鉄道“超”基礎知識(1)「汽車」「電車」「列車」の違いとは? 2017/8/15

今回から、新たな連載企画として、「鉄道“超”基礎知識」をはじめます。

この連載企画では、誰もが知っているつもりだけど、実はよく判っていないとか、知っているとより鉄道を好きになる・楽しくなるといった内容を取り上げていきます。できるだけ判りやすく解説していきますので、ぜひ気軽に読んで、雑学として楽しんでください。

さて、今回はその初回として「汽車・電車・列車」を取り上げます。

どれも皆さん知っている単語でしょうが、実際に日常生活で使うのは「電車」だけでしょうか。昨今、鉄道車両をみると片っ端から「電車」という風潮があり、芸能人が「SL電車」と語るところをTV番組でみたこともあります。「SL電車」は現状ではあり得ない表現なのですが、それがどうしてかは、以下を読めばわかることでしょう。

鉄道は蒸気機関車が牽引する「汽車」からはじまった(於:明治村)

鉄道はイギリスで生まれ、やがて明治維新となった日本にも登場しました。明治5年の新橋〜横浜間開業です。

当時は、蒸気機関車が先頭にたち、客車や貨車を引っ張って走るのが一般的でした。そのようにして走る編成を「汽車」と呼びました。つまり、鉄道草創期の鉄道はみな「汽車」だったのです。

当時、蒸気機関車のことを「陸蒸気(おかじょうき)」とも呼びました。これは、鉄道より先に発達した船がやはり蒸気機関で運行されていて、その技術を陸上で使うことで蒸気機関車ができたためのようです。当時、蒸気船のことを「汽船」とも呼んでいます。ですから、その陸上版である蒸気機関車牽引の列車は「汽車」と呼ばれるようになったものと思います。

「汽」を使う単語として「汽笛」もあるように、「汽」は蒸気を使って何かをする際に使う漢字です。ですから蒸気圧を「汽圧」、ボイラーを「汽缶」と表現することもあるようです。

電車は、水力発電の電気を活用する目的で登場した(於:明治村)

次に「電車」を見てみましょう。

日本で最初の電車は、琵琶湖疏水を使った水力発電で得られた電気を使うために、京都市内で走りはじめた路面電車でした。京都電気鉄道という会社が明治28年に創業し、後に京都市電となります。その京都電気鉄道の流れを汲む路線を走っていた京都市電が、いまも明治村で走っています。

ここまでで判るように、「電車」は電気で走る車両です。路面電車だと1両が基本ですが、東海道新幹線のように16両も連結した「電車」もあります。いずれも、線路上にある「架線」から電気を取り入れて、モーターを回して走ります。

つまり、蒸気を使って走るのが「汽車」で、電気を使って走るのが「電車」ということです。冒頭で「SL電車」は、現状ではあり得ない表現と記した意味が判ると思います。ちなみに「SL」は、Steam Locomive の頭文字をとったもので、蒸気機関車そのものです。

注:電気の取り入れ方は他にもありますし、「汽車」には気動車を含むとする見解もありますが、ここでは省略します。

ところで、地方出身者と話していると、JR線を「汽車」、市電を「電車」と表現するケースを経験します。これは、地方都市では国鉄線が蒸気機関車牽引で走っていたのに対して、その地域の中心都市では国鉄開通後に市電を走らせはじめたため、国鉄線は当時の一般的表現「汽車」と表現し、新たにできた市電を「電車」と表現したことが由来のようです。

島根県の出雲市駅の近くに、山陰本線と一畑電車が併走する区間がありますが、そこにある踏切の一つに「汽車」と「電車」の文字が点灯する警報機があります。どちらも単線で、山陰本線のときには「汽車」、一畑電車のときには「電車」が点灯することで、どちらの線路に列車がやってくるかが判るものです。

「汽車」「電車」共に点灯し、一畑電車が一足先に通過中。手前の線路が「汽車」の山陰本線。

私が知る限り、このような表現をしている踏切は全国でもここだけです。

ところで、上の写真の直前に「どちらの線路に列車がやってくるか」と記しましたが、皆さん特に違和感なく読めたと思います。これは、「列車」とは鉄道線を走ってくる車両という意味を皆さんがご存じだからです。また、これは正しい解釈です。

ところが、車庫などに引き上げたり、出番を待っている鉄道車両は「列車」と言いません。どうしてか判りますでしょうか。

「列車」とは、営業線を走るために準備された鉄道車両の編成をいうのです。…ん、ちょっと難しいですね。

早い話が、駅で発車準備をしていたり、駅間を走っている編成はすべて「列車」です。「旅客列車」「貨物列車」というように、「列車」にはいろいろな種類があり、なかには「回送列車」や「工事用臨時列車」もあります。黄色い新幹線として人気のドクターイエローも、私たちが駅などで目にするときには「列車」として走っています。

それぞれの列車を区別するために、全列車に列車番号がついています。時刻表の各列車時刻の上部に記されている1M,21Dといったものがそれです。これら列車番号については、またいずれ記したいと思っています。

◇今日のまとめ◇
・「汽車」は、蒸気機関車が牽引する列車
・「電車」は、電気モーターで走る車両
・「列車」は、列車番号をもって営業線上を走る車両

次回記事
鉄道“超”基礎知識(2) 機関車と電車の違いは?

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年間のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを立ち上げて代表取締役に就任。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退したため、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、多数のCD-ROMやDVDタイトルの企画制作にも関わる。監修した「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)が話題となってTV番組タモリ倶楽部に出演したこともある。

最新著書は「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)。

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