<第1話> 大相撲は他のスポーツと何が違う? 2013/5/7

江戸時代の勧進大相撲興行の図。一陽斎豊国画

テレビの大相撲放送が始まって60年になりますが、相撲の現場に一度でも足を運んだ人はみなさん、驚きます。それはなにかと言うと、他のスポーツにはない独自性があるからです。ひとつには、短時間で勝負がつく、そして勝敗が誰にでもわかりやすいということがあるでしょう。

しかし、それ以上に大きな違いとして挙げられるのが、「日本の伝承文化の一つ」だということです。

観戦に訪れた時、ぱっと目につくのは土俵。その上には伊勢神宮と同じ、神明造の吊り屋根があり、周りには4色の房が下がっています。このなんとも言えずバランスのとれた大相撲の舞台を目の当たりにした時、日本人なら誰しもが日本の文化を感じ取るでしょう。

相撲という文化は、文献的にはその歴史をおよそ1400年前までさかのぼることができます。日本書紀には、皇極天皇が百済からの賓客をもてなすために相撲をとらせた、という記述があります。奈良時代には聖武天皇が勅令を発して、伊勢神宮をはじめとした全国21のお社で、相撲をとらせました。これは、豊作にめぐまれた感謝の祈りを込めた催しで、まさに祈りの文化。

相撲は神の祀り事と深いかかわりを持っていて、それがずっと受け継がれているのです。

平安時代にはさらに相撲への関心が高まり、天皇の前で何度も相撲が催されたりしました。その後も、鎌倉時代には源頼朝、安土・桃山時代には織田信長といった時の権力者たちが相撲を好んでとらせたという逸話も残っています。

江戸時代の中期以降は、各大名がお抱え力士を持ったり、神社仏閣を建立する浄財を集めるための勧進相撲が盛んに行われるようになりました。やがて、明治維新を迎え、武士がちょんまげを切らされますね。でも、明治政府によってお相撲だけは残された。これは日本の伝承文化ですから、力士はそのままでいいということになったわけです。

相撲の番付ひとつとっても、それぞれに意味や歴史があります。関取の「関」は、容易に越えることができない関所に通じていて、これを突破した力士、関所を守る強いものへの尊称として生まれました。

大関は関取に、“大”の冠、尊称を付けたもの。関脇は大関の「脇」、つまり次の位です。番付が初めて世に出た元禄の末頃、1700年代には板番付に関脇という文字が明記されているとあります。

このように今日までずっと受け継がれてきた日本の文化、相撲は“守るべき宝”と言ってもいいでしょう。勝敗を競う単なるスポーツとはまったく違ったものなのです。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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