迷走する教育費の無償化 2017/11/15

「教育費の無償化」は、言わずと知れた安倍首相が衆院選で突如掲げた公約です。3歳〜5歳児は全世帯で幼稚園と保育園の費用が無料になり、高等教育と2歳児以下は低所得世帯に限り無料にするというものです。この目玉公約が突然出てきて、選挙ってすごいな。と思いましたが、これに賛同して投票した人も多かったのでしょうか。まだ政府は検討段階なので、最終的に決まるのは年内ですが、まずは現状把握をして議論に関心を持ちましょう。

すでに現在、幼児教育無償化や減額はかなりの範囲でなされています。
@生活保護世帯は無料
A年収約250万円未満の住民税非課税世帯の第二子以降は無料
B年収約250万円〜360万円世帯の第二子は半額、第三子以降は無料
C年収約360万円以上の世帯で、3人以上が同時に通うなら、第二子は半額、第三子以降は無料。

今回、幼児教育で変更しようとしている点は以下の通りです。
@年収約250万円未満の住民税非課税世帯の第一子も対象とする
⇒消費税から約数十億円があてられる予定です。
A3歳〜5歳対象に、所得制限を設けず全世帯で、幼稚園、保育園の費用を無償化
⇒約8千億円があてられる予定です。
B認可外保育所等(ベビーホテル、事業所内保育所、自治体が独自に補助金を出している施設利用の約24万人)も原則無償化の対象(当初は対象外であったが反発が広がったため方針を転換)
C0歳〜2歳は、低所得である住民税非課税世帯(約6千世帯)が無償化
D「児童発達支援」(障害児の生活指導)もカバー

無償化は2020年度までに実施する予定です、現在の幼稚園の補助上限の25700円を上限として、0歳〜5歳の約11万人を対象に支給する予定です。ただし病児保育、一時預かり、延長保育は臨時的利用なので対象外です。高額な幼稚園に通っている場合、余ったお金で塾や習い事に費やすことが予想され、教育格差がまた拡大する懸念があります。

次に検討されている変更点は高等教育で、約8千億円弱をあてる予定です。
@住民税非課税世帯の学生を対象に、国立大学の授業料を原則無償化。私立大学は、国立大学と授業料の平均額を比較して、その差の約半分を国立大学の免除額に上乗せする予定。
A給付型奨学金(返済必要なし)を生活費支援として拡充
B私立大学で下宿の学生には、年100万円程度を支給
C無償化の対象でない低所得者層には、給付型奨学金を配布

以上、待機児童対策と介護人材の待遇改善を加えて、2兆円の予算となっています(1兆7千億円を無償化。3千億円は産業界からの拠出)。しかしもともと、消費増税は2012年の「社会保障と税の一体化改革」で、借金で社会保障をまかなう状況を改め、財政健全化のために出てきたものです。10%に増税すると5兆円が増えるので、1兆円を社会保障に、4兆円は新たな借金減らしにあてるはずでした。しかし4兆円の使い道があっという間に変えられてしまいました。教育費の無償化というニンジンがぶら下がると、多くの子育て世帯が反対していた増税には、もはや反対できないですよね。教育費無償化で今の親は楽になるかもしれませんが、借金は減らないので、結局は子ども達に負担が回るだけです。

無償化された分、では消費に回るか。と言うと、やはり今後が心配な世帯は貯蓄に回すでしょうし、高所得者は補助教育費に支出するでしょう。選挙用でキャッチーですが、財源がない中、今後対象者の変更、縮小も考えられます。教育費が高いのは問題ですが、だからと言って無償にまで一気にする必要があるのか。高等教育に関しては、海外では自分で働いて稼いでから大学に行く人もいます。無償化のために使われる金額が大きすぎて、消費者にはピンと来ないのかもしれませんが、本当に勉強したい人にとって、どのような方法がよいのかをもう少し議論する必要があるように感じます。悪質商法のように、「タダ」という言葉は、一番引っかかりやすく危ないと思うのですが・・・・。

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岐阜大学教育学部教授・博士

京都市生まれ。ノートルダム女子大学(京都)文学部卒業。大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了。

現在、岐阜大学教育学部教授・博士(学術)、放送大学客員教授。

家庭経済学、家庭経営学、家族関係学、アーミッシュ研究等の講義を担当。

放送大学ではラジオで「生活経済学」の講義を担当(2012〜2016年)。

主な著書 『ちほ先生の家計簿診察室』(名古屋リビング新聞社2002年)、名古屋リビング新聞社、大阪リビング新聞社で家計簿相談を20年ほど担当。

『お金と暮らしの生活術』(昭和堂2012年)、『仕事・所得と資産選択』(放送大学教育振興会2008年)、『アーミッシュの謎』(共訳、論創社1996年)、『アーミッシュの学校』(共訳、論創社2004年)、『アーミッシュの昨日・今日・明日』(共訳、論創社2009年)、『生活経済学』(放送大学教育振興会2012年)など。

趣味:毎日家計簿をつけること。ただし買い物好きなので家計チェックは自分にはあまり生かせていないかも・・・・・

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