明治村の鉄道3…蒸機列車の客車にも注目を 2017/4/21

明治村で蒸気機関車に乗る…といっても、実際に蒸気機関車に乗れるわけではなく、蒸気機関車が牽引する客車に乗ることになります。

その客車も、実は明治時代に製造された新製後100年を優に超える車両たちで、なかなか貴重なものです。今回は、その客車の楽しみ方をご紹介します。

なお、今回紹介する写真は特別に許可を得て撮らせてもらったもので、通常はこの角度から撮ることができません。その点を予めご了承下さい。

3両編成の客車両端は、オープンデッキ付のハフ13とハフ14

明治村の蒸気機関車は、3両の客車を牽引しています。その両端は、ハフ13とハフ14という客車となっています。上の写真を見るとわかるとおり、乗降口がオープンデッキになっています。車輪は2軸4輪で、2軸車と呼ばれているタイプです。いまや鉄道車両が一般的に採用している、台車を客車の前後に1つずつとりつけたボギー車に比べると、簡易な走り装置であることが見るだけでわかります。

2軸車は、一部のレールバスと呼ばれるディーゼルカーに採用されたこともありましたが、いまや営業線からは全滅しました。それだけに、この2軸車の乗り心地は貴重な体験です。

上の写真では屋根上が判りにくいですが、丸く沿った屋根の上に、もう一つの屋根が載っています。モニター屋根と呼ばれるもので、二つの屋根の間にはガラス窓がついていて、車内にできるだけ外光を注ぎ込むようにしているのです。これも、電気照明が発達したいまでは、見ることがなくなった構造です。

窓にも注目です。窓の下には前後方向に一枚板が渡してあることが判ります。ウィンドウシルと呼ばれるもので、客車の長手方向の中央部が自分の重さによりたるんでくるのを防ぐ目的で取り付けられています。

窓そのものも、ガラス窓とカーテン代わりのよろい戸が二重にあり、開けるときには少し持ち上げてから下に落とすようにできています。これは知らないと、どうやって窓を開け閉めするか判らない代物です。

なお、ハフ13とハフ14は明治45年(1912)年に新宮鉄道が自社で新製した車両で、3年前にはハフ13が故郷に里帰りしました。そのときは、和歌山県新宮駅(紀勢本線)の駅前で公開展示されたのですが、その際の搬出風景は、当コラムで紹介していますので、最下段に同コラムへのリンクを張っておきます。

3両編成の真ん中に連結されているハフ11

3両編成の真ん中に連結されているのは、出入口扉が客室内になっているハフ11です。

前述のハフ13,14と比べると、二重屋根の様子が異なることが見て取れるでしょう。また、ウィンドウシルだけでなく、ウィンドウヘッダーと呼ばれる窓の上側の板もついています。やはり車体中央部が垂れないように付けられているもので、シルとまとめて、シル・ヘッダー付と呼んだりします。

この車両はハフ13,14より4年前となる明治41年に天野工場で新製されています。天野工場は、大正時代に日本車輌製造に買収されて東京支店工場となった鉄道車両メーカーです。新製後は東京の青梅鉄道(現・JR東日本青梅線)で活躍したあと、山形県の高畠鉄道を経て秋田県の雄勝(おがち)鉄道に譲渡されます。高畠鉄道・雄勝鉄道ともにいまは廃線となっています。この雄勝鉄道時代に、新宮鉄道からやってきたハフ13,14と合流します。雄勝鉄道は戦時統合で羽後交通雄勝線となったうえで、昭和48(1973)年に廃止されました。

このころ明治村で蒸気機関車の動態保存を計画していたことから、明治村にやってきて今に至ります。

いまも動いている松葉スポーク車輪は貴重

上の写真は、ハフ11の車輪を写したものです。

ハフ13,14とともに2軸4輪車ですが、その車輪に特徴があります。最近の車輪は車軸部と周囲のタイヤ部の間に空間がありませんが、古い車両はこのように車軸とタイヤ部分をスポークで結んでいます。

余談ながら、国際線と国内線を両方持つ主要空港をハブ空港と呼びますが、より正確にはハブ・アンド・スポークです。車軸のことをハブとも呼びますが、ハブ・アンド・スポークとは、この車軸から放射状にスポークが伸びている様子を指します。

つまり、国際線がハブ空港に着くと、そこからスポークのごとく国内線が国内各地を結んでいる、もしくはその逆という意味です。この車輪を見ると、ハブ空港のサイトにでている航空路線案内図を思い出しますよね。

閑話休題

通常、スポーク車輪は車軸から棒が一本ずつ出ています。ところが、上の写真に写っているスポークは、車軸部分が2本で、タイヤに接するところで一つになっています。これが松の葉っぱが根本から先に向かって2本に分かれている様子に似ていることから、松葉スポーク車輪と呼ばれています。

いまも古い車輪として残っているものは時折見ますが、毎日動いている鉄道車両で松葉スポーク車輪を履いているのは、おそらく全国でもこの明治村のハフ11だけだと思います。

貴重な現役の松葉スポーク車輪として、長く使い続けて欲しいものです。ただ、このようにホームの反対側に行かないと見られないのが残念ですね。

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1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年間のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを立ち上げて代表取締役に就任。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退したため、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、多数のCD-ROMやDVDタイトルの企画制作にも関わる。監修した「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)が話題となってTV番組タモリ倶楽部に出演したこともある。

最新著書は「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)。

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