再生エネの原点「ナイアガラ」 新城の水力発電、完成から1世紀 

2017/7/15 夕刊

水しぶきを上げる長篠発電所の水路。発電に必要な量を超える水は川に戻る仕組み=愛知県新城市で

 「ナイアガラ」の異名で一九一二(明治四十五)年に完成した中部電力の水力発電所の古参、長篠発電所(愛知県新城市、出力八百キロワット)が、再生可能エネルギー活用の好例として再び注目されている。わずかな流量の川水から最大限の電気を生み出すアイデアが光り、当時の発電機は今も現役で活躍。地球に優しい電源の開発が求められる中、土木や機械の専門家らに技術革新の意義を伝えている。

 寒狭川(かんさがわ)(豊川)から取り込んだ水が発電所の水路から幅百メートルにわたってこぼれ落ちる。異名は、北米の観光名所ナイアガラの滝と風景が似ているためと誤解されがちだが、実は工法がナイアガラの滝近くの発電所と同じ「縦軸式」を日本で初めて採用したことに由来する。

 「この辺りの川の流量は多くない。水力発電所設置のハードルは高かった」。三河地方の産業機械に詳しい元愛知県立工業高校教員の石田正治さん(67)はこの縦軸式のアイデアに注目する。

 当時、水車と発電機は水平に並べる横軸式が常識。だが発電所を建設した豊橋電気(現在の中電)は、川の水が少ない分、米ナイアガラ発電所を手本に水路に大きな落差をつけて出力を増やそうと決断。水車はできるだけ低い位置に、一方で発電機は洪水時に浸水しないよう高い位置に置いた。水車と発電機を上下につなぐ縦軸は異例の七メートルの長さに及ぶ、前例のない設計だった。

 建設を指揮したのは岐阜県池田町出身の技師長今西卓(一八八三〜一九三三年)。縦軸式の場合、都市に近い小渓谷でも建設できるため、長い送電線を敷く必要がない。浸水から発電機を守る防水壁も造らずに済み、土木費が二割減らせる。まるで滝のように見える水の落ちる水路は、川から取り込む水を一定量に調整する狙いで考案された。不要な水は再び川に戻る。今西はコスト削減を最重視した。縦軸式は長篠での成功を機に国内で急速に普及した。

 火力などの大規模発電所が盛んに建設された高度経済成長期を経て、東日本大震災後は燃料などの輸入が不要な純国産エネルギーとして水力が見直されつつある。中電も長篠発電所と同じく、ダムを造らない省コスト型の中小水力発電所を各地で建設している。「使える水は一滴残らず電気に変える」が目標。その原点ともいえる長篠発電所の発電機は部品を交換しながら今も動き続ける。今後も改修をしながら使う方針だ。

 中電愛知水力センターの土木担当、勝本英之さん(50)は「水力を最大限生かすにはコスト削減の意識と新しいアイデアが不可欠。今西卓の精神は現代でも手本になる」と語る。

 (小柳悠志、写真も)

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