達人に訊け!
サスティナブルコーヒー 2014/3/10
いつもありがとうございます。今回は「良いコーヒーが継続的にあるには?」を考えて活動している認証団体の意義や活動を紹介いたします。
【サステイナブルコーヒーとは何? 】
サステイナビリティー(sustainability = 持続可能性)に配慮したコーヒーのことを、サステイナブルコーヒー(sustainable coffee)と言います。現在のことだけではなく未来のことも考えた上で、自然環境や人々の生活を良い状態にたもつことを目指して生産/流通されたコーヒーの総称です。
【サステイナブルコーヒーの定義】
グレードのつけ方、品質、流通管理はコーヒーや食品に関わる、団体(NPOなど)が中心となり、生産国から協力を受け認証を発行して、「高品質だけではなく、自然環境への配慮、労働者の生活環境の改善もカバーしつつ地球規模で持続可能(サスティナブル)な、バランスのよい農産物を市場へ提供していく」をコンセプトに全世界に広がり始めたプログラムです。
【サスティナブルな農業の意義:コーヒーの生産と世界経済】
コーヒーの生産は、世界経済の中で大きな役割を占めている。熱帯地方の多くの農家や、コーヒーが外貨獲得のための貴重な資源となっている国々では、コーヒーの生産が主要な収入源となっている。
またコーヒーの生産は、動植物の生態系が多様な地域と一致しており、それらを絶滅させることも、保護することもできる。正しい状況を与えられれば、コーヒー生産は環境、経済の両面に利益を与えることができる。
しかしながら世界のコーヒー業界は危機に瀕している。現在の流通価格は世界中の多くの地域での生産コストより低く、この流れが短期間で変わる見通しはほとんどない。大部分が貧困状態で暮らす小農家である世界中のコーヒー農家は、彼らの僅かな収入がさらに減少するのを経験している。
いくつかの国々では広大な熱帯雨林が、質の劣ったコーヒー生産、世界的な供給過剰、多様な生態系の損失といった問題を内包しながら、コーヒー畑に転換している。慢性的な安値は、農家に良質の物の生産とその価値を守る事を、彼らの農地と自然資源を守る事を、そしてかれらの生活を維持することを困難にしている。
この状況は世界規模での社会的、環境的な災害を引き起こす可能性がある。コーヒー生産者の多くは小農家なのです。
【サスティナブルコーヒーの代表的な認証コーヒー】
かつてのコーヒー栽培は、亜熱帯の森林を守りながら木陰で栽培してきました。この栽培方法をシェードブロウン(木陰栽培)と言います。しかし近年は森林を伐採して栽培を行う様になり、渡り鳥が休息をとる森林が失われつつあります。
そこでスミソニアン渡り鳥センター(米国スミソニアン動物園内機関)が、シェードブロウンにより、野生動物保護に貢献し、鳥に生息地を与える有機栽培農園を対象に認証基準を設けました。商品の収益の一部はスミソニアン渡り鳥センターを通じて世界中の渡り鳥保護の為に還元されています。
コーヒーの木は日陰でも育つため、かつては原生林の林冠の下で、環境への影響も与えることなく育てられていました。しかし、1970年代から、森林の樹木をすべて伐採してコーヒーの木だけを植え、大量の化学肥料を用いて栽培されるようになりました。
そのために野生生物は消え、土壌が浸食されやすくなり、川は泥と化学肥料で汚染されるようになりました。森林と野生生物を守り日陰で育てる。アメリカに本部を置くNGOであるレインフォレスト・アライアンス(熱帯雨林同盟)認証の主な内容は、以下のとおりです。
• 熱帯雨林の日陰で育てること
• 野生生物を保全すること
• 化学肥料の使用を管理し、削減すること
• 労働者に適切な労働条件を与え、地域社会全体が恩恵を受けること
コーヒー農園や生産者組合は、Good Insideの認証を取得することによって、その地域社会と環境に配慮しながらプロ意識を持ってコーヒーを生産し、Good Inside認証コーヒーを購入する焙煎業者は、そのコーヒーがどこから来ているのか(トレーサビリティー)を正確に把握することが可能になります。
消費者はそのコーヒーが責任を持って生産されたということが分か、質を落とすことなく、お気に入りのブランドのコーヒーを続けて楽しむことができます。
国際フェアトレード基準では、現在の貿易体制の中で不利な立場にある途上国の小規模生産者と労働者へ、最低買入価格や奨励金の保証、長期的な安定した売買契約などを保証し、生活状況や労働条件の改善と環境保全の促進を目指すプログラムの中で生産されたもので、コーヒー以外にも、茶類、カカオ、といった農産物をはじめ、コットン製品といったもの含まれ、それらにはフェアトレード・ラベルが表示されています。流通、発展国経済に特化したプログラムです。
日本では、JAS規格(日本農林規格)に適合したものだけが「有機」「オーガニック」の表示をつけることが認められています。JAS有機栽培コーヒーは、農薬や化学肥料を種まきの時点からさかのぼり、3年以上使用していない農園で栽培されたものと定義付けています。
【総評】
サスティナブルコーヒーは持続可能な農業によって栽培されたコーヒーにあてはめられています。スペシャルティコーヒーの中でも更に持続可能な農業に配慮して生産されたコーヒーといえますが、個人的な味覚の問題とは別とお考えください。
「安全でおいしい世界の最高級コーヒー」が日本にいながらにして、それもワンコインで毎日飲める幸せをあらためて感じてください。生産者の多くは小農家で貧しいです。
しかし、それらの生産者がいて初めて私たちはおいしいコーヒーが飲めるのです!
生産者とともにある認証コーヒーを今一度考える機会としてください。
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プロフィール
日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)
1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。
その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。
また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。
産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。
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