米レーダーの町、選挙でなく国会議論を 青森・つがる市ルポ 

2017/10/13 夕刊

稲わらをすく80歳の男性。「Xバンドレーダーは用心棒みたいなもの。最初に攻撃食うわな」と話した=青森県つがる市の車力地区で(辻渕智之撮影)

 衆院選は二十二日の投開票まで残り十日を切った。安倍晋三首相が衆院解散の大義に挙げた「国難」の一つ、北朝鮮情勢。発射されたミサイルが二度にわたって近くの上空を飛んだ東北の地では、住民が万が一への不安を抱えて暮らす。有権者には、選挙ではなく国会で対応を議論してほしかったと望む声がある。国難を招いたのは「安倍さんだ」と話す自民党の支持者もいる。

 赤トンボが舞い、黄金色の稲穂がこうべを垂れる。遠くには初冠雪した「津軽富士」の岩木山(いわきさん)。秋ののどかさを、農家工藤(たかし)さん(72)の言葉が破る。

 「この田んぼの中でさ、Jアラート鳴っても、どこさ逃げるべ。ミサイル届くのに五、六分だっきゃ」

 青森県つがる市車力(しゃりき)地区。日本海に面したこの地区に、北朝鮮の弾道ミサイルを探知する米軍の「Xバンドレーダー」がある。今年の八月と九月、ミサイルは津軽海峡に近い北海道の上空を通過した。

 工藤さんは地元の町内会長。ミサイルへの不安から避難訓練の実施を市に要望した。九月一日に実施されたが、「まだまだ不安だな」。田畑や山林の間に民家が点在し、避難できるような頑丈な建物が少ないためだという。

 訓練には小中学生も参加した。学校帰りの小学五、六年の四人組に聞くと、「九月(十五日の発射時)は布団をかぶれた。訓練で、窓ガラスが割れても大丈夫だと教えてもらったから」と胸を張った。

 レーダーが航空自衛隊車力分屯基地内に設置されたのは二〇〇六年。国は翌年度から見返りとなる米軍再編交付金を市に出した。総額は昨年度までの十年間で三十二億円。中学生以下の医療費無料化など五十九の事業に使われた。

 設置当時は反対する住民もいたが、今、撤去を求める声は聞こえない。近くの畑でゴボウを作る農家の羽場晃(はばあきら)さん(65)は「初めは原発と同じ迷惑施設と思った。でも、レーダー自体に害はないから」と話す。

 一方で、かつて反対運動をした地元の松橋勝利(しょうり)市議(79)は、再編交付金の昨年度での終了を問題視する。市議会で「レーダーは今もある。代わりの補助金を求めるべきだ」と訴えた。

 収穫の季節に重なった今回の衆院選。安倍首相は北朝鮮の脅威を強調し、「国難突破解散」と名付けた。町内会長の工藤さんはずっと自民党の支持者だが、苦り切って言う。「国難? 悪くしたのは安倍さんだっきゃ。米国と北朝鮮のけんかに口出ししすぎれば、逆にやられるべ」

 農家の工藤みちよさん(68)も「ミサイルが落ちても、コンクリートの水路に隠れるぐらいしかできない。国民に身を守れという前に、選挙よりも国会で北朝鮮への対応を論議してほしかった」と嘆く。

 地元は区割り変更で青森4区から3区になった。七月に現職が急死し、弟が同じ自民から出馬した。最近、羽場さんは候補の演説を聞きに行ったが、ミサイル関連の話は出なかったという。「今回は弔い合戦。ミサイルうんぬんは地元で争点にならない。おれら農家だから、来年からの減反廃止の方がよっぽど心配だ」

 (辻渕智之)

 <Xバンドレーダー> 国内に2基あり、2006年に青森県つがる市車力地区、14年に京都府京丹後市の経ケ岬に設置。米軍の移動式早期警戒レーダーで日本海一帯、主に北朝鮮からの弾道ミサイル発射を探知、追尾する。使用する周波数帯「Xバンド」から名付けられた。

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