小牧山城を破壊したのは家康、かもしれないと思えた発掘調査報告会 2017/2/17

大手道から見上げた小牧山城の想像図

先日、2017年2月4日と2月11日に、岐阜城信長居館と小牧山城で、年に一度の発掘調査現地報告会がありましたので、今回はそのご紹介です。何といっても小牧山城でまたも世紀の大発見がありました。

まず最初は岐阜城の信長公居館発掘調査です。こちらは資料から4つの成果を転載します。

1、谷川全体が庭園として整備されていたことを確認
2、中心建物があったC地区(いわゆる千畳敷)の入り口の構造が明らかに
3、C地区をめぐっている石垣の構造が明らかに
4、金箔瓦を葺いた中心建物のそばに池が造られていた

展示されていた居館のイメージCGです

まず1です。今も山頂方面から水が流れてきていますが、その谷川水路の底で、庭園を鑑賞するために造られていたと思われる橋の礎石が発見されました。今回はこの橋があった場所に近いところ、近い高さから見学ができました。

現在の水路とはやや異なり手前側を流れていた
このあたりにCG真ん中にある橋がかかっていた

次に2。居館の中心建物へはスロープをすすみ、階段を上がると、正面に巨石の置かれた平坦部になり、そこを直角に左折するとまたスロープがあるという構造だったようです。

C地区千畳敷へのスロープ部には石垣が残る

そして3。C地区の石垣は二段で高さは6m、二段積みというのが小牧山城の石垣によく似ており、技術が踏襲されていたようです。

最後に4。以前に金箔瓦が出土してわかった金箔屋根の建物があったところの奥に、池と水路が発見され、その背後には弧を描いた細かい石積みの石垣があって、これは観賞用石垣と考えられるとのこと。

今回のあたりの発掘調査は、最初に昭和59~62年に行われ、中断後平成17年からまた始まっているようです。軍事拠点じゃなくて邸宅なので、ちょっと地味。山の上の城跡の発掘が待たれます。

立っている人の前が池で、後ろが湾曲した見せる石垣

次は小牧山城です。こちらは第9次の発掘調査になりますが、掘るたびに新しい発見があり、全国的にも大きな注目を集めています。今回の発見もスゴイですよ。

小牧山山頂の城へは、下から大手道を上がって来ると、左右に大きくくねりながら進むことになりますが、やがて見えてくるのは山の岩盤を垂直に削って作られた高さ3.2メートルの壁(今回出土)で、さらにその上に石垣が積まれている姿です。見るものを圧倒するこの威容がついに掘り出されたのです。岐阜や安土につながる「見せる城」の痕跡がまた今回も出てきました。

加工された巨大な岩盤。上には石垣がある
横から見るとその高さがよく分かる

そしてその壁沿いに左へ行くと、多分そこには大手門があったはずです。まだはっきりしていませんが、その門の礎石と思われる石も出てきたようです。大手道の幅は7.3メートルから14mという広い道でした。下からの道は5.5m幅ですから、ここが広場的な雰囲気になっていたということでしょうか。

城を見ながら石垣沿いに左へ進む大手道

また今回、何より重要に思える発見は、その大手門のあたりの石垣の崩落跡が見つかったことです。その門の下に、信長死去後の1584年にあった小牧長久手合戦時に作られた土塁が、今回確認されました。家康が小牧山城を改修するにあたって、大手門の前に土塁を築いたというのは合理的な話です。堀がないくらいで、小牧山城はあまり防衛ということを考えられていなかった城のようですから。

このあたりに大手門があったと考えられる。左側に崩落した石垣が見える

そしてその土塁が作られて以降に、大手門あたりの石垣が崩れ落ちて、土塁のところで止まっているのが発掘されました。さらにその石材が堆積した状況から「その崩落は極めて短時間、一時的に起きた」ことがわかりました。

崩落した石垣の石材で一瞬に崩されたのがわかる

そこでこれがどういうことか、考えてみました。1586年の天正大地震で崩れた可能性も否定できませんが、小牧長久手合戦以降に誰かが小牧山城を、またその石垣を、人為的に崩したということではないでしょうか。それは信長以降の権力者が、信長というあまりに偉大な権力者の痕跡を消したかったからでしょう。信長の城は、清洲も、小牧山も、岐阜も、安土も完全に跡形もなくなくなっています。

ではそれは誰なのか。秀吉ではないでしょう。秀吉の時代には、小牧山や安土はどうだったかわかりませんが、清洲や岐阜はまだ残っていました。となると? 岐阜城を廃城して加納城に移し、小牧山を尾張徳川家直轄地として管理させ、「思いがけない名古屋ができて、花の清洲は野となろう」と清洲越しを命令した人…、そう徳川家康です。

信長が心血を注いで設計した権力の象徴、画期的な見せる城である小牧山城は、小牧長久手合戦以降、家康が権力を握った時点で、信長の偉業を葬り去るため「極めて短時間、一時的に」破壊され、土に埋められ、山そのものへの出入りまでを禁じたということではないでしょうか。それゆえ、この発掘が行われるまで400年もの間、小牧山城は岐阜攻めのための小さな砦ということにされてきたわけです。

逆にそうして400年、手付かずで埋もれてきたがゆえに、小牧山城は掘れば掘るほど新しい発見が出てくるというタイムカプセルになっているわけです。今回の第9時発掘調査は昨年11月から開始され、これらが出てきたのはほんの数週間前とのこと。しかし3月にはすっかり埋め戻されてしまいます。なぜでしょうか。それは小牧山城が花見のシーズンになるからです(苦笑)。

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自動車&歴史ライター

1956年 名古屋市守山区(当時は守山市)生まれ。バンド活動から自動車雑誌、タウン雑誌などの編集を経て、出版編集・web制作を生業とする株式会社デイズを創業。

代表を務めつつ、自動車ライターとして、中日スポーツなどで試乗記を10数年間、毎週執筆。現在は「モーターデイズ」というwebサイトを中心に活動中。

今年5月には、長年の取材をまとめた「信長公記で追う桶狭間への道」を出版。織田信長誕生から桶狭間の合戦までの26年の人生、その年齢ごとのゆかりの地をクルマでたどる歴史観光ガイドムック(雑誌タイプの本)で、歴史ライターとしても活動を始めた。

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