コーヒーのおつまみも名古屋メシ? 2014/3/28

モーニングサービスと並んで、名古屋の喫茶店特有のおまけサービスとして知られるのがおつまみ。コーヒーなどのドリンクを頼むとピーナッツなどのお茶うけが無料でついてくるという、ささやかながらもうれしいサービスです。

コーヒーにおつまみのピーナッツがつくのは名古屋の喫茶店特有のサービス

このサービス、発祥に諸説あるモーニングと違ってルーツが明らかです。時は昭和36年、名古屋市港区のヨコイピーナッツが喫茶店に提案して始まりました。

当時、ピーナッツの薄皮をむく自動脱皮機が開発され、ピーナッツメーカーの生産力が10倍にアップしました。たくさんできるんだからたくさん売らなあかん!ということで、従来の取引先の菓子店に加えて、当時開店ラッシュでどんどん店が増えていた喫茶店に売り込みを図ったのです。

喫茶店にとっても、コーヒーのおまけとしてピーナッツをつければ増え続けるライバル店に少しでも差をつけられる、と願ってもない提案でした。しかも、単におトクさをアピールできるだけではなく、コーヒーとピーナッツの相性がよかったことが普及に拍車をかけました。

名古屋の喫茶店のコーヒーは苦味とコクが強いため、ピーナッツの塩気で味わいがマイルドになり、互いに相乗効果をもたらしたのです。

このおまつみピーナツ、あまりにぴったりのマッチングだったため、10年ほどで市内および周辺エリアの大半の喫茶店に行き渡りました。そのため、店にとっては結局差別化にはならず、お客を損した気分にさせてしまわないために、やらざるを得ない必須のサービスとなった、というオチまで付いています。

普及のエピソードと並んで面白いのは提供法の変化です。

現在主流の小袋入りが生まれたのにも理由が

当初はメーカーが一斗缶入りのピーナッツを喫茶店に納入し、店主がカップですくって小皿に盛っていたそうです。しかし、この方法だと図々しい常連からはお替りや大盛りをねだられることもしばしば。いわばおまけのおまけまで要求されて、店の負担はいっそう増えてしまいました。

昭和50年代になるとコーヒーのデリバリーサービスが流行します。配達の際にいちいちピーナッツの小皿をつけるのは面倒な上に場所も取るため、この欠点を解消する小袋入りピーナッツが登場しました。

一斗缶入りと比べて割高ではあったのですが、手間いらずで管理もしやすく、しかも追加をねだられることもないため、ほとんどの店で小袋入りに切り替えられることになったのです。

おつまみも郊外ほど豪華な傾向。写真は一宮の某喫茶店。「これ全部おつまみ?」と聞くと「こっち(豆菓子)はおつまみ、こっち(パン)はおまけ」とのこと。ピーナッツやあられはもはやおまけですらない?

小袋入りが普及すると、今度はおつまみのバリエーション拡大が起こります。メーカーは変化をつけるためにあられや豆菓子を混ぜたものなど様々なタイプを開発。

これでおつまみ=ピーナッツの黄金律が崩れると、

「もっと違うものを付けてもいいんじゃないか」

とビスケットやプチケーキをつける店も現れました。

こうして、おつまみひとつ取っても店それぞれの個性が現れ、お客にとってもさらにお楽しみ度がアップしたのです。

名古屋の名物喫茶「マウンテン」(昭和区)のおつまみはプチケーキとクラッカー。珍メニューで有名だがおつまみは意外やノーマル

さて、このおつまみサービス、なぜ他の地域には普及しなかったのでしょう?ヨコイピーナッツさんによると、販路拡大を狙って東京や関西にも売り込みをかけたそうですが、成果はほとんど得られなかったそうです。

東京では「うちはコーヒーの味で勝負しているから余計なものはつけなくていい」とこだわりを理由にお断りする店も少なくなかったとか。また、名古屋の苦いコーヒーに比べるとピーナッツとの相性がよくなかった、それが当たり前になると経費がかさむだけ、ということなどが他地域で受け入れられなかった理由と考えられます。

名古屋人の嗜好にマッチし、名古屋でのみ親しまれている。喫茶店のおつまみも立派な名古屋メシのひとつと言えるでしょう。

おつまみひとつでも話題は盛りだくさん。1回では語り尽くせないので、もう少し引っ張ります。次回は店ごとの魅力的なおつまみのバリエーションについて調べていきます。

□名古屋の喫茶店については拙著『名古屋の喫茶店』『続・名古屋の喫茶店』(リベラル社)もご覧ください

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プロフィール

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名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する名古屋在住のフリーライター。

雑誌、新聞、Webなどに名古屋情報を発信する。Webガイドサイト「AllAbout」では名古屋ガイドを務める。

著書に『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』の名古屋メシ3部作、『東海珍名所九十九ヶ所巡り』などがある。

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