かぜの季節です 2013/12/3

葛根湯に配合される7つの生薬

ショウガの話を覚えていますか?(5/27)台所の薬草として取り上げさせていただきましたが、夏の時期に薬味として活用して頂けたでしょうか。

さて、朝晩が冷え込む季節になり、またショウガの活躍する時期がやってきました。生姜をスライスして天日乾燥して、砕いて粉にして寒い冬に備えましょう。

喉が痛くて、熱が出て、咳が出て・・・・、西洋医学的には「かぜ」という病名はなく、鼻や喉などに病原微生物が感染しておこる病気で、原因の種類に関係なく、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・咳と痰があって、発熱・頭痛・全身倦怠感・食欲不振などの全身症状がともなう状態を一括して、かぜ症候群と呼んでいます。

対症療法として発熱があれば解熱薬、咳がひどい場合は鎮咳去痰薬、鼻水がひどい場合は抗ヒスタミン薬、頭痛や関節の痛みを緩和するために鎮痛剤などが処方されます。

では、東洋医学ではどうかというと、『かぜに葛根湯』というフレーズが思い浮かぶ人も多いと思いますが、こちらも「かぜ」とよばれる証(病名にあたるもの)はありません。

原因は外部から身体を傷つける邪(風邪:ふうじゃ)が身体の中に入ろうとしている状況と表現されます。漢方処方の原典の一つである傷寒論には、『太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之』【邪が身体の表面あたりにいる状況(太陽病)で、うなじと背中(項背)が強ばって、汗はなく、風に当たると寒気がする(悪風)症状の人は葛根湯がよい】と書かれています。

東洋医学では、身体を温め、汗を出させて、自然治癒の力を上げて、邪を身体の表面から追い出すことを治療目標にしています。最近の西洋医学も解熱剤の多用は避けて発汗を促す治療が行われるようになってきました。

さて、葛根湯には、カッコン・マオウ・ケイシ・シャクヤク・カンゾウ・タイソウ・ショウキョウの7つの生薬(写真左上から右下の順)が含まれています。

カッコン(葛根)は野山に雑草のように生えているクズの根。マオウ(麻黄)は日本に自生のない植物ですが気管支拡張剤の原料として輸入されています。ケイシ(桂枝)はシナモンとも呼ばれお菓子の材料などに使われているものの仲間です。シャクヤク(芍薬)は春に花を観賞する芍薬の根で、カンゾウ(甘草)は甘味料などにも使われる砂漠に自生するマメ科の植物です。タイソウ(大棗)はナツメの果実で、ショウキョウ(生姜)はショウガを乾燥したものです。

マオウとカンゾウは手近にはありませんが、それ以外は皆さんの近くにもあるのではないでしょうか?

かぜは、背中から襲ってきます。首回りを暖かくして予防をしましょう。それでも寒気がしたり、肩が凝ったら、水溶き片栗粉にすり下ろした生姜(乾燥させた生姜の粉があればより効果的)、砂糖(好みで黒糖または蜂蜜)を加えて、熱いお湯を注いで、いわゆる生姜湯(葛根湯もどき)のできあがり。

冷めないために片栗粉を入れるのがポイント。シナモンやユズを加えてもいいですね。かぜは初期対応が肝心です。

執筆者 酒井英二(さかいえいじ) 薬学博士、薬剤師

岐阜薬科大学、同大学院を修了し、厚生省国立衛生試験所筑波薬用植物栽培試験場に入所。中間山地における薬草栽培や植物工場を利用した栽培試験を行う一方、生薬の品質に関する研究を行ってきた。

現在、岐阜薬科大学薬草園研究室准教授。健康食品に配合される植物の鑑別や、生薬の鑑別研究を行う一方、薬草園の見学を通して正しい薬草の知識の普及に努めている。

また、薬用植物栽培と品質評価Part12(薬事日報社)、台所の薬草ガイドブック((社)日本植物園協会第4部会)、フィールドベスト図鑑No.16 日本の有毒植物(学研教育出版)などの執筆も分担している.

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