先輩球児から[1] 〜武藤大将(県岐阜商・2006年甲子園出場の4番) 2018/7/11

今年、『中日新聞プラス』の高校野球特集では、東海地方ゆかりの“元高校球児”たちにインタビューに行ってきました。高校時代を振り返ってもらい、現役球児へ向けてのアドバイスなども送ってもらいました。中には“あの人は今!?”のような懐かしい選手の登場や、玄人好みの人選もあります。

第1回は、2004年と2006年の夏、県岐阜商(岐阜)の主力打者として甲子園に出場した武藤大将さんです。高校時代は通算41本塁打を放ち、田中将大(現ヤンキース)、斎藤佑樹(現日本ハム)、前田健太(現ドジャース)らと並び、ドラフト候補に挙げられていました。筆者も生で見て衝撃を受けた、強打の左バッターです。

武藤 大将(県岐阜商・2004、06年甲子園出場)

むとう・ひろまさ/1988年5月生まれ(現在30歳)、大垣市出身。現役時は183cm,86kgで左投左打の一塁手・外野手。中学時代は岐阜ビクトリーボーイズ(現・岐阜中央ボーイズ)に所属。県岐阜商では1年夏に6番、3年夏に4番打者として2度甲子園に出場し、高校通算41本塁打をマーク。その後は日大〜濃飛西濃運輸(軟式)でプレーした。

●高校通算41弾の秘密は“リスト”

――県岐阜商では2004年、1年生ながら6番打者として夏の甲子園に出場しています。高校に入るまでは、どんな選手でしたか?
武藤 もともと体が大きく、小学1年で身長138センチ、小学6年で176センチありました。中学時代は、県内の強豪高校からほぼ全て、パンフレットをいただいた記憶があります。所属していたクラブチームの指導陣に県岐商OBが多く、自分も県岐商に進学しました。高校では当初、ついていくだけで必死でしたが、1年生の5月に練習試合初打席でレフトへ本塁打を打ち、それ以降スタメンで使ってもらえるようになりました。

――リスト(手首)の強いバッティングで、すぐに評判になりましたね。
武藤 小学生のころ、指導者に「野球はリストだ」と言われて強化を続けていました。強化といっても、風呂で雑巾絞りをするとか、手首のスナップでボールをひたすら宙へ弾(はじ)くとか、地味なことを繰り返すものでしたが。素振りやランニングとともに、ずっと続けていました。

――1年夏と3年夏、2度の甲子園の思い出は。
武藤 あまり覚えていませんが、あの風景には「これが甲子園か」と感動しました。あれだけの広い球場、大観衆。それまで体験したことのないものでした。1年夏は、自分たちの直後にダルビッシュ有投手(東北高/現カブス)の試合が控えていて、超満員でした。

高校3年夏の甲子園では大会注目選手の一人に数えられた(写真:本人提供)

●「コーチに頼りすぎていた」

――最後の夏は、地方大会で打率.182と不振でしたね。
武藤 実は2年秋からずっと不調で、そこから引退までに10本ほどしか本塁打を打てませんでした。2年夏までは約30本打っていたのに…。それまで教えてもらっていたコーチがいなくなり、自分の打撃を見失ってしまったのが原因。どこが悪いかも分からず、迷うばかりでした。今思うと、そのコーチがずっといるものだとばかり思って、頼りすぎていました。

――4番打者の武藤さんが不調でも、チームは岐阜県の頂点に立ちました。
武藤 僕たちの代は3年生が13人(うち2人は男子マネージャー)で、県岐商史上もっとも少ない学年ではと言われるほどでした。ただその分みんな仲が良く、3年生を中心とするチームの団結力はすごかった。それが唯一の強みでした。

――プロ入りについては、どう考えていましたか?
武藤 最終的に、プロ志望届は出しませんでした。ドラフト指名を打診してくれるプロ球団もあったようですが、評価がそこまで高い訳ではなく、「それならば大学に進学してからでも遅くない」という周囲の勧めもあったので。自分としてはプロへ挑戦したい思いが強くありました。大学2年でケガをしてプレーヤーを断念したときなど、その思いを余計に思い返していました。

●人々の体作りを支える道を、ライバル・市岐阜商の同級生と

――大学3年からは学生コーチとして活動後、岐阜県内の強豪軟式野球部をもつ企業に就職。6年ほど野球と社業で活躍したのち、現在は柔道整復師の資格をとるため、専門学校に通学しています。平日の夜は、同級生の高瀬紘一さんが営む「たかせ接骨院」と、併設のトレーニングジムで働く日々。なお院長の高瀬さんは高校時代、県岐阜商のライバル・市岐阜商の7番打者。二人は準決勝で対戦していました。

現在は柔道整復師を目指し専門学校へ通う傍ら、高瀬紘一さん(写真右)の営む接骨院、トレーニングジムで働く。高瀬さんは同級生で市岐阜商野球部OB。高校時代、二人は岐阜大会準決勝で対戦している

武藤 社会人の軟式野球部でプレーしていたとき、患者と院長という立場で、高瀬と久しぶりに再会しました。話をする中で、もともと学生時代からスポーツの裏方に関心があったので、柔道整復師の道を目指すことにしました。大学時代にケガをしたときを振り返っても、トレーナーさんがいなくて、治療方法などどうしていいか分からなかった。今、中学生など現役プレーヤーと関わる機会もありますが、彼らにはそういったことで躓いてほしくない。

――岐阜県で最も注目される「県岐阜商の4番」という立場も経験した武藤さんから、球児らにエールやアドバイスを。
武藤 「県岐商の4番」はやはり特別なものがありましたが、その分頑張れました。誰しも、プレッシャーをいい方向へもっていってほしい。最後の夏は、自分たちのやってきたことや、監督を信じてついていくしかない。それがチーム力になります。あと先ほども言いましたが、自分は高校時代、コーチがいてくれるから大丈夫だと無意識に思ってしまい、自分では考えない面がありました。そこは後悔していて、問題だったと何年か経って気づきました。今の時代はプレーの映像もスマホで簡単に撮れて、部員同士でもチェックし合える。引き出しを多く持っておくことが大事です。

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野球ライター

1984年生まれ、岐阜県出身。東海地区のアマチュア野球(高校/大学/社会人)を取材し、野球雑誌などで記事を発表している。年間のアマチュア野球観戦試合数は120を超える。

数々の野球部を訪れ、ひたむきな球児や情熱的な指導者、工夫した練習法などを取材。ここ数年のうちで東海地区からプロ入りした選手はほぼアマチュア時代から追いかけており、中日ドラゴンズで活躍する濱田達郎投手(愛工大名電高出身)や、西武ライオンズの高橋朋己投手(西濃運輸出身)らもその一人。

無名の好選手を“発掘”するのも得意で、評判の選手がいると聞けば練習試合まで駆けつける。プロ球団スカウトとも交流が深い。

野球場に足を運ぶこと自体の楽しさにも魅了され、学生時代を含めれば10年以上、球場通いを続けてきた。高校野球の地方大会は特に多くのドラマを見てきた部分。今年の夏に思いを馳せる。

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