ビールにかかる税金は高すぎる? 2016/12/23

年末年始にかけて、会社の同僚や仲間うちでの忘年会や新年会で、普段よりもお酒を飲む機会が多くなりがちです。「健康を損なわないよう、くれぐれも飲みすぎには注意すべき」と筆者自身、大いに反省するところです。そこで、今回は宴会の乾杯には欠かせないビールにかかる税金について考えてみましょう。

2017年度の税制改正により、お酒にかかる税金が改正される見通しです。これに伴い、ビール系飲料は、2026年10月までに約10年かけて、これまで別々であった「ビール」、「発泡酒」、「第三のビール」の税率が一本化されます。

日本のビールにかかる酒税は、世界的にみても群を抜いて高い状況にあります。現在、ビール350_gにかかる酒税は77円で、ドイツの約20倍にも相当します。さらに、酒税にも消費税がかかるため、ビール一缶に83円もの税金がかかります。このため、購入代金の4割以上を税金が占める計算となり、まさに「税金を飲んでいる」イメージです。

アルコール度数で酒税額を比較すると、ビールは他の酒類の4倍以上に及びます。このため、各ビールメーカーは、高い酒税をできる限り回避するために、原材料等を工夫して、より低い税率ですむ「発泡酒」や「第三のビール」の製品開発に力を注いできました。

350_gの税額は、「発泡酒」が46・99円、「第三のビール」が28円です。ビールの酒税が高いがゆえに、国内の各メーカーは、ビール類似品の製品開発競争にしのぎを削らざるを得なかったともいえます。

今回の改正により、「ビール」の酒税は下がる一方で、他のビール系飲料は上がります。第一段階として、2020年10月に「ビール」を70円に減税し、「第三のビール」を37・8円に増税する。第二段階の2023年10月には、「第三のビール」を46・99円に増税して「発泡酒」と統合し、ビールをさらに63・35円に減税する。2026年10月をめどに、すべての税額を54・25円にそろえます。

この改正による影響は、製品出荷量に占めるビールの比率が6割前後と高いアサヒビールやサッポロビールには有利になる反面、「発泡酒」や「第三のビール」が出荷量の6割を超えるキリンビールやサントリービールには不利に働くと予想されています。

このため、約10年の時間をかけて税率を変更することにより、メーカーに対応する時間を与える配慮がなされたと推察されます。増税となる「発泡酒」や「第三のビール」は、「糖質ゼロ」や「プリン体ゼロ」といった「ビール」にはない機能性による付加価値などで存在をアピールすることになるのでしょう。

今回のビールの税率引き下げは、国産ビールの国際競争力を高めることにつながるうえに、メーカーの製品開発などの対応にも配慮した点は評価できますが、まだまだ他の酒類との格差は大きいといえます。現在、酒税総額の3分の2をビール系飲料が占めており、酒類間の公平性よりも、いかにして税金を確保するのかが優先されてきました。

酒税はタバコと同様、嗜好品(しこうひん)にかかる「シンタックス」(道徳的罪に対する税)として位置づけられます。ビールが一部のお金持ちしか飲むことができない贅沢品であった明治時代ならともかく、一般庶民が嗜(たしな)むアルコール度数が5%程度と低いビールのみに高い税率を課すのは、時代に合いません。

今回の酒税改正は、従来のビールを愛するビール党には、酒税が下がるのはありがたい反面、これまで「発泡酒」や「第三のビール」を晩酌としてささやかな楽しみにしてきた多くの人たちの家計負担が増します。今後も酒類間の公平性に配慮し、アルコール度数に見合ったさらに踏み込んだ税率調整が検討されることが求められます。

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愛知産業大学教授

元銀行員。慶應義塾大学法学部卒業。名古屋大学大学院 経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)

あだ名は【オッ君】。お金の流れからみた世界、日本、地域の経済の動きや、中小企業がどうすればお金を円滑に調達し、事業を維持・発展させていけるかを研究しています。また、基本的な金融や経済に関する知識や判断力(金融リテラシー)を養う金融経済教育も研究テーマにしています。

小さい頃からお金が大好きで、明治以降のお札やコインを収集しています。また、2008年に家族で弥富に行った時に買った長生き金魚(コメットちゃんと黒ちゃん)と赤いドジョウ(デカとチビ)のお世話をしています。

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