朝鮮半島の誇り、「高麗青磁」〜その3〜【後編】 2017/8/13

朝鮮半島の誇り、「高麗青磁」〜その3〜【中編】 」の続き

「先史時代」から「歴史時代」へ変わり、中国の「漢代」の墳墓の棺内からは5組の「玉衣」が発見されてる。玉を正方形に加工し、玉片に小孔をあけ、「金縷(金糸)」で繋ぎ合わせた鎧(よろい)っぽい「金縷玉衣(キンルギョクイ)」を死者に着せた。皇帝や王など最高級貴族の葬儀に「玉衣」が用いられるけど、その位により「金縷・銀縷・銅縷・絹縷」による別があると漢代の「記録」は伝え、中国「東晋」の書『抱朴子』(内篇巻三/對俗)には、

「金玉在九竅,則死人為之不朽」
「九穴を玉でふさぐと死者は腐らない。」(「朴」の意訳)

との記述があり…ちょっと待った!人間の身体に「九穴」だって?

≪どれ、「朴」が数えてみょう。≫

「目=眼(2個)」「耳(2個)」「鼻穴(2個)」「口(1個)」それから、それから、わ!かった。腰から下の「前・後」に…。トータル「九穴!」に玉を詰めておけば体内の「生気や精気」が漏れないので肉体は腐らず、玉の呪力を借りて永遠に生きられると。(既に死んでるのに???)

「楚王陵」から発掘された「玉片+金縷」で作られた約2500年前の「玉衣」。 写真出典:歴史を読む「徐州編」

「歴史時代」の「楚王陵」から発掘された玉衣などは「和田(ホータン)」で産出される「和田玉」らしい。中国「新疆省(ウィグル自治区)」に位置する「和田」は、チベット高原の端を発する「白玉河」「黒玉河」「緑玉河」の間に挟まれた「オアシス」都市。東(中国)と西(西域)を繋ぐ通商路「西域南道☆玉の道(ジェイドロード)」の要衝で「軟玉」の名産地。(河の名すら「玉」だもの。)

≪「和田」から中華文化の発祥地「中原」までの直線距離はどのぐらい?≫

と、「朴」と同じ大学で教えてる中国人先生に訊いたところ、

≪アバウトだけど「3,4千キロ」ある。≫

と、大国からの先生は平気な顔して返事を。運送経路は遠くてとぉ〜〜い。

日本から一歩も出た事がないと告白してた「朴」の留学時代の「日本古典文学」担当の先生は、

≪大昔に、あれだけの人数が乗れる船なんかあったか。そんな製造技術あったはずはない。≫

と、古代人を馬鹿にする発言多かったけど…

和田地区の「山」で採掘したチョ−おもぉ〜い「原石」や「玉の河」で拾った「原石の粒」をどうやって「中原」まで運んだのかな?

今日、地球レベルで流行ってる大型健康ランドっぽい施設は、2000年も前に地中に埋もれていたイタリア古代文明「ポンペイ」の雄大かつ豪華な「テルマエ(Thermae)公衆浴場)」が元祖。きっと、中国の古代には高速道路を走る車や空を飛ぶ飛行機よりずば抜けた運搬手段あったような直感。文明は繰り返されるものだから!!

≪まさか、あれだけ重い「原石」をラクダの背中に乗せ、人間も乗り…(⊙﹏⊙✿)…そんなはずないよね?ね??≫

「Jade-road(ジェイド・ロード)玉の道」を通って「和田玉」を「中原」まで運んだのは※)「月氏族」だと。「月氏族」は西域の「玉」を中国に持ち込んだついでに中国の「シルク」を西域に持ち帰るいわゆる、物々交易の仲介人。※)紀元前3世紀から1世紀頃にかけて東アジア、中央アジアに存在した遊牧民族。「大月氏」時代には東西交易で栄えた。

中国では「玉」を「軟玉」と「硬玉」に分ける。英語では、玉の総称として「Jade(ジェイド)」という単語を用い、とくに軟玉と硬玉を分ける必要があるときは、軟玉は「Nephrite(ネフライト)」、硬玉は「Jadeite(ジェイダイト)」と示す。化学的にも鉱物学的にも「軟玉」と「硬玉」の化学組成は異なる物質であるが、現在は両方とも「翡翠」と呼ばれていると。

「玉=中国」のイメージだけど、あれほど広大な中国の地なのに「硬玉」は全く採れないみたい。地球レベルで「硬玉」の産地は限られており、中国雲南省に近い「ミャンマー」のカチン高原で採掘される硬玉の原石を輸入し、中国で加工する。

「硬玉」は美しい色を帯びてる「貴石(翡翠)」。「翡翠」の語源は、「翡翠(カワセミ)」が身体の一番外側の硬い羽根「フェザー(feather)」を広げると背部に生えてる芯のない柔らかい羽毛「ダウン(down)」が見えるが、その羽毛色がまさに、ミャンマーからの「硬玉」の色に似ていることから「翡翠」と名づけられたと言われる。このミャンマーからの「硬玉(翡翠)」がいつしか誤用され、「軟玉」をも指す語に変わってしまったとか。

「玉」の色って「白・黒・黄・青・碧(緑)・黒みを帯びた赤紫……等々」様々な色があり、青一色に絞るにしても中国の「青」は「緑・壁・青」などを含む幅の広い色なのに…?!

羽根(フェザー(feather)を広げると背部に生えてる柔らかい羽毛「ダウンdown」が見える。それが「翡翠色」。写真出典:美しいbird(254)「カワセミ翡翠」

「中国」では宮廷で天皇や王様などの高貴な人が使ってた磁器の「青み」を「★秘色★」と呼び、「英国」では王様などの王族系の高貴な人が使ってた「青」を「★ROYAL BLUE★」と名付た。両方とも「王様っぽい青」又は「高貴な青」の意味で付けられた色名のようだけど、「国王の〜」「王室の〜」という表現は抽象的過ぎてピンと来ない。

でもでも、朝鮮半島の高麗人は最高の青磁の色を、紛らわしくないように具体的かつ分かり易く、身の回りにある自然の中から「★翡色★」と称した。ちなみに、「翡翠(カワセミ)」の「翡」という字はカワセミの「オス」を、「翠」という字は「メス」を指す。

≪なぜ「★青★」は高貴な色?≫

「古代ギリシャ」&「古代ローマ」時代での「ブルー(Blue)」は死のイメージで避けられてたらしい。でも、化学顔料や染料が溢れる今日とは違い、「キリスト教」の宗教画では聖なる存在の彩色にしか用いられなかったほど「ブルー」は神秘的なイメージをもち、超高価であった時代があったみたい。

天然鉱物顔料である青系の色「ウルトラマリン・ブルー(Ultramarine-Blue)」の原料は、ヨーロッパの近くでは「アフガニスタン」でしか産出しない半貴石「ラピスラズリ」。それは海路で運ばれたため、「青系」の天然鉱物顔料を≪「ウルトラマリン(Ultramarine)☆海を越えての意」又は≪「ウルトラマリン・ブルー(Ultramarine-Blue)☆海を越えてきた青」≫と呼ぶようになったって。

イギリス放送協会「BBC」で制作・放送された『The History of Blue, BBC documentary,1993』を見た限りでは、遠い海を超えてきた硬い半貴石を人間の手で粉にし、「ブルー」の顔料が誕生するまでの過程は激キツ。苦労して手に入れたモノほど貴重。だから、「権威」のシンボルで「別世界」のイメージの「ブルー」は高貴な色。

話を再び「玉」へ戻し、

時が流れ、「儒教」を重んじてた時代の諸文献では「玉=君子」と位置付けられ、

「君子無故玉不去身」
「君子たる者は必ず<玉>を身に着けるべし」(「朴」の意訳)
<「佩玉(ハイギョク)☆おびたま」を付けるの意かな…?>

との記述が見られ、ソフトな感じを与える半透明な玉の色は奥ゆかしい君子の「仁」のイメージで、その緻密な組成はまるで、君子のぶれない「知性」の如く…(中略)…よって、「君子」は「玉」の如く珍しい存在である……云々。

あのね、近頃は単なるアクセサリー的なイメージがない訳ではない「玉」だけど、中国における歴史全体の過程を通じての「玉」の位置づけは、単なる飾りではなく、永遠不滅の信仰を担った防腐剤(?)、巫師が天神とコミュニケーション取る際のコードレス電話の役目。時には、支配階級のシンボルで、「論語」に顕われる君子の身につけるべき至高の倫理「五徳(仁・義・礼・智・信)」。「魔除け+お守り」の効能をもつ霊石でもあり、身体に着けてれば「健康と長寿」&「富と幸運」をもたらす縁起物…等々。「玉」は精神的な価値のある重要な存在として中国人の心を支えてきたの。

加えて、「竜脈の精気(一番良い気)」が最も集まる「吉地(パワースポット)」の土の結晶体である「貴石(宝石)」。「パワースポット」から生まれた高価の「プレシャスストーン(precious stone)☆貴石)」には特別な気が籠ってると信じられ、「東西・古今」問わず、勝ち組みの多くは「貴石(宝石)」を身に着けてた。「風水思想」って「紅山文化」時代から既に始まってたみたいでこの時代の最高統治者も「玉(貴石)」を身に着けてたわけ!今の時代には、安っぽい「ゲムストーン(Gemstone)☆パワーストーン」身に着けて運気がアップするのをめっちゃ期待してる可愛い発想の凡人、ゴロゴロしてるけど……

金やダイヤモンドよりもウ〜ンと珍重され、中国の美を代表する理想的な貴石「玉」だけど、その産地や埋蔵量には限りがあり、運搬経路や距離も半端じゃない。硬い原石を磨いて細工することは熟練を要するハードな作業。だから「玉」は中国人にとって「超レア(rare)物」。そんな訳で、彼らは古来からもっと容易な方法で玉器を生み出すことを長らく夢見てた。何もせず、結果が出ることばっかり期待する「朴」の発想にソックリ。(*^-^)

≪なぜ「★高麗青磁★」に憧れる?≫

エジプトからスタートし、中国に伝わったとされる低温で焼いた表面ざらざらで水気を吸い取る陶器に比べ、釉薬を塗り、高温で焼いたお肌すべすべで水を吸収しない中国生まれの青磁は「青銅器を模った姿+玉を模った色」。宮廷の皇帝のため工夫に工夫を重ね、人体に有害な顔料や染料を使わない「実用性+美学」抜群の世界最高の磁器が10世紀頃の中国でようやく誕生。その「ハイ テクノロジー(High-Technology)」☆高度の技術・先端技術」は朝鮮半島に伝わり、中国のそれとは趣が違う、センスがグッとアップした「★理想の翡翠の色★」を完璧に再現したのが「高麗青磁」!!

日本、東京国立博物館所蔵の釉色の美しい青磁茶碗「馬蝗絆」。写真出典:namu.wiki

この青磁茶碗(馬蝗絆)、中国の「南宋時代(13世紀)」に製作され、日本に持たらされたと伝わるけど、「朴」の「★直感★」では何となく、朝鮮半島で作られた茶碗のような気がする。その姿や色など全体的な趣が、まさに、朝鮮半島の感性そのもの!!これまでの定説は研究が進むと覆される可能性あるわよね?ね!(^_−)ウィンク

「土」を練って窯に入れ、煙突から煙を上げると窯から「宝石」が溢れ出る。これ、マジック?それとも、イエスが起こした奇跡?そうでもなきゃ、「アラジンと魔法のランプ」のような説話文学の世界??正解は何であれ、朝鮮半島の1000年も前の陶工たちは知ってた。大地の「白い土(磁土)」を「青い玉(青磁)」へと変貌させる「技」を。それは、土をもって玉を作る一種の古代の「錬金術」(化学的手段を用いて卑金属から貴金属を精錬しようとする試み)。正解はコレ!!

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韓国ソウル出身。韓国国会事務局退職後、1988年来日。大学で高等学校教諭1種免許(国語)取得。大学院で日本文化専攻。

名古屋市の官公庁などの翻訳・通訳人として活躍後、大学や名古屋市内の生涯学習センターなどで「コリア文化」に関する講座を担当。

現在は愛知大学、中京大学、中日文化センター、愛知大学オープンカレッジなどで韓国語講師をつとめる。

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