豊明市市政45周年記念の「桶狭間シンポジウム」がありました 2017/6/19

服部小平太が義元に槍をつけたクライマックスシーン@豊明の古戦場祭り

6月12日は桶狭間合戦があった日です。旧暦5月19日は新暦にすると6月12日ですから、まさにこの時期に桶狭間合戦が行われたわけですね。

ということで、例年お伝えしている通り、名古屋市緑区の古戦場保存会主催のお祭り(5月14日)、豊明市が行う古戦場祭り(6月4日)、名古屋市が行う信長攻路(6月11日)、とこの時期には毎週のようにイベントが行われていますが、今年は豊明市が市政45周年ということで、記念の「桶狭間シンポジウム」というものも5月28日に行われましたので、そのお話を書いておきたいと思います。

会場の桜花学園大学・名古屋短期大学構内には信長軍が駆け上ったとされる信長坂がある
信長坂の上から、桶狭間方面を見ると今はこんな感じ

桶狭間古戦場伝説地そばの名古屋短期大学大講堂で行われたシンポジウムは、おなじみの小和田哲男先生による「誰もが知りたい桶狭間の戦い 五つの謎」という基調講演、そしてお笑いタレント「ロバート山本博」をゲストに迎えて小和田先生、とよあけ桶狭間ガイドボランティア理事で、豊明古戦場説の本を書いている太田輝夫氏、緑区の桶狭間古戦場保存会会長の梶野泉氏、そして豊明古戦場伝説地にある高徳院住職湯川博英氏によるパネルディスカッションです。司会はナゴヤタレントのYO!YO!YOSUKE氏。

歴史業界の大御所、静岡大学名誉教授の小和田哲男氏

まず小和田先生の講演の骨子を以下にまとめます。

今川義元の尾張侵攻の狙いが従来からの上洛説だとすると、将軍足利義晴の上の文字「義」を偏諱されていたほどで、本人には上洛への自覚はあったはず。また近年の新説では三河確保説、織田方封鎖回除説、水野氏封じ込め説、尾張今川領回復説があるが、自分は尾張奪取説を唱えたい。義元自らが出陣しており、一気に尾張を取ろうとしたのではないか。今川軍の数4万5000は太田牛一が誇張して書いているか、あるいは今川が宣伝した数字だろう。信長は何の手も打たなかったわけではなく、今川軍の離間策を取り、それに義元がはまったのだろう。信長がこの戦いを仕掛けたという説もありえる。

19日に沓掛城から桶狭間山、そして大高城へという行程をとった義元が、昼食休憩した桶狭間山の位置は高根山説(提唱者=藤本正行・水野誠志朗)、漆山説(藤井尚夫・高田徹)、緑区の本陣跡説(梶野渡)、豊明市南館・いわゆる標高64.7メートル地点説(小島広次・小和田哲男)があるが、64.7メートル地点のさらに高い位置からなら、建物のない昔は鳴海方面が見通せたのではないかと思う。

信長の進軍ルートに関して、迂回説は否定されており、手越川沿いを進んだ可能性がある。今川軍に気づかれなかったのは、軍師の伊束法師が天候を読んでいたからでは。戦死した佐々と千秋の役割は囮で、義元は信長本人を討ち取ったと勘違いしたのかも。今川軍乱取り説もあるが、時代考証している大河ドラマ「直虎」では、この時代に乱取りなどがあったことを知らせる意味で、あえて農村の様子などを描かせている。

桶狭間にいた今川軍は実は5000人程度で、武人はそのうち2000人程度ではないか。それらが油断していたところへ信長が突っ込み、塗輿をねらったということでは。ゆえにその位置を知らせた梁田が戦功一番とされたのでは。そして古戦場が豊明と緑区に二つあるのは、たまたま二つが残っているということ。広くこの辺り一帯が古戦場ということだろう。この戦いの歴史的意味は、信長の急速な台頭、松平元康の自立である。元康は水野信元のアドバイスで後に信長側についた。今川氏真ではだめだと断じたから。

盛り上がりを見せるシンポジウム会場

ということでした。こうした考え方が、現在の桶狭間合戦の捉え方の主流ということでしょう。

さて講演後のパネルディスカッションでは、高徳院の湯川氏が古戦場伝説地界隈の明治時代の写真パネルを見せ、太田氏がいつものように豊明本陣説を力説。また緑区の梶野氏は皆で盛り上げましょうというスタンス。歴史好きというロバート山本はレンタカーで信長の旧跡をめぐった話をし、歴史好きはもっと情報を欲しがっていると。そして豊明の桶狭間古戦場伝説地には、直虎効果か、今は年間2万人近い人が訪れていて、ボランティアガイドが足りない状況となっているとのことでした。

いつになく真面目な歴史好きのロバート山本

シンポジウムを聞いた所感としては、小和田先生が昨今の古戦場をめぐる情勢を適確に指摘し、最近やや劣勢な豊明側がここでは攻勢をかけたという印象でした。300名ほどの聴衆は豊明からも緑区からも参加しており、どちらが本家かというような話は、ちょっと皆うんざりしつつあるように感じました。この一帯を全体として盛り上げていければいいというふうに考える人が増えてきているのではないでしょうか。

今回は小和田先生に私の高根山本陣説が取り上げてもらえましたが、それでも義元が前日に大高城に行ったという話は残念ながら出ませんでした。討ち取られたのがどこかより、謎解きとしてはそれがかなり重要だと思うのですが。

今年は井伊直盛も登場。左の女性は直虎です

そんな豊明の古戦場祭りは6月4日にありました。毎年、人気の武者行列のあと、高徳院野外会場での再現劇がありますが、この劇がかなり微妙。昨今の歴史研究からはだいぶん外れているように思えますし、役まわりの動きもちょっとステレオタイプ。合戦乱闘シーンに登場する孫をお目当てに来ていた人の話では、話がなんだかよくわからないとのこと。誰もがよくわかる歴史エンターテイメント劇にするのは、かなり難しいことではありますが…。例年見ていますが、せっかくこれだけのことをやるのですから、もう一工夫必要な時期に来ているように思いました。

地元の子供や外国人も多く参加する合戦シーン
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1956年 名古屋市守山区(当時は守山市)生まれ。バンド活動から自動車雑誌、タウン雑誌などの編集を経て、出版編集・web制作を生業とする株式会社デイズを創業。

代表を務めつつ、自動車ライターとして、中日スポーツなどで試乗記を10数年間、毎週執筆。現在は「モーターデイズ」というwebサイトを中心に活動中。

今年5月には、長年の取材をまとめた「信長公記で追う桶狭間への道」を出版。織田信長誕生から桶狭間の合戦までの26年の人生、その年齢ごとのゆかりの地をクルマでたどる歴史観光ガイドムック(雑誌タイプの本)で、歴史ライターとしても活動を始めた。

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