アイソン彗星はなぜ大彗星にならなかったのか? 2013/12/12

11月23日のアイソン彗星 肉眼で何とか見える明るさに!

■11月から崩壊の兆しがあった
アイソン彗星の崩壊は、テレビや新聞等の報道では、「予想外のできごと」という見解が発表されていたが、実は11月中旬から、崩壊の兆しが見え隠れしていた。

11月12日の時点で、予想等級より3等暗い8等星だった。その後20日にかけてじわじわ増光して3等級となり、肉眼彗星の可能性が見え隠れしてきた。実際11月23日には、水星の隣で光るアイソン彗星を肉眼でかろうじて見えるまでになった。

そして翌24日、異変が起こった。さらに太陽に近づき、明るくなっているはずのアイソン彗星が見えないのだ。低空のため透明度が悪いものの、減光したとしか考えられない。

後で太陽観測衛星STEREOの画像を見たところ、明らかに減光していることがわかった。この時点で、私はアイソン彗星の核は、さらに分裂しすでに限界がきていたのではないか?と直感した。

11月24日のアイソン彗星 肉眼どころか双眼鏡でも見えない(丸印)!

■近日点通過そしてフェードアウト
11月29日午前4時の近日点通過に向けて、アイソン彗星は太陽に向けて猛スピードで突進していった。太陽観測衛星SOHOの画像では、太陽に近づくにつれ明るさを増し、強力なコロナ爆発のあおりを受けた時は、一気に-2等級になったが、これが致命的だったのだろう。

その後急速に減光しながら、SOHOのラスコC3カメラの太陽を覆うマスクの中に消えていった。その直後にNASAは、「アイソン彗星は崩壊消滅した」と発表した。

ところがその絶望を打ち消すかのように、アイソン彗星はマスクの左上から、ゴーストのようになりながらも姿を現し、見る見るうちに明るさを取り戻していくかのように見えたのだ。

しかし何度も生死の境をさまよいながら不死鳥のように蘇ってきたアイソン彗星も力尽きたか、ついに宇宙の闇に霧散していった。

近日点通過目と通過後のアイソン彗星 太陽観測衛星SOHOの画像(C)NASA

■なぜ大彗星にならなかったのか? 
1年余にわたり、大彗星になると期待されたアイソン彗星。なぜこんな結末を迎えたのか。それは2012年9月21日の発見時の光度が異様に明るかったことから、核が巨大であると判断されたこと、それが太陽に117万kmまで接近するという事実からだった。

しかしこれは真実ではなかった。発見されたときアイソン彗星は、一時的にバーストして明るくなっていただけだった。つまりそんなに巨大な彗星ではなかったのだ。核直径は、数十kmから4.8kmに、最終的には500m程度まで下方修正されている。

また、オールトの雲から初めて飛来する彗星は、核が泥でしっかりコーティングされていて、なかなか溶けださないという特徴もある。つまりオールトの雲からやって来る初物彗星は、明るくなる確率が低いと言える。

さらに核が小さい彗星が、117万kmという至近距離に接近すれば、崩壊消滅する可能性が高いのだ。アイソン彗星の光度変化は、歴代の彗星のそれといささか異なっていて、増光減光を何度も繰り返しながら、消滅寸前の生死の境をさまよっていたこともわかった。つまり最初から大彗星になる可能性はかなり低かったというわけなのだ。

いずれにしても、彗星の見え方の変化を正確に予想することは、相当難しいということを改めて感じさせられた出来事だった。今後、アイソン彗星の異常なふるまいが科学的に解明され、さらに彗星の本質に迫ることができるだろう。

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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