名勝負の将棋盤あった 大山VS升田「名人戦」で使用 

2017/9/13 夕刊

木村定三コレクションから見つかった将棋盤と駒=名古屋・栄の愛知県美術館で

 名古屋市の実業家で美術品コレクターだった木村定三さん(一九一三〜二〇〇三年)と遺族が名古屋・栄の愛知県美術館に寄贈した収集品に、半世紀前の将棋のタイトル戦「名人戦」などに使われた盤と駒があることが分かった。愛知県瀬戸市の中学生棋士・藤井聡太四段の活躍で火がついた将棋ブームに触発され、美術館が盤を詳しく調べたことで、「名品」に光が当たった。

 将棋盤は厚さ六寸(約十八センチ)のカヤ製。東海棋界の重鎮だった故板谷四郎九段が仲介し、一九五四(昭和二十九)年に六万三千円で購入したと記録されている。大卒の国家公務員の初任給が八千七百円だったころだ。

 外箱が二つあり、第十三期名人戦第四局(五四年五月)と第四期王将戦第二局(同年十二月)、第十四期名人戦第四局(五五年五月)、第十五期名人戦第四局(五六年六月)に使われたことを示す対局者の署名がある。ひときわ目を引くのは、第十三期名人戦の大山康晴名人と升田幸三・八段(当時)だ。

 ともに昭和を代表する棋士で、大山名人はタイトルを通算八十期も獲得した巨星。升田八段も「新手(しんて)一生」の名言で知られ、常識を覆す斬新な手を次々と生み出した風雲児。終生のライバルといわれた二人は最も伝統ある名人位を九回も争っており、この将棋盤は今もファンに語り継がれる昭和の黄金カードの「証人」といえる。

 第十三期名人戦は、四勝一敗で大山名人がタイトルを防衛した。第四局は名古屋市昭和区の老舗料亭、八勝館で指され、初戦から三連敗していた升田八段が一矢報いた一番だった。

 木村さんの収集品は絵画や茶道具など約三千点。亡くなった際に大半が県美術館に寄贈され、定期的に公開されている。目録に将棋盤があるのは分かっていたが、一般的な美術品や工芸品に属さないため、これまで見過ごされてきた。

 盤には、将棋を愛した木村さんに贈られた「アマチュア四段」の免状も添えられていた。また、明治生まれの著名な駒師・二代目豊島龍山の作とみられるツゲ製の駒やクワ製の駒台もあることが分かった。

 生前の木村さんを知る県美術館の拝戸雅彦・企画業務課長は「会うといつも緊張した。確かな見識を持つ文化のパトロンという印象だった」としのぶ。

 将棋盤を調べた副田一穂学芸員は「美術館は作品を“冷凍保存”して後世に残すが、木村さんは名品を使ってお茶会を開くなど、文化を生かしながら伝えてきた。実際の棋戦で使われたこの盤や駒にも、そんな信条が感じられる」と話している。

 木村さんの収集品も出展する「長沢芦雪(ろせつ)展」(十月六日〜十一月十九日、中日新聞社など主催)と同時期に開催される木村コレクション展で、盤と駒を公開する予定。

 (岡村淳司、写真も)

◆名古屋随一の収集家が寄贈

 <木村定三氏> 名古屋市で米や肥料を扱う会社を営み、大地主でもあった木村定治郎の三男として生まれた。東京帝国大を卒業後、相続した土地の管理などに従事。名古屋有数の資産家で、その財のほとんどを美術に投じた。美術品の収集家として知られる一方で、岐阜県出身の洋画家熊谷守一らを熱心に支援したパトロンでもあった。

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