朝鮮半島の誇り、「高麗青磁」〜その5〜【後編】 2017/11/1

前回記事「朝鮮半島の誇り、「高麗青磁」〜その5〜【前編】

かしこまった席に置くだけで気高い雰囲気が漂う飾り物、気取った料理を引き立てる落ち着いた感じの器。と言われても、「高麗青磁」は凡そ1000〜700年も前の、自分とはかけ離れた骨董品の世界。だからピ〜ンと来ない。 (◎_◎*)

現代に置き換えて言うと、「エレガント(elegant)」な高級レストランでは、有料のお水メニューは基本で、料理がお洒落に見えるブランド食器は必須。大事なのは料理の「量」ではなく「食器」。これ、セレブの常識!!

そんな訳で【前編】に続き、高麗青磁の三大美「色・文様・形」の一つである「文様」の話。

元々、「상감(サンガム)☆象嵌(ソウガン)」は金属工芸の技法だったようだが 、それを世界で初めて陶磁器に応用したのは高麗の陶工達。象嵌には「正象嵌」と「逆象嵌」二つの技法があるが、チョー簡単に説明すると、

☆「正象嵌」は、生乾きの器面に彫刻刀で陰刻文様(凹み)を彫り、そこに「白土」と鉄分が多く含まれてる色違いの「赤土」を埋め込んで釉を掛け焼き、凹み通りの文様を付ける技法。(鉄分が多く含まれてる「赤土」は焼くと「黒」に変色する。)
☆「逆象嵌」は、文様が浮き出るように陽刻(凸み)し、文様の周囲に鉄分を含んだ異なる色の土を埋め、施釉・焼成を行い、文様を表す技法。

ちなみに、「北宋」からの使節団の一人であった「徐兢」が高麗を訪れてたのは、高麗独創的な「象嵌文様」が現れる前。

あまりにも美しいヌードのヴィーナスの前でウットリしてる少年の如く、「高麗青磁」の前に立つと「朴」の胸はときめく。タイムカプセルに乗ってそれを作った「陶工(芸術家)」やそれを愛用してた「文人」に会いに「朴」は高麗時代(918−1391年)へタイムスリップ。

「正象嵌」で描かれた「雲鶴文様」。雲と鶴の本体「頭・頸・翼」は「白泥」を、「くちばし・目・脚」は「赤泥」を使い、「白・黒」の2色で文様を表す。

国宝第68号『磁象嵌雲鶴文様梅n』※)「梅瓶」とは口が狭く肩の張った形の瓶。「正象嵌」技法で「雲+鶴」文様が描かれてる。12世紀後半製作。 写真出典:国立中央博物館

アメリカのセックスシンボルだったあの女優よりも魅力溢れるSラインのボディ(器形)。俗世を離れた広々とした青空。そこは、仙界に棲む長寿の象徴「鶴」が悠々と空を飛ぶ。体の動きが舞うように滑らかな飛行中の真っ白な鶴に空を流れるように雲が浮かんでる構図。鶴と雲の間に余白を多く残し、空へ向かって跳び上がったばかりの鶴、水平飛行中の鶴、方向を変え下降しようとする鶴の絶妙な姿を「白・黒」2色の「正象嵌」技法でリアルに表した。

「正象嵌」技法紋様。「白・黒」2色で「水辺+柳+水鳥」を表してある。

『磁象嵌浦柳水禽文瓢形注子』12世紀製作。 写真出典:国立中央博物館

夏のお昼の湖水の情景でしょうか?余白をたっぷりとった余裕ある「水辺+柳+水鳥」の構図。青々とした柳の枝が黒で表されており、静謐なる水面を白い水鳥が伸びやかに泳いでる。水鳥の大きさほぼ一緒だから泳ぎ方レッスン中の「親子」ではなさそう。倦怠期の「夫婦」でもないっぽい。たぶん、デート中のオスとメスかな?!オスより一歩下がって後を泳ぐ従順なメスのことがよっぽどお気に入りのよう。2匹とも前方向いて黙々とひたすら泳ぐ平凡な描写ではなく、先頭に立つオスが首をひねて後振り向くこの感性がお洒落。

しなやかに垂れ下がった枝の範囲内に水鳥を置く構図は、まるでデート中のラブラブカップルを人目につかないように密かに隠してるような感じ。でもでも、世の中そんなに甘くないよ〜ん。空の上から羨ましそうに見下ろしてる別の「雄」にバレバレ!!それを見落とさず、察知できる豊かで繊細な感性の高麗陶工。

高麗青磁の「象嵌文様」として最も好んで用いられた、鳥類の長であり「長寿・栄華・富貴」のシンボルである「鶴+雲」。そして、「水辺+柳+水鳥」の文学的かつ絵画的イメージは、朝鮮半島の「★文人★」の情緒にピッタリの、中国青磁では滅多に見られない高麗青磁独特の文様。

『磁象嵌雲鶴文様梅n』&『磁象嵌浦柳水禽文瓢形注子』の器面に施された文様は、余りにもリアルなのでまるで筆で和紙に描いた絵画の如し。騎馬民族の「力強さ・大胆さ」ともチョイ異なり、日本の「侘び・寂び」ともちょっぴり趣が違う「風雅」を求めてた高麗文人の美意識と理想の世界が伝わってくる。

「せまい日本、そんなに急いでどこへ行く!」これは、「朴」が来日するウ〜ント前、日本で流行ってた「交通標語」。

≪おーい、現代人!!高麗時代の「文人」の如く、もっとのびのび緩〜く、生きても良いじゃん。≫

と、言いたいところだが、「官僚・地主・文人」を中心とする知的でハイセンスな芸術を愛し、自由で伸びやかな文人文化が栄えてた「北宋」と「高麗」はそれぞれ、「女真族(金)」と「モンゴル族(元)」に攻撃され、ボロ負けしたの。

≪兵役義務なんか、や〜だ、や〜だ!!≫

と言い、ダンスが上手過ぎる乗り乗りの「K−POP」やドキドキはらはら三角関係の「韓ドラ」に夢中になってる韓国の「★一部★」の若者達、「北朝鮮」は義務兵役制度を強化し、核兵器次々と開発してるよ〜ん。

韓国国宝第66号『磁象嵌蓮池鴛鴦文様淨n』高麗時代製作。写真出典:(ソウル所在の)「澗松美術館」

≪「磁器」=「チャイナ(China)」=「中国」≫

これほど磁器の国としてのインパクト強い中国ではあるが、当代における中国のその手の分野の達人から「天下第一」と褒め称えられたのは高麗青磁!!パッと見ると目立たないけどじっと見ると嵌まる(★まるで「朴」みたいな (*^-^) ★)高麗青磁の魅力。全体的にはシンプルだけど「奥ゆかしい色」「完璧な造形美」「孤高たる文様」三拍子揃った、いかにも味わい深い焼き物。

食器・茶器・酒器・壷などのキッチン用品生産における新たな技術革新であった中国陶器は、外国で競って求められるようになり、海上「シルクロード」「セラミックロード(陶磁の道)」を通ってヨーロッパを含む世界各国へ輸出され、色々な国の食文化に大きな変化をもたらし、その輸出国であった「宋」や「元」はボロ儲けしてたに違いない。

でもさあ〜、

≪大木の下に小木育つ≫(権力者の下にはその庇護を受けようと弱い物が集まる意)
≪大木の下に小木育たず≫(大木の下は日光が遮られ、風通しも悪く、栄養分も吸い取られ、小木は育たない意)

あれだけ素晴らしき青磁を生み出した「高麗」の三面は海に囲まれ、北端はデッカイ中国大陸に塞がれ、販路が拡張できず〜もちろん、製磁技術教えて貰った中国の先人に感謝はしてるけど〜大国の青磁に遮られ、高麗青磁が世界に名を馳せ、世界の陶磁界をリードするチャンスは巡ってこなかったよ〜ん。

でもでも、有り難いことに、高麗青磁に感銘を受け、現代に高麗青磁をよみがえらせようと試みる「★日本人★」がいた、いる。

≪「大学&大学院」で化学を専攻し、「○○陶器」の研究員を務め、退職したばかり。時計や温度計などなかったはずの時代に、化学染料や顔料などを使わず、朝鮮半島の陶工達はどうやってあの美しい「青磁」を作り上げることが可能だったのか、それが不思議でたまらない。韓国語が上達したら高麗青磁に関することを調べたい。≫

と、「朴」のクラスに新規入会されてた男性の方は、韓国語学習を始めたきっかけを述べられてた。

そして、名古屋のあるデパートで催された「陶芸展」で出会った「○○先生」は、

≪人工染料を使わずにあの色は出せない。これは現代技術を以てしても再現不可能だ。≫

と、おっしゃった。

1000年前に作ったモノが今は作れないのはとても不思議。あまりの美しさに中国のこの種の達人も驚いた極上の高麗青磁。口惜しいことに、高麗青磁の製作法に関する体系的な文献資料は殆ど伝わってない。なので、高麗青磁は既に消失した技術的に再現できない祖先の神技。

美しい青磁は、

≪「匠(芸術家)の技」+「窯の中の炎の変化」+「鑑賞する人のセンス(感覚)」≫

から生み出されると。

高麗青磁は、当時の「ハイテクノロジー(high technology)☆先端技術」・生活様式・美意識・価値観等々を物語ってくれる。

なので、高麗青磁を模して作られた「○○先生」のあのアート品は、高麗青磁の本場から来てる「朴」が「義理」でわざわざ買い求めるよりは、「★モノ★」を通してそのモノを作り、それを使った人々の精神に触れることができる、日本の常識という枠組みに囚われず、「時空」を超えた「グローバル(global)世界的」な視野で物事を考えるセンスを身に付けた「★日本人★」の手に渡った方がウ〜ンと有意義。

そうなれば、「○○先生」は「テレビ」が買えて、極端に面白い「韓ドラ」も見られるかも。

≪「○○先生」の冗談、本気にするなんて「朴」は馬鹿ね。≫ (^_−)ウィンク

国宝95号『磁透刻七寶文香炉』12世紀製作。香炉の胴部には花びらが一枚ずつ付けられた蓮の花が表現されており、七宝文様が透かし彫りで作られた球形の蓋から煙が広がる構造。三羽のウサギの装飾が施された足が香炉を支えてる。陰刻・陽刻・透彫・象嵌などの技法が結集した高麗時代の傑作。 写真出典:国立中央博物館
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韓国ソウル出身。韓国国会事務局退職後、1988年来日。大学で高等学校教諭1種免許(国語)取得。大学院で日本文化専攻。

名古屋市の官公庁などの翻訳・通訳人として活躍後、大学や名古屋市内の生涯学習センターなどで「コリア文化」に関する講座を担当。

現在は愛知大学、中京大学、中日文化センター、愛知大学オープンカレッジなどで韓国語講師をつとめる。

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