと魅力にふれていますが、日本茶よりも飲まれる時代がくるなどとは想像していなかったようですね。現在コーヒーは日本茶の4倍近く飲まれているのですが。

「珈琲天国」 植田敏朗著 昭和36年出版

また、昭和36年に出版された植田敏郎氏の「珈琲天国」も見逃せません。この本には、当時、日本ではあまりコーヒーが飲まれていない様子が記されています。

前略〜
コーヒーの生産国はさておき、地下鉄もジェット機もあるような国でコーヒーをそれほど飲まないのは、まったく日本だけである。コーヒーの風味は、何物にも代えがたいほどいいものである。また、コーヒーくらい神経を適度に興奮させて疲れをいやし、飲みながら意見の交換もできてなごやかな社交の雰囲気を醸し出す飲み物はあまりないであろう。かってコーヒーが自由主義の発展につられて広まったヨーロッパの例が、それをはっきりと教えている。
〜後略

などがありました。

40年代以降になるといろいろな方がコーヒーの本を出版するようになります。それは、戦後、日本の経済成長と共に喫茶店の数も増えコーヒーを飲む人口も増えてきたからなのです。

また、インスタント(ソリュブル)コーヒーの発売によって家庭でも簡単にコーヒー飲まれるようになり、消費が格段に成長を遂げていったのです。日本においてのコーヒー盛況時代の到来です。

その当時に出た珈琲本で爆発的に部数を確保していたのが、月間「喫茶店経営」です。毎月出る唯一の珈琲専門書だったのですが、とても内容が濃く、私の師とも呼べる本なのです。
私はこの本から多くの事を学び、情報を得ました。

「珈琲と私」 耕八路(ばんじろと呼ばれていた)著 昭和48年出版
ばんじろ氏の本の中にはネルの形状の台紙も載っていた。

単行本で当時出た名著と呼ばれる珈琲本は、昭和48年出版の「珈琲と私」耕八路 著があります。
「ばんじろ」さんと呼ばれ一世を風靡した方です。
本を開くと・・・・、
「ブラック珈琲」
ひとつの人生
陽光にかざしてみよう
琥珀色に輝く珈琲
重ねられたその色は
ルビーのごとく紅い色
さらに重ねられて黒く
黒はすべての色の結集
…という詩から始まります。
昔の本は、コーヒーそのものが人生だったのでは?という雰囲気が漂ってきます。

「珈琲器具辞典」 柄沢和雄著 昭和52年初版

その他には、コーヒー研究家の「柄沢和雄」さんの「コーヒー器具辞典」などの著書も随分中身の濃い情報書でした。その他、豊橋の珈琲研究家の「伊藤博」さんの「珈琲探究」なども素晴らしい名著でした。

伊藤博著「珈琲探求」

1970年代後半になると、バブル時代の到来で喫茶店等が盛況を極め、また、簡単な抽出器(サイフォン、ペーパードリップなど)の出現により、家庭でもレギュラーコーヒーを飲む方が多くなり、消費は格段に伸びていったのです。

バブル景気は、昭和55年まで続きましたが、その後、バブル崩壊と共に喫茶店の数は減少の一途をたどり、現在ではピーク時の半分以下となりました。しかし、コーヒーの消費だけは未だに年々伸び続けているのです。

缶コーヒーなどの消費もさることながら、コーヒーメーカーの流行も相まって家庭でコーヒーを淹れて飲む方の消費が伸びてきたのです。その後、ファーストフードや大手コーヒーチェーン店の進出、はたまた、100円コンビにコーヒー等の流行で、手軽にコーヒーが安くどこでも飲めるようになり、近年ではいろいろなコーヒースタイルがあり、再びコーヒーブームが到来しています。もう、コーヒーは普通に飲まれるもので、特別な飲み物ではないのです。

コーヒーブームの到来でそれに伴い、一般の方に向けてのコーヒーの本も数えきれないほどに出版されてきました。ほとんどが技術本なのですが・・・・。

私は珈琲の新刊はほとんど買って目を通すようにしてきましたが、ここ数年の新刊の数と内容には、さすがについていきかねます。

そんな中、「いなほ書房」が何十年にわたって出版している「コーヒー豆本シリーズ」はとても楽しく内容が深いです。

是非皆さんに読んでいただきたい本がたくさんありますので、次回はそのシリーズを少し紹介したいと思います。

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プロフィール

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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