2017年東海3県夏の大会総括(非公式ベストナイン&好ゲームレビュー) 2017/7/31

高校野球地方大会は30日までに、宮城を除く48地区の優勝校が決まりました。東海3県では中京大中京(愛知)、大垣日大(岐阜)、津田学園(三重)が嬉しい甲子園切符を手にしました。甲子園大会は8月4日(金)に組み合わせ抽選が行われ、7日(月)に開幕予定。全国舞台でもベストプレーを期待しましょう。

さて今回は、夏の地方大会ガイドの総括として、東海3県の各大会を振り返ります。筆者選定の”非公式ベストナイン”では、大会成績のみならずプレーぶりや印象度も加味し、各県を沸かせた9人を選出しています。


■ 愛知県 =====

優勝した中京大中京ナイン(2017年7月撮影)

愛知大会は、名門・中京大中京が貫録勝ち。各打者が鋭いスイングで痛烈な打球を飛ばし、準々決勝からの3試合でも計29点を奪いました。栄徳が準優勝、豊橋中央がベスト4(→関連記事はこちら)と新鋭校も実力を示しました。

☆ 筆者が選ぶ”非公式”ベストナイン〔愛知県〕
 <投> 磯村 峻平(中京大中京・3年)
 <捕> 長峯 樹生(豊橋中央・3年)
 <一> 石原 水輝(栄徳・2年)
 <二> 伊藤瑠宇輝(名古屋大谷・3年)
 <三> 川上承太郎(名古屋市工・3年)
 <遊> 木戸 悠涼(豊橋中央・3年)
 <外> 諸橋  駿(中京大中京・3年)
 <外> 伊藤 康祐(中京大中京・3年)
 <外> 千田 和弥(栄徳・3年)

※主な選定理由や次点・・・概ねベスト8前後のチームから選出。捕手は長峯のほか、準決勝の東邦戦で満塁弾を放った野口泰司(栄徳・2年→記事はこちら)、チームのベスト8入りを攻守で支えた橋本翔(豊田工・3年)らで迷いました。二塁手は、30年以上なかったという名古屋大谷のベスト16入りに貢献した主将・伊藤を推します。打撃センスが光っていました。三塁手には、1年生とは思えぬ働きをした熊田任洋(東邦・1年)も入れたかったです。外野手の千田は、1番打者としての働きが印象的でした。

☆ 好ゲーム PICKUP
名古屋市工 11−7 豊川(4回戦)

→この試合の経過・戦評はこちら

…試合前に『中日新聞プラス』で注目カードとして紹介しましたが(→記事はこちら)、想像を超える激戦になりました。強豪・豊川が初回に6点先制するも、名古屋市工がそこから逆転勝ち。大会前の時点で高校通算42本塁打の主砲・川上承太郎(3年)が2本塁打を放ちました。

名古屋市工は近年、大学野球で活躍する選手を続々輩出しています。宮崎武幸監督は現役時代、社会人野球・シダックスでプレーしていた球歴をもちます。当時シダックスは野村克也氏(元ヤクルトほか監督)が監督を務めていました。

敗れた豊川は今大会、愛産大工や豊田西など強豪校との対戦が相次ぎ、しびれるような接戦を勝ち上がってきました。新チームも楽しみです。


■ 岐阜県 =====

優勝した大垣日大ナイン(2017年7月撮影)

岐阜大会を制したのは大垣日大でした。毎年、一冬越えて打者のスイングが力強くなる同校ですが、今年はそれが顕著。春に続いての頂点でした。準優勝の中京学院大中京も、決勝で3点ビハインドを追いつくなど見せ場は十分でした。

☆ 筆者が選ぶ”非公式”ベストナイン〔岐阜県〕
 <投> 速水 龍太(加納・2年)
 <捕> 都筑 雄紀(大垣日大・3年)
 <一> 石川 隼也(大垣日大・3年)
 <二> 川合 正悟(岐阜聖徳・3年)
 <三> 伊藤 竣哉(海津明誠・3年)
 <遊> 中神 拓都(市岐阜商・2年)
 <外> 宮坂 元規(大垣日大・3年)
 <外> 西川 颯真(中京学院大中京・3年)
 <外> 小川 真輝(大垣商・3年)

※主な選定理由や次点・・・概ねベスト8前後のチームから選出。投手は、優勝に貢献したという点では修行恵大(大垣日大・2年→記事はこちら)ですが、投打でベスト8入りの原動力となり加納旋風を巻き起こした速水を今回は選びました。3回戦・飛騨高山戦での2本塁打はインパクト大。捕手の都筑はチームの要。石川、小川らが好スイングで打力の高さを見せました。中神も成績以上に能力の高さを感じさせました。

☆ 好ゲーム PICKUP
海津明誠 10−7 多治見工(4回戦)

→この試合の経過・戦評はこちら

…海津明誠は3回戦で名門・県岐阜商にコールド勝ち。県内の高校野球ファンを驚かせる、今大会の一大ニュースでした。続く4回戦では、好投手3人を擁する多治見工(→記事はこちら)を相手にリードを許しましたが、9回表に5点をとって試合をふりだしに戻し、10回表に勝ち越してベスト8入りしました。実力校・海津明誠を率いる岩橋浩二監督は、現役時代に社会人野球・昭和コンクリートでプレー。2年前の主戦・伊藤健太投手(中部学院大2年)はプロも狙える快腕に成長中です。


■ 三重県 =====

優勝した津田学園の主砲・上下大地(2年/2017年7月撮影)

三重大会は、シード4校や前年夏・秋の優勝校がベスト8に残る順当な結果に。その中で、4試合連続コールド勝ちなど打力が勝った津田学園(→関連記事はこちら)が、夏は初めてとなる甲子園出場を決めました。

☆ 筆者が選ぶ”非公式”ベストナイン〔三重県〕
 <投> 水谷  翼(津田学園・3年)
 <捕> 田中 淳士(近大高専・3年)
 <一> 上下 大地(津田学園・2年)
 <二> 宮木 滉生(津田学園・2年)
 <三> 岡田 晧輝(三重・3年)
 <遊> 武田 龍遙(松阪商・3年)
 <外> 菊地 翔矢(津田学園・3年)
 <外> 大川 陽大(三重・3年)
 <外> 岡林 飛翔(菰野・3年)

※主な選定理由や次点・・・概ねベスト8前後のチームから選出。投手は、水谷の控え・若林潤(津田学園・3年)も推したいです。決勝での好救援をはじめ、大会通じて無失点でエースを後押ししました。捕手の田中は、難敵・松阪戦で2弾。松阪商の4番・武田は打率6割。今大会では本職の中堅手や投手のほか、左利きながらショートを守りました。遊撃手はプレーの性質上、右利きが守るべきとされる守備位置。部員不足の高校ではまれにある光景ですが、実力校・松阪商で左利きでも春から遊撃手に登用されるほど、そのセンスは出色でした。遊撃手では他に栗山翔伍(白山・2年)がチームに35年ぶりの3回戦進出をもたらす活躍。岡林は投手のドラフト候補ですが、今大会は背番号7。5試合で4本塁打をマークしました。

☆ 好ゲーム PICKUP
津田学園 4−3 三重 (決勝)

→この試合の経過・戦評はこちら

…今大会で筆者が最も驚いたのは、津田学園の主砲・上下大地(うえした・だいち/2年)の打撃でした。昨夏もベンチ入りし、スイングは目立っていましたが、今年春までは粗さも感じさせました。それがこの夏、劇的に成長していました。粗さがかなり解消され、スイングスピード、打球スピードは衝撃的なレベルに。高卒プロ入りも狙えるスケール大きな打撃は、筆者にとってこの夏一番のインパクトでした。

 決勝でも上下が3打点。守備では9回裏にフライを落球し、それがきっかけでチームも逆転負けの危機に瀕しましたが、なんとか投手が踏ん張り、幸い甲子園は消えずに済みました。このヒヤリ体験で”一球の怖さ”を知ったことも、上下の成長材料となるはず。目前の甲子園、そして秋から来年にかけ、上下の打棒が楽しみです。


* * *


今年の高校球界で春先、英心(三重)が全国的に話題になりました。過去に不登校を経験している野球部員も数人いて、公式戦では0−91の大敗を喫しながら、それでも前を向く姿が人々の心に響きました。こうした例に代表されるように、今大会も出場校すべてにドラマがあり、一戦一戦、一球一打に部員らの思いが詰まっていたように思います。たとえ大差で負けていたとしても、一生懸命にプレーすることが尊く、スタンドを沸かせ、その選手や周囲の人生に何かの意味をもたらしたはずです。

そして優勝した中京大中京、大垣日大、津田学園の3校には、甲子園でも躍動してもらいましょう。期待しています!

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野球ライター

1984年生まれ、岐阜県出身。東海地区のアマチュア野球(高校/大学/社会人)を取材し、野球雑誌などで記事を発表している。年間のアマチュア野球観戦試合数は120を超える。

数々の野球部を訪れ、ひたむきな球児や情熱的な指導者、工夫した練習法などを取材。ここ数年のうちで東海地区からプロ入りした選手はほぼアマチュア時代から追いかけており、中日ドラゴンズで活躍する濱田達郎投手(愛工大名電高出身)や、西武ライオンズの高橋朋己投手(西濃運輸出身)らもその一人。

無名の好選手を“発掘”するのも得意で、評判の選手がいると聞けば練習試合まで駆けつける。プロ球団スカウトとも交流が深い。

野球場に足を運ぶこと自体の楽しさにも魅了され、学生時代を含めれば10年以上、球場通いを続けてきた。高校野球の地方大会は特に多くのドラマを見てきた部分。今年の夏に思いを馳せる。

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