岡崎市内に、先駆的“BRT”バス路線が現存! 2013/9/19

東日本大震災により不通となっているJR東日本の鉄道線のうち、気仙沼線と大船渡線の一部では、BRTと呼ばれる、バスを使った運転再開が行われています。被害がなかったり軽微だった線路を舗装してバス専用道とし、被害の大きかったところは一般道を迂回するものです。

BRTとは Bus Rapid Transit の略で、「バス高速輸送システム」と和訳されます。一般的に、BRTは都市部の路線バスが渋滞に巻き込まれることを避ける目的で計画されます。名古屋市では早くから基幹バスが走り、名古屋ガイドウェイバスも走っていますが、これらはBRTの一種と考えられています。

それと比べると、気仙沼線や大船渡線で行われているBRTはローカル輸送ですので、世界的に見ると特殊なBRTといえましょう。ところが、同じく線路跡を利用したBRTの大先輩が、愛知県に現存します。

岡崎市内のバス専用道を走る名鉄バス

そのBRTはJR岡崎駅前から福岡町までの2.5kmで、かつて岡崎市内にあった名鉄岡崎市内線という路面電車の福岡線廃線跡を利用しています。途中に柱町・東若松・西若松という3つのバス停がありますが、すべて福岡線時代にあった電停です。廃線になったのは1962(昭和37)年のことですから、バス専用道化してからすでに52年が経っています。

ところで、この福岡線は戦時中に休止となりレールが撤去された路線で、復活したのは1951(昭和26)年のことでした。つまり、沿線の方にとっては、戦時中の不便を解消することができたと思ったら、わずか10年で廃線の話が出てきたわけです。復活に際しては地元も工事費を負担しているため、さすがにすぐに承諾するはずもありません。

結果として、廃線跡をバス専用道とすることで利便性を確保するという条件で折り合ったのでした。つまり、JR東日本より半世紀以上も前に、線路敷をBRT化しているのです。それも、今でも10〜20分に1本の運転本数を確保しています。

廃線跡らしく、道路と立体交差をしている

バス専用道のうち岡崎駅前〜柱町間は、駅前再開発などで福岡線時代とは異なる場所を走る部分もありますが、基本的にいまも廃線跡を利用しています。そのため、途中でJR東海道本線と県道がバス専用道をオーバークロスしています。特に県道は、このバス専用道のためだけに築堤を設けているところなど、費用をかけていることが判ります。

いかにも廃線跡といった風情のバス専用道は、緩やかなカーブがあり、急な坂がない道です。道幅はバス一台が通れるだけのもので、単線の廃線跡らしく、とてもセンターラインを敷けるような広さではありません。そのため、ところどころに広い場所があり、バス同士がすれ違えるようになっています。

上の写真をみると、バスの行き先表示は、東岡崎・康生町経由の大樹寺行となっています。東岡崎は名鉄本線の駅です。康生町は徳川家康が産まれた地として名づけられたという町名です。大樹寺は徳川家(松平家)の菩提寺であるとともに、家康が桶狭間の戦いのあと逃げ帰ったお寺としても知られています。

つまり、岡崎の街の中心をほぼ真っ直ぐ南北に縦断するバス路線です。もともと、岡崎市内線がこのルートを通っていて、大樹寺で接続する名鉄挙母線に乗り換えると、いまは豊田となっている挙母にアクセスできたのでした。いまは挙母線も廃止となり豊田までの直通バスはありませんが、廃線跡にほぼ並行して愛知環状鉄道ができています。

福岡町近くは、いかにも廃線跡といった風情

終点となる福岡町にちかいあたりは少し開けていて、いかにも鉄道線の廃線跡のようになります。それもそのはず、もともとは西尾鉄道が西尾〜岡崎新(いまの岡崎駅前)を結んだ鉄道線だったのです。開業は1913(大正2)年10月30日でしたので、いまからちょうど100年前のことでした。当時は軌間762mmの蒸気機関車が牽引する軽便鉄道でした。

その後、名鉄や国鉄と同じ1067mm軌間に改軌するとともに電化もしています。その際に、福岡町の駅(当時は土呂駅)を移転して、いまの福岡町バス停の場所に駅ができました。

上の写真の左側…つまりバス後方が福岡町バス停です。広かった構内を活かしてロータリーとすることで、バスの転回作業を不要としています。また、そのバス停の先には、明らかに廃線跡と判る敷地があり、「ここは、私有地です。」という名鉄バスの看板が建てられています。

JRあいち三河福岡支店駐車場にある「軽便鉄道土呂駅跡」の標柱

福岡町のバス停前を横切る道を左手(東方)に歩くと、すぐにJRあいち三河福岡支店があります。何気なく通り過ぎそうになりますが、その駐車場に注意して下さい。一角に白い標柱が建っていて、そこには「軽便鉄道土呂駅跡」と記してあるのです。前述した、改軌と電化をする以前の土呂駅(後の福岡町駅)が、ここにあったことを示すものです。

同標柱の道路に面した側が上の写真ですが、「大正二年の土呂駅の旅客数は、二万人を越え」と記されていることがわかります。大正二年は前述のとおり開業した年ですので、初年度の利用実績なのでしょう。

バスでわずか10分弱、運賃180円(執筆時点)の小旅行ですが、見どころ満載の旧福岡線跡BRTです。岡崎に行く機会があれば、ちょっと寄り道をしてみることをお勧めします。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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