リニア・鉄道館に行こう(16) 0系で知る接客設備の変遷 2014/5/30

初期のリクライニングしない座席(0系21形)

リニア・鉄道館に保存されている0系をみると、かつての新幹線の接客設備がどのレベルだったかを思い返すことができます。「夢の超特急」としてデビューした0系ですが、その後の日本人の生活レベル向上によって、当時の設備が今の時代に満足できるレベルではなかったことも、そこから知ることができます。

例えば、普通車のシートです。上の写真は、中高年の方には懐かしいシートでしょうが、若い方には初めて見たとか、写真でみたことがあるだけという方も多いことと思います。そのシートは、一見ゆったりとしているように見えますが、実はリクライニングができない構造です。これで当時としては十分だったのですが、いまでは在来線特急でもリクライニング機能があたり前になっていますので、やはり時代の違いを感じさせます。

一方、この登場時の0系で良かったのは、窓が大きいことでした。前後を向かい合わせにしたときに、窓の柱は頭載せ部分に位置していて、窓外を見るとき、視線に柱が入らない大きさとしていたのです。

その代わり、窓周りはステンレス製で、0系後期から今に続く強化プラスチック製の窓周りと比べると、年代物の感は否めません。

新幹線初の普通車リクライニングシート(0系37形…通常、車内は非公開)

昭和30年代から40年代にかけての高度経済成長時代を過ぎると、輸送力増強の時代から、快適さを求める時代へと移行します。その対応としてシートにリクライニング機構を採用する場合、新幹線には大きな問題がありました。

それは、従来のように進行方向によって背ずりの両面を使い分ける転換式シートでは、リクライニング機構が複雑になりすぎて実用的ではないことでした。

在来線特急では、回転式シートを採用することで対応していたのですが、新幹線は海側が3列席です(※6/4修正済)。この3列席を回転させると場所をとるため、前後のシート間隔を広くしなければなりません。ところが、利用者増が続いているかぎり座席定員を減らすことは避けたいところです。

その相反する要求を満たすために考え出されたのが、進行方向にかかわらず座席を固定してしまう方法でした。これであればリクライニング機構を入れられます。

そこで、二つのパターンが考えられました。一つは車両の中央に向かって座る方法、もう一つは車両中央を境に車端に向かって座る方法です。前者を集団見合い式、後者を集団離反式と呼びました。

集団見合い式の長所は、どの乗客からも車端部まで距離があることから、視界が広くなり圧迫感が少ないことです。もちろん、目の前に壁がある車端席がなくなります。一方の集団離反式は、乗客同士の視線が合うことがなく、中央に6人用グループ席ができてしまうこともありません。

国鉄はこの両方式を試作した結果、集団離反式がより好まれるとの結果を得て、0系では1981(昭和56)年以降の新製車3列席に採用しました。ところが、進行方向に座れないことに対する不満は多く、1985(昭和60)年に登場した100系からは3列席の固定が廃止されました。

0系から500系までは、冷水機が搭載されていた(0系21形)

国鉄時代の新幹線に乗った記憶に、車内で自由に飲めた冷水機の思い出がある方は多いのではないでしょうか。筆者もその一人で、平たい紙コップの両端を指で押して汲んだ冷水は、なんだか贅沢なサービスのような気がしたことを覚えています。

ペットボトル飲料の普及と衛生面から廃止された冷水機ですが、リニア・鉄道館ではその往時の姿が見られます。ただし、水も紙コップも入っていないので、見るだけです。

ノーベル平和賞を受賞した故マザー・テレサさんが来日したのは1981(昭和56)年のことでした。新幹線に乗車して冷水機の水を飲んだ際に、紙コップを使い捨てにするのはもったいないとして、丁寧に持ち帰った話はすぐにマスコミが書き立てて話題となりました。そんな冷水機の実物です。

冷水機の周囲は、乗降デッキと車端部の洗面所・トイレとなっています。この一帯の造作も、0系ではステンレス枠が多用されていて、いまの感覚ではちょっと無機質な感じがします。でも、登場時はきっとこれが近未来的だったのでしょうね。

こんなところにも、0系の活躍した「時代」を垣間見ることができます。

※お詫び:6/4に誤記載により、下記修正をいたしました。
【誤】新幹線は山側が3列席です。
 ↓
【正】新幹線は海側が3列席です。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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