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挫折乗り越え勝負師に 高木美帆 

2018/2/13 朝刊

 挫折を経て勝負師に生まれ変わった高木美帆(23)が、女子1500メートルで銀メダルをつかんだ。スケート大国オランダのコーチから学び、アジアの選手が長く苦手としてきた中長距離で悲願の表彰台に立った。

 「自分の中で最高順位を取れたのは誇りに思えること」。ゴール後、両腕を掲げると、目に涙をにじませ、ヨハン・デビット・ヘッドコーチの胸に頭をうずめた。

 十五歳で二〇一〇年のバンクーバー五輪に出場した「スーパー中学生」は、その後、くすぶり続けた。重心を左右の足に移動させながら氷に力を伝える感覚は天下一品。一方で、北海道の帯広南商高時代に指導した東出俊一さん(61)は「レースに勝つことより、こつこつ練習して自分の課題をクリアしていくことに価値を見いだすタイプだった」と振り返る。

 職人肌の気質が、勝負の世界で勝ちきれない要因ともなっていた。周囲の成長に気づかず、「このままで大丈夫」と臨んだ前回ソチ五輪シーズンは、選考会で沈んだ。「五輪にすべてを懸ける勇気と覚悟がなかった」と振り返る。

 眠った才能を呼び起こしたのは、一五年に就任したナショナルチームのデビット・コーチだった。科学的な数字データを指標に、レースで疲れが出ると上体がぶれる悪癖を指摘。全体練習とは別に週四回の体幹トレーニングを課した。

 精神面でも影響を受けた。一六年の国際大会。高木が世界的スターのイレイン・ブスト(オランダ)のレースをあこがれのまなざしで見ている高木に「同じ人間なのに、なぜ自分もできると思わない」と問い掛けた。高木は「本当に不思議そうな顔で聞いてきたので、すごく心に残った」。

 自分の滑りだけを追い求めていた少女は、勝利に少しずつ貪欲になった。かつては手の届かない存在だったブストに0秒20差及ばず、銀メダル。それでもソチでは表彰台を独占したオランダの一角を崩し、誇らしげに日の丸を振った。

 (江陵・原田遼)

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