朝鮮半島の誇り、「高麗青磁」〜その5〜【前編】 2017/10/14

「朴」の亡き「父ちゃん」は、知人の出版記念会に出席した折には出版本を100冊も購入予約して帰ってきてた。

≪著者サイン入り本、2、3冊で十分なのにどうして100冊も??≫

と訊くと、

≪俺は金がないから100冊だけど500冊の人が多い。初版第1刷は当日売り切れたから増刷してからじゃないと…≫

と答えながら、500冊が買えない自分が残念で惨めに思えるのか、苦笑い。

ある年、「朴」が一時帰国したら「朴家」のお風呂場を除く全ての空間四面壁に「掛け軸+額縁」が掛かってる。

≪「朴」が日本に行ってる間に「父ちゃん」の趣味、「書道+東洋画」に変わっちゃったのかなあ〜?それにしても数が多過ぎる。≫

「朴家」の玄関扉と向かい合わせになってる四畳半程度の小さな部屋は本来「ヘルパーさん」専用。でも、狭苦しいので物置として使ってる。探し物のために扉を開けたら額縁がいっぱい。

≪〜oh!\(◎∠◎)/my God!!〜 これ、一体、どういうこと???≫

と、ヘルパーさんに訊いたら

≪ご主人様(父ちゃん)が、知人の「開業式」に行って店内の品、全部買い取ってトラックで運んできましたよ〜ん。≫

と、耳打ちしてくれる。

≪マジですか??????≫

と、「父ちゃん」に確認したところ、

≪前総理大臣の下で働いてた「Kさん」が辞職し、「国会議員○○さん」の秘書官を務めてたけど、訳あってまた辞め、「画房」をオープンしたけど、金に困ってるんだ、彼は現在。≫

と、理由を付ける。

≪「Kさん」なら「私」も面識あるけど、父ちゃんの家計火の車なのに、人助けばかりしてて大丈夫でしょうか?≫
≪君は女だから「男世界」の義理人情、理解できないぞ〜≫

と言い、娘との会話にピリオドを打つ。「朴」とは「★世界が違う★」父ちゃんは、このような「大盤振る舞い」で人生めちゃくちゃ。その後、博学多才の「Kさん」はまた転職し、遂には一旗揚げた。

韓国国宝第94号『青磁瓜形瓶』。壁色を帯びた優雅で端正な姿の「純青磁」絶頂期である「1146年」頃の作品。 写真出典:韓国文化財庁

話、飛ぶけど一昨年だったかな〜?名古屋のあるデパートで日本の「陶芸展」があり、仕事の合間を縫って行ってきたの。期間中、出展作家約20名が交代で作品を解説する「ギャラリートーク」が行われてたようだけど、タイミングが悪く、「朴」が会場に入った際には解説がほぼ終わりかけてた。でもでも、これはこれは、なかなか信じられない不幸中の幸い。出展者の一人である「○○先生」が、

≪高麗青磁を模した青磁も出品してますので是非どうぞ……≫

と言って解説を締めくくったわけ。

「朴」:私が会場に着く前にご説明されたかも知れませんが、この青磁の色は人工染料など使わずに出されたのでしょうか。
「○○先生」:いいえ、染料を使わずに、この色を出すのはなかなかできないので使ってます。

「朴」って思ったことストレートに言葉にするタイプの外人。なので「朴」へのカルチャーショック感じる周りの日本人結構いると思うけど、またもや、面と向かって「単刀直入」な質問を。

「朴」:日本の陶工の中には「豊臣秀吉」の兵士達に拉致され、日本に連れてこられた朝鮮陶工達の末裔が多いと聞いてますが、「先生」もその一人でしょうか。
「○○先生」:いいえ、僕は純日本人です。大昔の事ですが、僕が通っていた大学とソウルの「××大学」と交流があったので大学時代に韓国を訪れたことはありますが……
「朴」:「××大学」は、創立当時は美術大学としてスタートしたので現在も工芸分野では「国立△△大学」を除いてはトップレベルの大学ですから……云々……
「朴」:これほど素晴らしい作品が生まれるまでは時間と努力はもちろんながら、材料費もかなりかかったでしょうね。
「○○先生」:はい、ですから僕の家には「テレビ」がないです。
「朴」:自分の家にも「テレビ」ありませんわ。
「朴」:良い芸術品は無我の境地から生まれますから、芸術家は金とは無縁で当然でしょうね。
「○○先生」:いやいや、芸術家だなんて。僕はただの「職人」です。

「朴」と「○○先生」とは初対面なのに話が何となく合ってるような感じ。長々と話は続き、「○○先生」からお名刺を渡された。

「朴」:あ〜の〜う〜、自分は(★他人に渡す★)名刺、ないんですが……
「○○先生」:私みたいな人はあちこちで名刺配るけど、偉い先生は名刺など配りませんから。
「○○先生」:ここに、ご住所とお名前を書いていただけないでしょうか。

個展の案内状など送って下さるつもりかもと察し、迷わず、

≪はい、お書き致します。≫

と返事をし、ペンと紙を受け取る「朴」。

「○○先生」:郵便番号からお願い致します。
「朴」:(ア〜レ〜、郵便番号、何番だったけ…)

これは、やばいことになっちゃったと思いながら、モゾモゾと自分の財布から「名刺」を取り出す「朴」。

「朴」:あ〜の〜う〜実は、自宅の郵便番号・電話番号など覚えてなくて、自分用として持ち歩く名刺はあるのですが…(やばい、やばい)…老眼なのでメガネかけないと名刺の字が見えな、な……(((^_^;)冷汗。

「朴」って「名刺」は自分用しか持って歩かないし、携帯電話は他人には番号教えず、「腕時計」代わりに使ってた時期があり、≪緊急時に全く捕まらない≫と上司に言われたことあるの。ちなみに、≪今の時代にテレビ持ってないってマジ??≫と受信料集金員に疑われてる。相手が迷惑に感じるかも知れないけど、この「シンプル・ライフ(simplelife)」の第一歩、めちゃ気楽。 (*^-^) 「朴」ってチョイ変わり者?

ここまで話が弾むと普通、「○○先生」作の「青磁」購入するのが「礼儀」でしょ?!でも、「朴」は購入しなかったの。「朴」の周りに各分野の「名人」と言われる芸術家少なくないけど、作品に付いてる価格半端じゃないから。と言うよりも、義理人情型の人間関係で人生台無しにした「父ちゃん」が「反面教師」。いやいや、本音は【後編】のお終いに。

韓国国宝65号『青磁キリン形蓋香炉』。アフリカの首の長いキリンではなく、東洋の想像の世界の神聖な動物。煙は口から外へ出るように作られてる。陰核(凹み)で「雲」の文様が施されてる。12世紀制作品。 写真出典:韓国ソウル所在「澗松美術館」

世界に多大な影響を与えた「古代中国」の三大発明は、「羅針盤・火薬・印刷術」と言われており、これに「紙」を加えると四大発明。これ以外にも古代中国の高度な先進性を示す発明品は沢山あるらしいが、「朴」は中国の過去の「ある世紀」における偉大な発明の一つに「磁器(青磁)」を挙げたい。

磁土を練って成型してから釉薬を塗り、「★約1300℃★」の高温で焼しめられると、釉薬が溶けガラス質の被膜となり、吸水性0%で耐久性のある焼き物となる製磁技術。キッチン用品生産技術における革新は一般家庭の食卓、延いては世界の食文化に大きな変化をもたしたに違いない。

中国では紀元前14世紀頃(殷時代)から砂色や灰色を帯びた「原始青磁」が作られ、宋時代には最高度の技術を駆使した「天青(空の青)色」が生み出され、青磁の最高峰と言われる。8〜9世紀頃、中国からその新たな技術が朝鮮半島に伝わったわけだが、12世紀に至っては中国青磁のレベルを超える「実用性+美的感覚」に優れた高級青磁が制作され、宋時代の皇室を始めとする上流階級で好まれ、中国へ逆輸出。

この頃の日本では、軟質陶器は焼かれてたものの、竹や木を削り、器を作るのが一般的で、硬質磁器は「中国産+高麗産」を輸入して使ってたらしい。日本に製磁技術が伝わったのは17世紀。「高麗茶碗」を珍重してた豊臣秀吉の「朝鮮出兵(文禄・慶長の役)」の際、朝鮮半島から連れてこられた陶工達によって日本の磁器の製造がスタートしたと。

当時、約1300℃の高温で硬質磁器を作ることができた国は地球レベルでは「中国&高麗」しかなかったとか?!とは言え、中国青磁の頂点を極めてたと言われる宋青磁に比べ、高麗青磁は視覚的に大変美しい!!最も良い色合い「翡色」を出す技術を朝鮮半島の陶工達は完全に習得しており、宋の陶工たちは陶磁器に「象嵌紋様」を施する技術を持っていなかったから。

これは、※)「国粋主義」的な国想いに溢れ溢れた「朴」の主観的な感覚で高麗青磁を讃えてるわけではないよん。

※)自国の文化的ないし政治的伝統の独自性または優越性を強調し、それを政策や思想の中心的価値と考える思想一般をさす。

―「徐兢」の『宣和奉使高麗圖經』卷32、器皿3 ―
       (原文からの抜粋文)

〈陶尊〉陶器色之青者。麗人謂之翡色。
近年以來。制作工巧。色澤尤佳。
〈陶爐〉狻猊出香。亦翡色也。
上爲蹲獸。下有仰蓮。以承之。
諸器。惟此物。最精絶。
其餘。則越州古祕色。汝州新窯器。大槩相類。

〈青磁・酒瓶〉陶器の色が青いのを高麗人は「翡色」と言うが、
近来になってその制作技術が精巧になり、色艶が非常に美しい。
〈青磁・香炉〉「狻猊出香(獅子の形をしてる香炉)」もやはり「翡色」だが、
上には獣がしゃがんでおり、下には仰ぎ見る蓮花が支えている。
諸器の中、これが極めて精巧で優れてる。
他の物は、「越州(窯)」の古くからの秘色か、「汝州(官窯)」で焼た最新の青磁と殆ど似ている。
(抜粋・和訳「朴」)

「徐兢」は、「絵画+書道」方面の達人で「北宋」の第8代皇帝「徽宗」の使節団の一員として選ばれ、高麗に派遣されてた人物。『宣和奉使高麗圖經』(全40巻)は、「徐兢」が1123年に高麗の都「개경(ケギョン)開京☆現在の開城」に約1ヵ月滞在した際に見聞した事を1124年に完成し、「徽宗」に捧げた「高麗見聞記」。

「徐兢」は短い派遣期間中、高麗の地理・制度・儀式・人物・文物・風俗など広範囲に及ぶ情報を収集し、その諸情報を客観的に分析かつ深く理解し、高麗事情を北宋の天皇が分かり易いように「絵画+文章」に纏めることが出来たまさに「使者」にピッタリの人材。

初来日から数十年が経てもまともな『韓日比較文化論』一冊さえ書いてない、いやいや、書けない「朴」とはどえらい偉いの、中国青磁の絶頂期を生きる「徐兢」が鋭い視線で高麗青磁を観察し、褒め称えてるわけ。\(^▽^)/

<高麗青磁の三大美は「パステルトーンの色」「バランスのとれた造形美」「奥ゆかしい文様」>

「徐兢」が高麗を訪れた頃の高麗青磁は※)「純青磁」の全盛期。なので、「徐兢」は高麗青磁の「色艶+器形」の特徴に着目してる。

※)高麗青磁の変遷
☆1期(1050〜1150年)発生期:文様のない翡色と呼ばれる「青(緑)」単色の「純青磁」が制作される。「色+形」が特徴的。
☆2期(1150〜1250年)絶頂期:「象嵌紋様」が施された高級感ある青磁が制作される。「色+形+文様」が特徴的。
☆3期(1250〜1350年)衰退期:モンゴル(元)の侵入により、貴族的な「色+形+文様」から庶民的な青磁へ変わっていく。

「徐兢」が高麗を訪れた4年後(1127年)、「北宋(960〜1127年)」は「金(女真族)」に滅ぼされ、南遷して「南宋(1127〜1279年)」を再興する。「南宋」時代の「学者+収蔵家+何でも鑑定士」である「太平老人」は彼の著書『柚中錦』で天下第一の「人・物・事」を選び出し、その全ては中国から生み出されるが如く、中国の地名のみを並べているが、青磁に限っては人類歴史上最も美しいと言われる「北宋」の「汝窯」青磁には言及せず、天下第一の青磁は「高麗青磁」であると。

韓国国宝68号『磁象嵌雲鶴文梅瓶』。セックシー系女優を思わせるSラインのボディに「雲+鶴」を白・黒「象嵌」で描いた。13世紀制作。(実用的でありながら芸術的!!) 写真出典:韓国ソウル所在、「澗松美術館」

「高麗青磁」といっても「★ピンからキリまで★」。厳密に言うと(現在の)全羅南道「강진(カンジン)康津」&全羅北道「부안(プアン)扶安」で制作された青磁が「キリ」。

≪あれ〜え〜、ちょっと待った。「ピン」と「キリ」ってどちらが格上??≫
≪ピン。≫
≪それじゃ〜、「康津」&「扶安」青磁が「ピン」で世界的な「ブランド(名品)!!」≫

高麗時代に「康津」+「扶安」に設けられてた「官窯(宮廷直属窯)」では、「民窯(一般人向けの窯)」とは違い、王族や官庁・上流階級向けの一品物が制作されてた。北宋時代末期の「官窯」であった「汝窯(ジョヨウ)」に勝るとも劣らない、透き通った「★翡色★」を帯び、高尚な意味合いの「★象嵌文様★」が施された多種多様な「★器形★」の朝鮮半島独特の芸術的価値を持つ格調高い青磁を作り上げた。

(続く)

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名古屋市の官公庁などの翻訳・通訳人として活躍後、大学や名古屋市内の生涯学習センターなどで「コリア文化」に関する講座を担当。

現在は愛知大学、中京大学、中日文化センター、愛知大学オープンカレッジなどで韓国語講師をつとめる。

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