糖尿病だからといって落ち込まないでください 2017/4/20

前回のブログで、高血圧の薬のことを書きましたので、今回は同じ生活習慣病の糖尿病のお薬について書きます。主に食べ過ぎや運動不足によって起こる生活習慣に原因があるタイプの糖尿病のお話です。

糖尿病も、高血圧と似ています。痛くも痒くもなく自覚症状は殆どありません。でも長い間、血糖が高い状態が続くと、やはり、必ず、少しづつですが確実に、血管の内側、腎臓、それから眼にダメージを与え続けます。糖尿病は、薬も大切ですが、それだけでは不十分で、まず食事療法、運動療法があってこその薬です。それら無しでは、穴の空いた桶で水を汲むのと同じようなものです。

実は、薬剤師も他の医療従事者と同じように、しばしば薬と病気について勉強会を行います。色々な症例を題材として糖尿病患者の方への指導の訓練を行います。その勉強会で、若い薬剤師が「この患者は生活習慣の改善が必要なので、食事療法の指導を行う予定です」とプランを説明したりすることがあります。なんだか、少し上から目線の物言いですよね。

その時ベテランの内科医の先生が、「糖尿病は食事の不摂生でなることは、確かに多いです。また、教科書にも書いてますし、ついつい、私たち医療従事者は食事に気をつけてくださいの一言で終わらせることが多いです。でも、殆どの日本人の糖尿病の患者さんは本当に、他人から贅沢な食事をしているよ。食べ過ぎですといわれるほどいい加減な食事をとっていると思いますか?」と仰りました。

そういえば、確かに私の母も、少し糖尿病の気があると先生に言われて糖尿病の飲み薬が出はじめた時、「そんなに、わたしゃあ食べとりゃあせんのになあ。」と落ち込んでいました。息子の私から見ても、体格は痩せでもないですが、太ってもいません。田舎によくいる働き者のちっちゃなおばあちゃんです。でも、歳をとると少し血糖が高くなってきたのです。

これは、なぜでしょうか?

実は、日本人は、白人に比べて同じ食事をとっていれば、糖尿病になりやすいのです。血糖を下げるインスリンの分泌が、日本人の方が、白人に比べて少ないのです。おまけに、年をとるとインスリンの分泌は少なくなります。白人の人に比べてよほど標準的な食生活や生活習慣をおくっていても、私たち日本人は、年をとると糖尿病になりやすくなるのです。

さて、また、私の両親の話になるのですが、母親は、父親から「おまえは、すぐ甘いもんを、つまむからや」と言われて、「そんなに食べとりゃあせん」、息子の私から「やっぱり食事量が多いんじゃろう」と言われて、「そがんこと言わんでもええが」としょんぼりしてしまっていました。先ほどの内科医の先生の話を聞いて、母は、確かに、息子の私の飽食にくらべると、戦中戦後を頑張ってきて、よほど質素な食事で体を動かして働いてきたはずだよなあと思いました。自分の母親に対してさえ、通りいっぺんの話しか出来てなかったと反省しました。

さて、ここまで読んでくださった糖尿病予備群 ? の方、「日本人だから仕方ないな、これで、お医者さんも家族も私に食事、運動のことを口うるさく言わなくなる」と思われたでしょうか?

とんでもない、まったく逆です。

先ほどの内科の先生も話を続けて、「日本人の場合、必ずしも、その人の生活習慣が悪いとはいえないことが多いが」と断った上で、「医師、薬剤師、栄養士、看護師は糖尿病指導を、正しく、しっかり、厳しく行わなければならない」と念をおしていました。大げさではありません。文字通り、糖尿病治療は医師、薬剤師、栄養士、看護師、全員総掛かりでこれでもかと言うくらい”しっかり”やります。

その理由は、たぶん、次回書きます。

岐阜薬科大学 実践薬学大講座 医薬品情報学研究室 教授

中村光浩
昭和62年 岐阜薬科大学大学院修士課程修了。昭和62年(株)大塚製薬工場入社、代謝分析研究および臨床開発に従事。平成5年より岐阜大学医学部附属病院薬剤部(製剤主任、薬品試験主任)。平成18年より岐阜薬科大学 医薬品情報学研究室において、臨床ビッグデータ解析、生体マトリックス中薬物濃度の高感度分析法、メタボロミクスによるバイオマーカーの探索(癌、皮膚バリア機能を対象)をテーマとした研究を行なっている。岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科 非常勤講師。岐阜県大学薬剤師協議会 会長。

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