特集・連載 考える広場

恋人もいない街角 

2016/12/17 紙面から

はあちゅうさん

 寒さ募る今ごろは人が恋しくなる季節。カップルにとって大事なイベントの一つ、クリスマスも間近だ。でも、最近は交際相手のいない若者が増えているという。「恋する惑星」に今、何が起きているのか。

◆恋愛上手は仕事上手 作家、ブロガー・はあちゅうさん

 恋愛が二の次になっている人は私の周りにもすごく増えてきています。恋愛するのはとりあえずキャリアづくりが一段落したらとか、子どもは欲しいけど、恋愛のプロセスには疲れたという人とか。週刊誌の担当者に恋愛特集は昔ほど売れないと聞きました。売れるのは健康とお金。あとは、嵐やEXILE(エグザイル)の特集。あんまり恋愛が楽しめない時代になってきているのかもしれません。

 仕事が忙しくて恋人に会う時間をつくれないという人もいます。今はSNS(会員制交流サイト)で、同期や先輩、上司がどういう仕事の成果を残しているか、見通しがよくなっています。向上心がある人ほど「追い付かなくちゃ」という強迫観念のようなキャリアへの欲望があると思うんです。どれだけたくさん働くかがキャリアに関わってくるので、恋愛を捨てて仕事に一心になるのもわかります。

 仕事も恋人も両方とることは可能だと思います。仕事のうまい人は恋愛もうまいんです。恋愛に必要な能力って仕事に必要な能力と一緒で、「人たらし」になるすべを得ている人だと思っています。「どうやったら人に気持ち良く動いてもらえるだろう」と考えるスキルは、恋愛を通して磨かれるスキルでもあります。

 私自身は恋愛推奨派です。自分の人生の中になかったものが入ってくるというのが、恋愛の楽しさの一つだと思うんですよ。私は今の彼氏と付き合って三年になります。彼に出会って、苦手だったコーヒーが好きになったり、知らなかった歌を知ったり。彼の好きなものを知りたいという純粋な欲求、好奇心が自分という人間の幅を広げてくれています。バージョンアップされて、新しい季節を味わっていると感じますね。

 もちろん、だからといって恋人のいない人がいてもいいと思います。それは社会のグラデーション(多彩さ)ですから。

 恋愛したい人には、ちゃんと自然に悩むことなく恋愛して、恋人とお互いを高めあう機会を逃さないでほしいです。相手の受け入れ難いところを許して受け入れて、相手に磨かれる経験。自分を脱皮するような感覚です。私にとって恋愛は自分を高めてくれるものです。どんな恋愛も無駄にならないと思うので、恐れずに恋愛してほしいと思います。

 (聞き手・秋田佐和子)

 1986年、神奈川県生まれ。慶応大在学中にブログ企画「クリスマスまでに彼氏をつくる」が話題になり書籍化。電通などを経てフリー。著書に『半径5メートルの野望』『恋愛炎上主義。』など。

◆難しい1対1の関係 著述家・phaさん

 僕の周りには交際相手がいない人、多いですね。恋愛が苦手な人や向いていない人は、世の中に一定数いるんだと思います。僕もどちらかというとそうですし。異性と付き合うよりも独りで好きなように生きたいという人もいるし、他人の感情を推し量るのが苦手な人もいます。

 恋愛をすると気持ちが前向きになるとか、いいことも多いですよね。だから否定するつもりはないですし、僕も女性と付き合っていた時期はあります。でもしなくてはいけないものではないし、機会があったら、という感じですね。僕の周りの人たちも、完全に悟って、恋人は全くいらないと考えている人は少ないです。これでいいのか、と迷っている人が大半ですね。

 それでも、社会調査で「異性との交際を望んでいない」と答える人が増えているとしたら、良い流れだと思います。恋愛はしなくてはならないものだという世間のプレッシャーが減ってきているのでしょう。以前なら、向いていないのに世の中に合わせて無理して恋愛をしていたような層が、もっと自然に「希望しない」と言えるようになったのではないでしょうか。

 僕は今、シェアハウスで、男性ばかり五、六人で暮らしています。昔に比べて「恋愛をして結婚し、家庭をつくる」という生き方以外にも、暮らし方の選択肢が広がっている。そんな社会の傾向も関係があるのだと思います。

 僕が恋愛は難しいなあと感じるのは、それが一対一の人間関係だからです。相手の気持ちを全部一人で引き受けるのは大変だし、二人で暮らすのは窮屈そうです。恋愛をするたび、僕は人の気持ちが分からない人間だな、と感じます。でも一対一ではなく、シェアハウスのように多人数で住んでいれば、ちょっと変わった性格でも複数人で分散して受け止められて楽だ、という面があります。一人で寂しくなることもないですし。

 同居人たちと恋愛の話をすることは、ほとんどありません。恋愛は本来とても個人的なもので、社会や他人にどうこう言われることではないですよね。国が心配して調査をしているとしたら、少子化につながるからでしょう。だったら、たとえば独身者でも子供が育てやすいように社会の仕組みを整えていく方が、恋愛を勧めるよりも効果があるんじゃないかと思います。

 (聞き手・中村陽子)

 <ふぁ> 1978年、大阪府生まれ。京都大卒。28歳で会社を辞めて以後、定職に就かずに暮らす。シェアハウス「ギークハウスプロジェクト」発起人。著書に『持たない幸福論』など。

◆金と時間、労力が不足 早稲田大教授・森川友義さん

 交際相手がいない、結婚しない人が増えていることこそ少子高齢化の原因です。既婚夫婦が産む子どもの数は1・94。結婚すれば二人は産んでくれる。結婚しない人が増えているから、1・42という出生率なのです。

 つまり、少子高齢化というマクロな政治問題は、結婚という個人の意思決定にまで落とし込んで考えないと解決できないのです。ところが、少子高齢化の政策というのは育児のサポートなど既婚者向けが多い。ターゲットを間違えています。なぜ恋愛や結婚をしない若者が増えているのかを探り、対策を考えなければいけません。

 なぜ「しない」のか。恋愛したくない若者が増えているという話がありますが、うそです。人間は、特に男性はパートナーを求めるようにできている。そこは全然変わっていません。「恋愛したくない」と言う学生を問い詰めると、実は「したいけど、もてない」と白状します。

 なぜ恋愛に興味なさそうなことを言うかといえば、心理学でいう「認知的不協和」のためです。達成したい目標(もてたい)があるけれど、達成できない自分(もてない)がいる。この不協和を解消しないといけない。そこで「自分はもてたいなんて思わない」と考える。

 皆が恋愛したいのに、「しない」人が増えているのか。恋愛は男が口説き、女が選ぶのが基本構造。男にとって恋愛は投資です。お金と時間と労力が必要ですが、これが不足してきた結果、「恋愛は面倒くさい」と言う人が増えている。

 労力とは、具体的にはコミュニケーション能力のことです。今の若者はパソコンやスマホに親しみ、一人で過ごす時間が増えて、この能力が低下しています。お金の面では、非正規雇用が増えて年収が下がっている。これでは結婚は難しい。三十代男性の結婚率を見ると、年収三百万円未満は9・3%、非正規は5・6%で、低さは歴然としています。ちなみに女性は年収による結婚率の差はあまりありません。

 対策としては、一つは正規雇用を増やし、結婚する世代の年収を増やすこと。二つ目はコミュニケーション能力を育てる方向に教育を変えること。スピーキングを重視すべきです。三つ目は、結婚仲介の促進です。見合い結婚が激減していることも結婚が少なくなっている原因。地方自治体などが力を入れるべきです。

 (聞き手・大森雅弥)

 <もりかわ・とものり> 1955年、群馬県生まれ。専門は進化政治学、国際関係論、日本政治だが、早稲田大では人気講座「恋愛学入門」も担当。近著は『大人の「不倫学」』(宝島社)。

 <若者の恋愛事情> 国立社会保障・人口問題研究所が昨年実施した「出生動向基本調査」によると、18〜34歳の未婚者で交際相手がいない人は男性69・8%、女性59・1%で、いずれも過去最高になった。男性の30・2%、女性の25・9%は交際そのものを望んでいない。一方で、男女ともに9割近くは将来的な結婚の意思はあると答えた。独身に利点があると考えている人も男女ともに8割超で、交際や結婚への動機づけは必ずしも強くないようだ。

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