【地名の由来35】南海トラフ津波-低地地名からのメッセージ 2013/5/2

「地上で日本一低い駅」として知られる弥富駅

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津波襲来という観点でいうと、名古屋よりもその隣に幌がる低地がいちばん危険です。『津波に隠された「南海津波」』(講談社プラスアルファ新書)の口絵にかなりショッキングな標高地図を載せてありますので、是非ご覧ください。

それによると、庄内川の西側から木曽川・長良川・揖斐川に至る広大なエリアは、そのほとんどが海抜ゼロメートル地帯になっています。かつて『弥富町誌』の序文を読んでびっくりしたことが頭をよぎります。そこには「原始・古代」の章がなく、こう書いてありました。

「中世末表面化した住民の歩みも、これを実証する資料に恵まれていない。近世に至ってようやく村づくりは活発になるが、そのころでも、南部地区の多くはまだ海面であった」

つまり、江戸時代までは多くが海の下にあったということです。この広大なエリアは昔「海部郡(あまぐん)」と呼ばれていたところで、海士部(あまべ)が住んでいた地域です。市町村名でいうと、「蟹江町」「飛島町」「弥富市」「津島市」、そして三重県に入ると輪中地帯で知られる「桑名市長島町」などがあります。

特に蟹江町、旧長島町は町の全域が海抜ゼロメートル地帯で占められています。蟹江町は人口3万6000を超える町ですが、全域が海抜ゼロメートルで、その上、町の4分の1が河川で占められているのです。

しかし、低地だからと言って住むのにふさわしくないということではありません。飛島村は単に「島が飛び飛びにある」状態から命名されたものですが、いまだに近隣の市と合併していません。

それは村の財政状態が良好で、「財力指数」で全国トップにあるということです。臨海工業地帯の多くの企業・工場からの税収入が村を潤わせているからです。

しかし、伊勢湾台風時には全村水没した経験を持ち、その経験から東日本大震災の被災地にも多くの支援活動を行ってきたそうです。

弥富市もその多くが海抜ゼロメートルです。有名なのは、JR関西本線と名鉄尾西線の接続駅として知られる「弥富駅」が、海抜マイナス0.93メートルの位置にあるということです。地下鉄を除く地上駅としては「日本一低い駅」ということになります。
 
「弥富」という地名の由来としては「末永く繁栄するように」と願ってつけられたとする瑞祥(ずいしょう)地名説と、「ヤト」などの低湿地帯を示す地形説とがありますが、その二つを重ねたものと言っていいでしょう。

弥富の産業としては幕末に始まった金魚の養殖と文鳥の飼育ですが、いつまでも続けられるよう願ってやみません。

※お詫び:5/10に下記修正をいたしました。
【誤】「弥富」という地名は明治11年(1878)、八事村と中根村、名古屋新田の一部が合併した時つけられた地名です。由来としては「末永く繁栄するように」と願ってつけられたとする瑞祥(ずいしょう)地名説と、「ヤト」などの低湿地帯を示す地形説とがありますが、その二つを重ねたものと言っていいでしょう。
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【改】「弥富」という地名の由来としては「末永く繁栄するように」と願ってつけられたとする瑞祥(ずいしょう)地名説と、「ヤト」などの低湿地帯を示す地形説とがありますが、その二つを重ねたものと言っていいでしょう。

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プロフィール

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ノンフィクション作家

1945年長野県松本市生まれ。東京教育大学(現筑波大学)、同大学院博士課程修了。筑波大学教授、理事・副学長を務めるも、退職と同時にノンフィクション作家に転身。

柳田国男研究をベースに、学問の狭い枠を超えた自由な発想で地名論を展開。最近出した『名古屋 地名の由来を歩く』(ベスト新書)、『地名に隠された「東京津波」』(講談社+α新書)はそれぞれご当地でベストセラーに。新著『名古屋「駅名」の謎』が好評発売中。

その他、「地名を歩く」シリーズでは「京都」「東京・江戸」「奈良」編、「駅名の謎」シリーズでは「大阪」「京都奈良」「東京」がある。テレビ・ラジオなどでも活躍。博士(教育学)。

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