全人類からスルーされる私の作品。 2017/10/13

連載5回目、今回ちょっと番外編というか、このコラムに書く内容の方向性について悩んでいるという話であります。ここにきて「誰に向けて書けばよいのか?」という問題に頭を悩ませております。
 

例えば、「こうすれば痩せる!XXXダイエット」という本があるとすると、それはダイエットしたい人、ダイエットに興味のある人に向けて書かれていると考えられます。つまりこのコラムにおける、そういう対象を考えるということです。

ダイエット本の読者層の図

このコラムの場合書きたいことを書けば良いとも思ったりするわけですが、1度ここで自分自身の頭の中を整理させて欲しいのです。

例えばプラモデルが趣味の人が、作ったプラモデルを部屋に飾るだけ、ということは普通にあることです。プラモデルを作る人の全てがプラモデルコンテストに応募したり、ネット上に画像をアップしたりすること、「自分以外の他者に見せる」ということを目的に作っているわけではないはずです。

例)プラモデルの観客の図 制作者が観客

しかし「1日中、毎日プラモデルを作ってたいよ〜」という欲求を持っていたりすると、それは作ったプラモデルを販売するか、プラモデル雑誌に掲載するプラモデルを制作するようなプロにならないといけないので、そうなるとやはり「自分以外の他者に見せる」という行為が必要になってくるのです。

例)プラモデルの観客の図 制作者と制作者以外が観客の場合

これと同じで自分の場合、通常いつも作品を制作するときは、自分以外の鑑賞者というものを全く想定しないのです。これは、かっこつけて書いているわけではなくて、卒業して23年間食えない美術作家としてアルバイトしながら風呂無しトイレ共同アパートで暮らしたりしていく中で、一時期は作品で生計をたてたいという思いから自分以外の鑑賞者やコレクターを意識して作ったときもありましたが、結局、意識したところで売れないというシビアな現実があり、そういうことは考えてもしょうがないという結論に至ってのことです。けして嘘くさい純粋さをアピールするためではありません。

そもそも自分の場合、作品を作りたい、という思いが先で、作品を見せたいという欲求はそれほどないのです。ただ、見せることによって制作費を捻出したりしているので、そのために見せているというわけです。制作費のためです。

この動画は個展で発表した作品「フラフープ車」の動画なのですが、2015年の3月に公開して2年半たつのに再生回数が120回と少ないです、1週間に1回再生されているくらいなのです。

YouTube動画 フラフープ車

しかもこの再生回数はたぶん自分が時々見ているからです。つまり実質だれも見てないのです。まあこのへんが美術作家として甘いとよく言われたりもするのですが。自分以外の他の美術作家が誰に向かって制作しているのか、わかりません。作家それぞれ違うと思います。

ただ、このコラムを書くようになってから、言葉でなにかを表現するときには、

「意味が通じているかな?」

ということを強く意識するようになりました。
自分は自分で書いているから、わかるのは当然なのですが、まあ、自分が文章が下手だということもありますが、そのことは別にしたとして、この言葉で表現するときは「理解されなくてもいいや」というふうには思えないのです。最低でも意味が通じないといけないからです。そういった時はやはり読んでいる対象ということを意識せざる得ないということになります。ふだん美術作品を発表するときは、作品が理解されようがされまいが、まあ、いいか、という気持ちになるのですが。
 
で、このインターネット上にアップするということは不特定多数の人に見られるということでして、この不特定ということが、結構、難しいところで、美術館やギャラリーに足を運ぶということは、そういうことにある程度、興味があるから足を運んでいると考えられます。しかし、この中日新聞+のコラムにアクセスするということは、それとはまた違うのではないのかと思うわけです。ここで対象となる読者というのが自分にはわからなくなってきたのです。
 
先日インターネット上でチームラボの猪子寿之さんというアーティストの方のインタビューを偶然読んだのですが、

猪子寿之氏「アートは“カッコいい”の基準を動かし人類を変える」「週刊ダイヤモンド」特別レポート  ダイヤモンド・オンライン

このインタビューの中で猪子寿之さんは、「人類に対して作品を制作している」というような主旨のことをおっしゃられていて、イヤミじゃなくほんとに「すげえ!マジリスペクト!」と思ったのです。自分も「人類に向けて作品作ってます!」とか言ってみたい。

そして、自分は『美術に興味のある人向け』『美術に興味のない人向け』『人類向け』という3択の、いったいどれなのよ!ということを思ってしまったのである。

で、僕は、自分に向けて制作してるので、どうしたって美術に興味のある人が読者の対象になりそうなものなのであるが、じつは前述したとおり自分は売れない美術作家をずっとつづけていることや、さきほど紹介した動画の再生回数の低さからも、おわかりのように、美術に興味のある人にも意味が通じてない。つまり、自分のやっていることは、『美術に興味のある人』にも『美術に興味のない人』にも『人類』にも意味が通じていないのではないのか?ということである。つまり、全人類に対して意味が通じないもの作ったり、書いたりしているということである。

人類からスルーされている自分の図

「自分は、この世界と通じあうものが一切無い」

この事実にハタ!と気がつき、ある種の虚無感に襲われながら、このコラムの次回、何を書くかを考えているのであります。


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現代美術作家

1972年愛知県生まれ
1994年ころから美術作家として活動をはじめる。
2010年あいちトリエンナーレ2010出品
2012年ご当地キャラ「オカザえもん」をデザインする。

【賞歴】
2005年
第8回岡本太郎記念現代芸術大賞展 特別賞
2014年
岡崎市制施行98周年記念式 産業功績者賞
2015年
平成26年度の愛知県芸術文化選奨文化新人賞を受賞

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