甲子園からパラリンピックへ〜パラ陸上・高橋峻也選手〜 2018/5/19

「Standard愛知」編集長の森川誠です。今回ご紹介する地元のアスリートは、パラ陸上やり投げの高橋峻也選手です。現在、日本福祉大学に通う高橋選手は、大学に入学してからやり投げに取り組むようになりましたが、競技歴わずか1年ちょっとでみるみる記録を伸ばし、日本パラ陸上競技連盟の強化指定選手にも選ばれています。

3歳の時に脊髄の病気を患い右ひじをほとんど動かすことができない高橋選手ですが、幼い頃から野球に夢中になり、小学生の時から少年野球チームに所属していた野球少年でした。

「小学生で野球を始めた頃から、ただボールを捕って投げるという動作だけでもみんなの倍くらい時間がかかるし、“自分は他の子と違うんだ”ということは理解していました。だからこそ、他の人の倍は努力しなきゃって思ってずっと練習をしていました」

そう話す高橋選手が身につけたのが「グラブスイッチ」という技術です。かつて、メジャーリーグでも活躍した隻腕の名投手ジム・アボット選手が使った技術で、左手にはめたグラブで捕球すると素早く右手でグラブを支え左手で投げるという高等技術です。この技術を父親から教わり、何度も何度も練習を重ねることで自分のものにした高橋選手は、俊足強肩の外野手として活躍します。

高校は鳥取県の強豪・県立境高校に進学し、3年生の夏には夢だった甲子園出場を果たしました。

「甲子園を目指して野球をしていたので、メンバー入りできたのは嬉しいの一言でした。甲子園は球場の雰囲気も違うしお客さんの数も凄くて、こんな中で試合ができるんだと興奮したのを覚えています」

残念ながらチームは初戦で敗れてしまい、高橋選手も試合に出場することは叶いませんでしたが、背番号10をつけベンチ入りしました。練習でグラブスイッチを見せた高橋選手の姿は新聞などでも取り上げられたので、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。
こうして自らの努力で甲子園出場という大きな夢を叶えた高橋選手でしたが、甲子園が終わった後は目標を見失ってしまい、ただなんとなく毎日を過ごしていたと言います。

「卒業後は野球はもうやらないと決めていましたが、他にやりたいことや目標もなく、このまま就職するのかなぁ?それとも専門学校に行ってみようかなぁ?ってぼんやり考えるくらいで、進路についても何も考えていませんでした」

とその当時を振り返る高橋選手に大きな転機となったのが1本の電話でした。電話の主は日本パラ陸上競技連盟の理事長で日本福祉大学陸上部の監督も務める三井利仁監督でした。その電話で高橋選手は「一緒にパラリンピックを目指さないか」と誘われたのです。

「パラリンピックの存在はもちろん知ってましたが、ずっと野球ばかりやってきた自分がその舞台に立つなんて考えたこともなかったです。何より新しい目標を与えてもらえたことが本当に嬉しかったですね」

そう話す高橋選手に迷いはありませんでした。野球で鍛えた肩の強さを活かせると考えて始めたやり投げでしたが、実際にやってみると野球とは違うことばかりで難しいと高橋選手は言います。特にやりを離すリリースの感覚は野球とは大きく違うそうで「野球は顔の前あたりでボールを離すんですが、やり投げは耳の後ろあたりでリリースする感覚です。それほど違いはないように見えるかもしれませんが、こんなに難しいとは思いませんでした」と苦笑いするほど感覚の違いは大きかったようです。

それでも幼い頃に夢中になって野球の練習をしたように、意欲的に練習に取り組んだ高橋選手の記録は、入学当初の30メートルからわずか1年足らずで45メートルと飛躍的に伸びていき、「大会に出るたびに記録が伸びるのが楽しい」とさらに高い目標を持って練習を重ねています。そんな高橋選手が今年最大の目標だというのが10月に行われるアジアパラ競技大会です。

「アジアパラは、やり投げの経験が少ない自分が世界レベルを経験できるチャンスです。出場するのも簡単ではないですが、1試合1試合集中して毎回自己ベストを出すことができれば、必ずたどり着くことができると思ってます」

と高橋選手本人も言うように、アジアパラ競技大会に出場するには55メートルの記録が必要になります。あと半年足らずで10メートル伸ばすのは簡単なことではありませんが、その先にしっかりと世界≠見据えて練習する高橋選手なら不可能ではないはずです。白球をやりに持ち替え東京パラリンピックを目指す高橋選手に、ぜひ注目してみて下さい!

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