【第39回】日本に暮らす外国人に地元食を! スーパー業界の“奥さまは魔女”「ナショナル麻布」<前編. 魔法の始まり>  2017/10/31

「ナショナル麻布」お向かいの有栖川公園の緑のお陰で、地下鉄「広尾」駅から徒歩1分とは思えない静かな環境

東京・広尾で1962年にオープン以来、日本在住の外国人の食を支え続けてきたスーパーマーケット「ナショナル麻布」。日本に居ながら母国の味が揃う店として外国人からは長年にわたり絶大なる信頼を得てきた一方で、「まるで外国のスーパーのようでオシャレ!」と惹かれてやってくる日本人も集まる、特別な存在です。

しかしながら、これまで業界誌などで取材されることがほとんどなかった同店。スーパー業界の中では別格すぎて(価格帯や品揃えが一般スーパーとスケールが合わない)、ご紹介の機会がなかったのではないかと推測しています。

また、ネット上に間違った情報も出回っているため、公式にその歴史まで掘り下げる記事は、本邦初。今まで、語られることがなかった「ナショナル麻布」の誕生秘話や当時の様子、そして醍醐味を今日あきらかに! 


【品数の多さは信頼に応えた証】

「ナショナル麻布」中村店長:世界のご当地食に詳しいだけでなく、今回の取材で明らかになった創業秘話も知るナイスガイ

「毎日、常連のお客様とコミュニケーションをとることができるのが強み。それができるのも大きなチェーン店ではないから」と話すのは店長の中村智也さん。ナショナル物産が展開するスーパーはこの「ナショナル麻布」と「ナショナル田園」、そして「ナショナル麻布広尾ガーデン店」の3店舗のみ。特に麻布本店の周辺には各国大使館もあり、また港区在住の外国人も多く、顧客が欲しがるものを探して輸入することをしてきた結果が、現在の品揃えになったと言います。

このスタイル、よく考えてみれば昔ながらの個人商店のような関係。オシャレでちょっとお高くとまった店というイメージが少なからずあったけれど、完全に間違っていました。むしろ、気さくでとてもフレンドリー。品数の多さは、築き上げた信頼の大きさに比例しています。


【店内拝見! 軽いカルチャーショックを覚悟】

一歩足を踏み入れると、そこには魔法にかかったような別世界が広がっています。
表示はほぼ英語ですが、店員さんは日本語OK 。外国人対応として、産地の表示は地図と番号でもわかるよう工夫も。

それぞれの売り場の写真とともに、海外気分をお楽しみください。

〜食べる植物図鑑! 野菜売り場〜

エクアドル産TINDOK(ツンドック) 180円

TINDOK(ツンドック)はフィリピンでの呼び名で、アメリカでは料理用バナナ「Plantain(プランタイン)」で知られています。バターでソテーして砂糖をまぶすと大学芋のようなおやつに。日本のスーパーでは扱いがないけれどアメリカでは野菜売り場に必ずある商品。

〜日本は乳製品が乏しいと気づく圧巻のチーズ売り場〜

チーズは常時250種以上。数だけでも都内随一ですが、珍しいものも各国出身者のために輸入。

キプロス産 ハルーミチーズ 1,200円

ハルーミチーズは地中海キプロス島を代表するチーズ。世界でもこの地域でしか食べられていないという超レア商品です。
食べ方もちょっと変わっています。薄く切って水にさらして塩分をお好みまで抜き、フライパンでこんがりと焼き色がつくようソテー。キュッという不思議な噛み応えも面白く、ワインやビールのおつまみに最適です。


〜お手頃! ワイン好きのためのワイン売り場〜

もしかして「ナショナル麻布」のワインより、自宅近くのスーパーの方がワインはリーズナブルと思っていませんか? 欧米人は毎日の夕食にワインを楽しむため、同店では1,000円台という手頃な価格帯のワインが一番多いのです。むしろ1,000円台のテーブルワインを探しているなら「ナショナル麻布」へ。

〜毎日の生活をハッピーに! ホーム&パーティグッズ〜

建物の2階には生活雑貨やパーティグッズ、それから文房具、カード類が豊富。階段を上がっていくと、もう香りが外国。洗剤も各国別の人気商品がズラリとならび、デザインも見比べられます。ちょっとした現代アート鑑賞気分。季節のパーティ関連も本場に負けない熱量です。

【ナショナル麻布のオンリーワン! 】

ナショナル麻布の魅力は、品揃えだけではありません。食にこだわる外国人にも安心して買い物してもらえる高い品質と、オンリーワンのサービスがそこにあります。

〜人気N0.1! 芳醇ひきたてピーナツバター体験〜

アメリカ人が愛して止まないご当地食の代表格が「ピーナツバター」。本国ではピーナツバターだけで一台の陳列棚を占領するほどの品数があるだけでなく、ピーナツバター味のチョコやクッキーを各食品会社が競うように製造しています。“アメリカ人の体は「ピーナツバター」でできている”と言っても、決して大げさではないのです。

だから「ピーナツバターマシーン」はアメリカのスーパーでも人気。国内でこのマシーンがあるスーパーは希少なうえ、3種のナッツを挽くことができるのはここだけ。ピーナツ100%のみでできているピーナツバターの美味しさを日本人が知ることができるチャンスです。セルフのピーナツバターやアーモンドバター製造を体験してみてください。

「ナショナル麻布」売れ筋商品ベスト3がこのひきたてナッツバター3兄弟。
1位 ピーナツバター 528円:無糖なのでピーナツ本来の風味を楽しめ、料理にも使えます。
2位 ハニーローストピーナツバター 698円:優しい甘さでパンにぴったり。
3位 アーモンドバター 798円:ナチュラル派の健康食としても人気。無糖なのにほんのり甘さも感じます。

<作り方>

下の棚から好みの原料を選び、セルフサービスでつくって、あとで会計します。
1. マシーンの上部に袋から取り出した豆を投入
2. 専用の器をセットしスイッチオン。器を動かしながら受ける
3. スプーンで取り出し口に付着した分をとり、蓋をする
店長直伝の技:蓋をする前に空気を抜くように器を軽くトントンすると、表面がなだらかになり美しい仕上がりに。

本国アメリカでは上部のタンクに常時ピーナツが充填されているので、スイッチを入れて好きな分だけつくって買うことができるそう。「でもここは日本。やはり衛生面を考慮し、1個づつの袋入り原料を用意しました」と中村店長。

さらに、店長からのマル秘情報。近々この挽きたてナッツバターシリーズが4人兄弟になる予定だとか。ヒントは「無糖なのに甘みが多い」。どうぞ悩みながら、登場をお楽しみに!


【映像の老舗「東北新社」グループの理由】

「ナショナル麻布」の建物の上部を見てください。どこかでよく見る、あのマーク。「ナショナル麻布」の会社であるナショナル物産が、映画や衛星放送(スターチャンネル、ファミリー劇場、ヒストリーチャンネルなど)で知られる「東北新社」のグループ会社であることは、ちょっと意外かもしれません。

じつは、創業の1960年代は国内制作のドラマより海外からテレビ映画が数多く輸入されていた時代。テレビ映画の日本語版吹替え制作会社を劇団四季の創立者・浅利慶太さんらと立ち上げたのが、現・最高顧問で創業者の植村伴次郎さんでした。その後、植村さんが吹替え制作の事業を引き継ぎ独立し社名を「東北新社」としました。

1970年代に撮影された貴重な「ナショナル麻布」の姿。一見、変わっていないようで、じつは現在の建物は2012年の大リニューアル時に写真当時のエントランスデザインを復活させています

1972年、「ナショナル麻布」の前身であったスーパーマーケットの華僑経営者が、日中国交正常化に伴い渡米することになり、植村さんが店を買い取ったことが始まりです。それを機に広尾周辺の各国大使館向けにさらにインターナショナルな品揃えに。また、日本のスーパーで近年やっと現れ始めた買い物のついでに給油できるガソリンスタンドも、このころすでに展開していました。※現在はありません

当時、東北新社が吹き替え版を制作したアメリカのテレビ映画「奥さまは魔女」は、のちに繰り返し放送され東北新社の名前を有名にしたのですが、同時に、私たち日本人が知らなかったアメリカ人の豊かな生活をテレビで見せてくれ、その憧れのライフスタイルをスーパーマーケットとして広尾の街に誕生させたのも、やはり東北新社だったという事実。クリエイティブな映像業界の大手でありながら商品物販のスーパー事業も展開する理由として思わず納得し、国内スーパーに圧倒的に足りていないと感じるのが、この考え方。

「スーパーマーケットもクリエイティブである」
(PHILEWEB Senka21 トップインタビュー記事より引用)

その後、現在にいたるまで、映像事業とともに、食品の事業も拡大。平成に入ってからは植村さんの故郷の秋田で江戸時代からつづく木村酒造も傘下に入り、今度は日本の食の素晴らしさを海外に伝え始めています。

「ナショナル麻布」が地域の外国人に支持される理由と謎について、理解していただけましたか? 日本にいながら世界に通じている「魔法」のスーパーなのです。そして、魅力はまだまだたっぷりあります。

次回も、「ナショナル麻布」<後編>をお届けします。

ナショナル麻布スーパーマーケット
〒106-0047 東京都港区南麻布4-5-2
TEL : 03-3442-3181
OPEN:8:30~21:00 年始のみ休業


※記事中の価格は税込み価格で取材時のものです。また紹介した商品は常時取り扱いがあるとは限りません。

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スーパーマーケット研究家

65年東京生まれ、名古屋在住。一女の母。

サラリーマンの夫の転勤で国内外の転居を繰り返す中、スーパーの研究を始める。2012年に出版した著書が話題となり、出演したテレビ番組で紹介した岐阜県高山市の隠れた日常食「あげづけ」が大ブレーク。現在は、テレビコメンテーターのほか新聞や雑誌の連載、講演活動をこなしつつ、子育ての隙をみて、自腹で全国のご当地スーパーを行脚。埋もれた日常食の発掘とその魅力を伝えている。

著書/『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』『日本全国ご当地スーパー 隠れた絶品 見〜つけた!』(講談社)

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