二つのモカコーヒー 2013/12/16

1692年当時のイエメン・モカ港。かつてコーヒーの輸出港として繁栄した。

前回は、モカ・コーヒーが私たちが知っているコーヒーの原点(ルーツ)で、いかに貴重なコーヒーかをご説明させていただきました。

実は、「モカ」という冠がつくコーヒーには、「モカ・マタリ」を代表とするイエメン産と、「モカ・ハラール」「イリガチェフェ・モカ」などを代表とするエチオピア産、二つの「モカ・コーヒー」があるのです。

この両国は、紅海をはさんだ対岸の国で、「モカ」はイエメン共和国の紅海に面した西海岸の港町の名前です。

1454年頃、イエメン国アデンのイスラム教の宗教学者・ザブハニーが、コーヒーの飲用を初めて一般の人に公開しました。そうしてコーヒーの飲用は、メッカを中心にイスラム教世界に瞬く間に広がったのです。

やがてオスマン・トルコ帝国中に広まり、その後、エジプトのカイロ、アレキサンドリアを介し、イタリアのヴェネッチアなどキリスト教世界(ヨーロッパ)にも広まり、瞬く間にヨーロッパの人々に受け入れられました。

モカの港の税関跡。ここから世界にコーヒーが輸出された(今は浸食され無くなってしまい、とても貴重な写真)

17世紀には、オランダをはじめとしてイギリス、フランスがイエメン産コーヒー豆の輸出をスタートさせ、モカ・コーヒー盛況時代を迎えました。

当時のヨーロッパでは、コーヒーのことを「モッカ」と呼んでいたくらい「イエメン・モカ・コーヒー」はヨーロッパ人の生活に急速に浸透していったのです。

需要が増えると、イエメンにおけるコーヒーの生産量では、とてもEUの列国を満足させるだけの収穫量はなく、それを補うために、すぐ海を隔てたエチオピアのコーヒーをイエメンに運び、モカの港からヨーロッパに輸出したのです。

当然、エチオピア産のコーヒー豆もモカ港から輸出されたので、「モカ」として取り引きされました。

そうです!
「モカ」という名は産地の名前ではなく、輸出港の名前なのです。

こうして、「モカ」の冠を付けたコーヒーはイエメン産と、エチオピア産の「二つのモカ・コーヒー」となったのです。

一説には、上級品(イエメン産?)を「トルコ豆」、下級品(エチオピア産?)を「インド豆」と呼んで取引していたとも言われています。

コーヒー栽培の伝播

17世紀の後半になると、オランダは植民地であるジャワ島にイエメン産モカ・コーヒーを植樹して、モノカルチャー(特定商品)として、コーヒーを世界的な商品としました。

その後、アムステルダムの植物園、パリの植物園に苗木が運ばれ、1723年、フランスがマルチニーク島にコーヒーを運び、その後、南米ギアナに植樹され、1727年には、ポルトガル領ブラジルに植樹されました。
やがてブラジルは世界一のコーヒー生産大国となったのです。

世界各国で、コーヒー栽培が行われるようになると、高価なモカコーヒー豆はだんだん需要が減っていきます。

19世紀終わりには、取引高が激減したモカの港は廃港同然となり、世界に向けたコーヒーの輝かしい輸出港としての歴史を閉じることになりました。

現在、イエメンではインド洋に面したアデンの港と、紅海に面したホデイダの港が、エチオピアではジブチの港がコーヒー輸出港となっています。モカの港からは一切コーヒーは輸出されていません。

しかし、いまでも愛称として両国のコーヒーには「モカ」の冠がついています。そして、日本では何十年もの間、不動の人気1コーヒーなのです。

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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