珈琲店、喫茶店を開業するために本当に必要なこと〜自家焙煎咖啡「ZI:ZO」開店〜 2017/7/17

岐阜県恵那市にオープンした自家焙煎咖啡店「ZI:ZO(じーぞ)」  Part1

いつもありがとうございます。

今回は恵那市にオープンした自家焙煎珈琲店「ZI:ZO(じーぞ)」が開店するまでの話を例にとり、喫茶店や珈琲店をオープンするには何が大切で何が必要なのかをお話ししたいと思います。

毎年、私の店に、喫茶店や珈琲店を開業したいといって相談に来られる方が何人かおみえになります。珈琲教室の生徒さんに至っては毎年2人くらいの方がお店を開業されます。近年、相談にお見えになる方は、「定年を迎え何もすることがなくなったので、自宅の一角を改築して喫茶店をしようと思う」という方がほとんどです。

高齢化社会の現在、定年後の在り方が社会問題となっている今日この頃ですが、趣味に生きる方や、何かできる仕事に就く方、サンデー毎日(毎日日曜日という意味らしいです・・)といって、何もせずに自由気ままに毎日を過ごす方、若いころからやりたいと思っていた趣味の店を開店する方など様々な方々がいます。

喫茶店をやってみたいという方は意外に多くて、以前、私の珈琲教室で、「いつかは喫茶店、珈琲店をしてみたい?」というアンケートを取ったところ、3割くらいの方が「してみたい」と答えました。

喫茶店のピークは昭和55年でしたが、その以前の昭和50年当時くらいから、何もすることがなく、「喫茶店デモしてみようか」「喫茶店くらいシカ出来ることはないか」という、いわゆる「デモ、シカ組」といわれる方が多く開業されました。大手ロースター(UCCやKEYコーヒーなど)の豆を使い、軽食は冷凍食品を使い、アイスクリームや、ソフトドリンクなど何でもあるメニューで、どこにでもある店を、誰でもができる形態で出店したのです。

高度成長、バブル時代でしたので多く方が来店され、猫も杓子も一日中喫茶店を利用していました。バブルがかげり始めたころからそのような喫茶店には人の足が遠のき、コンビニやファミリーレストラン、チェーン店などがそれに替わるようになりました。そうして今では全盛期の半分の喫茶店件数、売り上げも当時の半分という体たらくの斜陽産業になってしまったのです。

現代、一軒の喫茶店を駐車場が確保できる土地から建物など、全てをゼロから始めようと思うと投資金額が高額になり、とてもじゃないですが投資に対して回収ができませんし、またそれで生活していく事はほとんど不可能に近い時代なのです。唯一、それで生活ができる喫茶店を作ろうと思うと「チェーン店」に加盟するしかありません。

そのくらい難しい時代ですので、喫茶店を開業するには、土地や建物はもともとある自分のものを無料で使用し、自分の手持ちのお金を使い借金無しで開業するしかないのです。そういった形態にして、初めてなんとなく年金の足しになるくらいの収入が得られる店となるのです。

しかし、そういった店を開業したい方が相当数います。傍からみると喫茶店、珈琲店はよっぽど楽で儲かるように見えるようですね。先に示したように、喫茶店は毎年廃業が絶えない斜陽産業なのです。

店の守り神のお地蔵さんからいただいた店名「じ〜ぞ」

相談に来る方に、どうして喫茶店を始められるのですか?という質問をすると、ほとんどの方が、「定年ですることがなく、昔から憧れだった喫茶店をしてみたい。ちょうど、駐車場に使う土地と改築すれば喫茶店になる家があるので、そこで、お仲間達に集まってくれる喫茶店が出来れば毎日楽しく暮らせるのではと・・」、いう返事が返ってきます。

では、どういったメニューをお出しするのですか?と聞くと「素人ですので大したものは出せませんので、ひとまず美味しいコーヒーだけは出したい」と・・・。美味しいコーヒー?「美味しいコーヒーって?どんなコーヒーですか?」と聞くと、「詳しくは分かりませんが、飲んでみんなが美味しいと感じるコーヒーですかね・・・・?」

相談を受けている私も、「美味しいコーヒー」が存在するのであれば知りたいし、それだけをお出しすればいいので楽だろうなぁ〜。と思い呆れながら聞いています。

「では、コーヒーの事はどのくらいご存知ですか?珈琲専門書は読んだことはありますか?」と聞くと、「あまり知りませんし珈琲の専門書は読んだことがありません」と・・・・?コーヒーの事もあまり知らないのに「美味しいコーヒー」と・・・?

すべての人がとは申しませんが、こういった方がとても多いのです。コーヒーの事もあまり知らずに、美味しいコーヒーさえ出せば繁盛すると思っている方が多いのですが、もともとすべての人に美味しいコーヒーなんて存在しないのですから、美味しいコーヒーといわれても答えようがないのです。とにかく店さえ作れば、その後にメニューややり方を考えれば良いと思ってみえる方がほとんどなのです。

逆です。レンタルルームではないのですから・・。まず、皆さんに喜んでもらえる「物(商品)」があってこそ始まるのです。そうして、それをお出しするには、こういった器、テーブル、椅子や空間で楽しんでいただき、それに付随して厨房、その他レイアウトなどが決まるのです。

食事を提供するのならば、テーブルの高さと大きさはそれに合わせなければなりませんし、飲み物だけならば、それほど大きなテーブルは必要ありません・・・など、営業時間も、すべてはメニューがあってそれに合わせて決まっていくのです。

私達の商売は、夏の暑い時に涼しい所にいて、冬の寒い時に温かな所にいて出来るとても贅沢な仕事です。お客様は、そんな環境の中、ガソリン代と時間と労力を使い来店してくれるのですから、期待以上の物、時間を提供しなければ誠に申し訳ないのですし、リピートしてくれることはありません。

大したものが出せない店でも最初は興味半分で来てくれますが、リピートしてくれることはありません。そのことをじっくり考えて、店創りをしなければならないのです。初めに商品ありき!なのです。

今回、恵那市にオープンした、可知御夫妻が経営する自家焙煎珈琲店「ZI:ZO(じーぞ)」も一年前に相談がありました。

この方も、例にもれず初めはそういったお話でしたので「やめられた方がいいですよ!」と強く言いました。長年の念願だった夢とせっかくのやる気を根底から否定するとても嫌な奴なのですが、私もこんなことは言いたくありません。大金を使って開業しても、その後すぐに廃業するという可能性が高いのならば、初めから引き止めるのが優しさというものですから、私は「優しい良い人」ですよね!?(笑)

「では、何をどうすれば開業出来るのですか?」と聞かれるので、何をすれば出来るのではなく、出来るようにするのにはまず何をするべきかを考え、出来る事から始めるのです。

そうして、一つ一つを修得して積み重ね、自信を持って提供する「売り物」が出来、初めて店の設計やインテリアなど魅力ある店創りに成り得る可能性の店を作り上げていくのです。初めに店ありきではなく、初めに商品ありきなのです。店を創ってから「さあ!何を提供しよう?」ではないのです。

待夢珈琲店の珈琲教室

そこで、可知御夫妻には、まず珈琲教室に来ていただき、珈琲の知識と実践と味覚を鍛え上げて修得する事から始めていただきました。

当店の珈琲教室は、どんなレベルの方でも初めは「基本編」から受けていただきます。コーヒーとはどんな植物からどんな地域で採れるのか?など、植物学や歴史なども含めて「珈琲のすべて」をまずは知っていただきます。毎回、30分知識を学び、30分技術(抽出)を学び、30分味覚(カッピング)を鍛える1時間30分の講座です。

珈琲教室カッピング

その中で、特に重要なのはカッピング力をつけることです。

知識や技術は身についたかどうかは、テストをするなど実際に点数や目で確認することができます。しかしカッピングだけは、その人の味覚や感性で判断しますのでこれが正解というものがありません。

新鮮で上質なコーヒーの味や香りを自分の舌や五感でしっかり感じ、チェックして脳の感覚にとどめ置くのです。沢山の良いコーヒーを飲みチェックすることでしか味覚は育ちません。教室は大体8名で行いますが、一対一でする個人レッスンより大勢での教室の方が味覚は育ちます。

一回の講座で一人二杯づつコーヒーを淹れます。そうすると、一回の講座で8人×2杯=16杯のコーヒーが出来ます。月一回の6回講座ですので、半年講座で、16杯×6回=96杯のカッピングが出来ます。それをみんなでそれぞれカッピングして、感想や意見を言い合うのです。みんなで言い合いながらカッピングするので、自分の味覚や立ち位置なども確認することができるのです。

たとえば、同じコーヒーを飲んでも他のみなさんは苦くないと言いますが私はとても苦く感じてしまいます。そこで初めて、自分は思っていた以上に苦みを感じるのだということが確認できます。好みで飲むだけでしたら自分の味覚の基準の確認はいりませんが、いろいろ味覚のお客をお迎えする珈琲屋でお金を頂く店としては、自分の味覚の基準、一般的な味覚の基準を把握しておくことはとても大切なのです。

そうして、開店に向けてプロになり得る厳しい珈琲の修業は始まったのです。

・・・・次回に続く

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プロフィール

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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