名門中学生のエリート意識から世界の風潮“ポピュリズム”を考える 2017/4/20

京都大学

日本や世界の多くの学校で問われるのは「学力」。勤務校の東海中高も入試は「学力」試験のみ。「学力」とは何だろう?1回の入試だけで受験生の本当の学力がわかるかというと、私はわからないと思う。何故か?そもそも試験というのは、一発勝負の水物(みずもの)だからである。水物は、運に左右されて予想しにくいもので、あてにならないという意味である。

東海中学の場合約1,000人の志願者があり、360人の合格者を出す。成績上位で合格した生徒は、確かに学力があるのだと思う。しかし、何番で合格したかどうかは入試に関係ないが、例えば300番と400番の受験生で、明らかな学力差があるとは思えない。

入学して東海生になったことで、一部の生徒たちは、うんざりするほど強烈なエリート意識や優越感を持つ。嘘のような話だが、世界は自分を中心に回ると思っている生徒もいる。もっと謙虚になるべきだ。試験で、たまたま運よく合格した生徒も多いと思うからだ。

事実、私が担任した生徒は自宅でメダカを飼っていて、メダカについてやたら詳しかった。理科の入試でメダカについての出題があり、そのおかげ=メダカで彼は合格することができたのだ。本人もそう語っていたのだから、間違いない。今後一生、彼はメダカに足を向けて寝られないだろう。

以前、東海中学入試は5分程度の親子と教員による“面接”を行っていた。受験生の小6の彼らの多くは異口同音に「医者になりたい。人を助けたい」と言った。その心意気やよし!しかし、医者だけが人を助けることができる唯一の仕事と考えている節がある。誠に残念ながら、その後入学した生徒たちの、「人を助けたい」とは正反対の「自分さえ良ければよい」という利己的な面も目にした。言行不一致。今人を助けることができずに、将来立派な医者になれるのだろうか?いつ人を助けるの?“今でしょ!”と本校0Bの林修さんは答えるだろう。

そんな自分が第一のエリート意識よりも、人として大切なことは、“誰とでもうまくやってゆくこと”だ。人も国も同じで、様々な人々や国々とうまくやってゆかねばならない。最近のアメリカや欧州、日本でもよく聞く「ポピュリズム=大衆迎合主義」トランプ大統領が唱える『アメリカ ファースト(アメリカ第一主義)』『MAKE AMERICA GREAT AGAINアメリカを再び偉大にする 』イギリスの『EU離脱』など“自国第一主義”の風潮が目立つ。自分は大切だが、自分さえよければいいという考えは、到底納得できない。自分勝手な人間(国)は、決して信頼されない。

仏リヨンの集会で演説するルペン党首

そのような、ポピュリズムには、安易な「責任転嫁」を感じる。かつてナチスドイツが行ったユダヤ人迫害に代表される“スケープゴート=いけにえの山羊”。本当は国内に多くの矛盾や問題があるのに、全てを『移民や難民』の責任にしてしまう。簡単で最も手っ取り早い方法だ。単純で分かりやすい政策を、人々は支持する。

うちの小さなエリートたちも責任転嫁が得意だ。成績が悪いと「先生の教え方が悪い」「母親がうるさい」「友達が邪魔する」「部活が大変」などなど。生徒も教員を選べないし、教員も生徒を選べない。規模は比べようもなく小さいが、クラス(学級)も1つの世界だ。

最近はほとんど見ないが、以前は“天国のようなクラス”が、たまに出現した。クラスの雰囲気は成績にも如実に反映する。雰囲気がよく授業がしやすいクラスは、平均点も高い。同じように教えて、平均点が10点も差がつく。いいクラスは全体的にうるさいほど明るく陽気で積極的。授業していて反応もいい。

いいクラスになる条件は、まず生徒たちが優しく互いを思いやる。そして担任、教科担当の教員の個性が生徒たちと、複雑に絡み合い、融合し、醸造されることで、誰もが過ごしやすく、本当に気持ちのいいクラスは実現する。最近はあまり「クラスづくり」という言葉を聞かなくなったが、とても重要な視点である。

世界平和というと、とても大げさになる。まずは自分の身近なところで、目の前の相手を優しく思いやるところから、始めてゆくことが大切だと思う。

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2017/4/20

プロフィール

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東海中学地理教諭

ボーとした小学生で地図を見るのが好きだった。地図は長年の相棒。中学時代はテニス部キャプテン。みかん畑の中の蒲郡東高校。昼食後の授業は「海を見ていた午後」おだやかな三河湾を眺めていた。

FM愛知の深夜放送『コンタクトクラブ』チコさんに「大地主のお坊ちゃん」のペンネームでせっせと投稿。学生時代は“じゃん・だら・りん”の三河郷友会学生寮。最近女子寮が同じ敷地にできてビックリした。

東海生の手荒な洗礼を受け続け早や30年。仕事は好きなので感謝している。勤務校の東海とは不思議な縁を感じています。

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