ブルーライトが目に与える影響 〜目のエイジングを加速〜 2013/7/2

光の色とエネルギー ブルーライトは高エネルギー可視光線

ブルーライトはエネルギーや刺激性が高い
はじめは目に対する影響です。ブルーライトの特徴は、第一に他の色の光と比べてエネルギーが高いということが挙げられます。光は波の性質を持っているため、その波がゆったりとした揺れ幅の大きい(波長が長い)波であれば、そのエネルギーは低くなります。

しかし、ブルーライトは揺れ幅が小さく細かい(波長が短い)波の性質を持つために、非常にエネルギーが高く、刺激性の強い光なのです。図からも分かると思いますが、紫外線に次いで刺激性の高い光が、このブルーライトなのです。

次に、ブルーライトがどのように目に影響をするのか見てみましょう。

ブルーライトは網膜・黄斑部に届きダメージを与える

ブルーライトが目に与える影響
次に、ブルーライトがどのように目に影響をするのか見てみましょう。ブルーライトは、私たちが目で認識できる色の光ですから、当然目の奥にある網膜(もうまく)まで届きます。

ここで、同じように高いエネルギーをもち刺激性の強い紫外線の場合ですが、オゾン層を透過した一部の紫外線(UV-A)が網膜にまで達します。しかし、その大半が目の表面にある角膜や水晶体で吸収されますので、奥の網膜にまでは届きません。

つまり、可視光線であり、なおかつエネルギーの高いブルーライトこそが網膜の健康を害する原因と考えられています。

ブルーライトが網膜に照射されると、網膜上では活性酸素(かっせいさんそ)が発生します。この活性酸素は私たちの体の老化(エイジング)を加速させる原因となります。

網膜で発生した活性酸素がダメージをひき起こし、それが原因で網膜や黄斑部(おうはんぶ:網膜上に存在する器官。視野には欠かせない部分)の細胞が弱って死んでしまうと、加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)という失明疾患の発症を早めてしまいます。

ブルーライトを多く含むLEDライト、そして太陽の光には日々注意を払うことが目の健康維持にはとても重要なのです。

ブルーライトが眼精疲労(がんせいひろう)や睡眠障害をひき起こす

ブルーライトが体に与えるその他の影響 〜眼精疲労〜
ブルーライトが私たちの体に与える影響は、何も目に限ったことではありません。医学的には“目は脳の一部”と言われているように、目から入ったブルーライトの信号は、私たちの脳や体にまで影響を及ぼします。

パソコンやテレビの液晶モニターを長時間眺めつづけると、よく「目の疲れ」を感じる方は多いと思います。この目の疲れの原因も、ブルーライトにあると言われています。ブルーライトは光の中でも波(波長)が細かいために、空気中のほこりや水分にぶつかって散乱しやすい光なのです。

そのため、パソコンやテレビから出るブルーライト(画面の中の青色の光)も若干ながらぶれて見えているそうです。すると私たちの目や脳は、そのぶれを修正しようと一生懸命にはたらきます。

結果、長期間はたらき続けた目や脳が疲弊し、俗に言う“眼精疲労(がんせいひろう)”や“目の疲れ”といった症状が現れると言われています。

ブルーライトが影響する慨日(がいにち)リズム

ブルーライトが体に与える影響 〜慨日(がいにち)リズムの変調・睡眠障害〜
また、私たちの体には体内時計が備わっており、1日の活動や睡眠の時間を決める慨日(がいにち)リズムがはたらいています。慨日リズムは”サーカディアンリズム”とも呼ばれており、睡眠や自律神経、ホルモンバランスの調整などに深く関わっています。

近年、目の研究分野において、ブルーライトは他の光とは異なる信号を目から脳に伝えていくことが分かってきました。すなわち、私たちの網膜にあるブルーライト特有の光の受容体が、太陽光、室内照明等、パソコンやスマートフォンから発せられるブルーライトを認識すると、脳に信号となって伝わり、眠気をひき起こす原因物質である「メラトニン」の分泌を低下させます。

すると、体内時計がリセットされ、脳は活発に動くようになり、体は1日の始まりを感じて活動に向けた準備をはじめます。夜は通常であれば光を目に浴びる量が少なくなるので、脳内のメラトニン量が増えていき、私たちは自然と今度は睡眠状態へと移っていきます。

ところが、夜遅くまで照明に照らされたり、テレビやパソコン作業を続けていたり、もしくは布団に入ってもなおスマートフォンを眺めていると、体は睡眠どころか覚醒に向かってしまいます。

結果として慨日リズムが狂ってしまうため、翌朝の寝起きは悪く変な時間に眠気が惹き起こされ、不眠症の原因にも繋がってしまいます。さらに恐いことには、体内時計が狂うことで自律神経の失調やホルモンバランスの変調など、その他の病気にまで発展する影響が現れることです。

最近の調査では、深夜勤務を行う女性では乳がん発症率が高まる、といった報告もあります。従って、夜間は照明の量を落とす、あるいはブルーライトの少ない暖色系(橙や赤)の光に切り替えるなど、体の自然なリズムを守るような工夫が必要です。

次回は、ブルーライトから目を守る具体的な方法についてお話しします。

原 英彰(はら ひであき) 薬学博士。薬剤師。

大学卒業後、製薬企業の医薬品研究所で抗片頭痛薬、脳卒中治療薬、抗緑内障薬などの新薬の研究開発に従事してきました。また、東北大学医学部神経内科、ハーバード大学医学部に留学して、研鑽を積んできました。専門は幅広く、脳や眼の病気の解明とその治療薬の研究、健康食品の研究などです。

現在は、岐阜薬科大学の薬効解析学研究室で教授として学生の教育と脳と眼の研究に力を入れています。研究室には30名余りの学生や研究者と一緒にお互いに刺激しあっています。

本ブログでは、脳を元気にするにはどうすればよいか?眼の健康を保つ秘訣は?そして、活き活きと生きるには、何を心掛ければよいか?などについてお伝えできればと思います。

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