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「この子に罪はない。なぜこんな目に」 

2018/5/16 朝刊

15日、パレスチナ自治区ガザ市で、イスラエル治安部隊の催涙弾で犠牲となった乳児の遺体を抱きかかえる母親=AFP・時事

 犠牲者の一人は生後八カ月の女の子、ライラちゃんだった。在イスラエル大使館をエルサレムに移転した米国に抗議する大規模デモ。それを抑え込もうとするイスラエル軍の応酬が幼子の命を奪い、ガザ市は悲しみと怒りに包まれた。

 ガザ市内の病院の遺体安置所。パレスチナの旗に包まれた小さな体が遺族に手渡されると、家族が泣き叫んで抱き締めた。「この子に罪はない。なんでこんな目に遭うのか」。母マリアンさん(18)が悲しみに暮れた。長男が生後一カ月で亡くなり、ようやく誕生したのがライラちゃんだった。

 親族によると、ライラちゃんをデモが実施されたイスラエル境界に連れて行ったのは、面倒を見ていたマリアンさんの弟(13)。「何が起きるか見たかっただけなんだ」

 デモには四万人が参加。参加者によるとイスラエル軍は十四日、最前線から七百メートル離れ女性や子どもが見ていた場所にも催涙弾を撃ち込んだ。親族がライラちゃんを見つけて連れ帰ると、穏やかに寝ていると思った顔が青白くなっていた。病院で催涙弾の煙を吸った窒息死と告げられた。

 ガザでは東京二十三区の六割に当たる面積に、約二百万人が住む。二〇〇七年にイスラエルとの武力闘争を繰り返すイスラム主義組織ハマスが実効支配すると、イスラエルは高い壁やフェンスで囲み、封鎖した。移動の自由はほとんどなく、電気が使用できるのは一日四時間。パレスチナ人権センターによると、失業率は七割を超え、劣悪な環境は世界最悪レベルだ。

 三月末からパレスチナ難民の帰還を求めるデモが続き、イスラエル軍との衝突で犠牲者は百人を超えた。多くが銃撃で死亡した。同センターのラジ・スラーニ代表は「狙撃手は明らかに顔や上半身を狙った。イスラエルは十一年間も私たちの生きる尊厳を傷付け、平和的なデモさえも許さない」と非難する。

 ムハンマド・ウバシさん(19)は安置所で、一緒にデモに参加した兄ヤザンさん(20)の遺体を待っていた。目のあたりを撃ち抜かれ、即死だった。「兄の血は、ガザとエルサレムのために流された。葬儀を終えたら、またデモに行く」。十五日もイスラエル境界ではデモが続いている。

 (ガザ市で、奥田哲平)

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