これからの女性の働き方−配偶者控除見直しが見送られ− 2014/6/5

アベノミクスでは、少子高齢化が進む中、働き手が少なくなり、経済が低迷したり、年金や医療などの社会保障の担い手が減る(労働力不足)として、女性が働くことを奨励しています。その一つとして、女性の前に立ちはだかる税制と社会保険の「壁」の見直しがまたもや上がりました。

以前「パートと税金」で書いたように、女性の社会進出を阻む2つの壁として、「103万円の壁」と「130万円の壁」があります。103万円は税制の壁、130万円は社会保険の壁です。

専業主婦世帯では、夫の年収から38万円を控除し、課税対象を少なくして所得税を減らすことができる「配偶者控除」があります。103万円を超えると控除の対象からはずれてしまい、所得税がかかってきます。

また妻の年収が130万円以上になると、国民年金や健康保険などの社会保険料を支払わなければならず、約160万円以上の年収がないと手取り収入が増えなくなります。

つまり、これらの「壁」によって女性は働き過ぎないようにセーブしている(パート労働者の33%が回答)ので、働く意欲がそがれていると考え、これらの「壁」をなくそうとしています。今回はまず38万円の控除額を減らす案が出ました。また130万円の壁もその金額を下げる方向で議論されました。

では実際にどのようにしようとしていたのでしょうか。具体的には「配偶者控除」と「基礎控除」(最大38万円)の夫婦の合算を一定にしようと考えています。

今の制度では、妻の年収が65万〜141万円未満の世帯の控除額は、「配偶者控除」38万円+「基礎控除」38万円+妻の「基礎控除」最大38万円なので世帯での控除額は最大114万円となります。専業主婦世帯や共働き世帯の控除額が76万円なので、不公平感のないように今後は妻の働き方で左右されないよう、例えば75万円で統一しようというものです。そうすると妻の年収が65万円〜141万円未満の世帯は増税となります。

現在「配偶者控除」を受けている人は1500万人にのぼります。この提案が適用されると、会社員の夫が受けている「配偶者手当」(103万円以下の基準が多い。平均年17万4000円。配偶者163000円、第1子84000円、第2子72000円)の基準が変わってくるかもしれず、夫の収入が減り、家計に影響がでてきます。

女性が働く機会を広げることはよいことですが、単にお金だけの問題ではありません。保育所や学童保育が整備されていないと長時間働くこともできません。そもそもそんなに長く働きたいのか、あるいは働けるのか?という声もあります。

子どもがいる主婦は、パートの働き方を好んでいることも多いのです。少し早く切り上げて育児や家事に時間をかけたいと思っている女性もいる中、単に「配偶者控除」を見直すだけで女性が労働力不足を補うとは思えません。

5月23日の政府税調委員会では、まだ問題が多いとして具体的な見直しについての結論は見送られましたが、いずれこの問題はまた出てくるでしょう。今後もどのような施策がでてくるかを注視する必要がありそうです。

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岐阜大学教育学部教授・博士

京都市生まれ。ノートルダム女子大学(京都)文学部卒業。大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了。

現在、岐阜大学教育学部教授・博士(学術)、放送大学客員教授。

家庭経済学、家庭経営学、家族関係学、アーミッシュ研究等の講義を担当。

放送大学ではラジオで「生活経済学」の講義を担当(2012〜2016年)。

主な著書 『ちほ先生の家計簿診察室』(名古屋リビング新聞社2002年)、名古屋リビング新聞社、大阪リビング新聞社で家計簿相談を20年ほど担当。

『お金と暮らしの生活術』(昭和堂2012年)、『仕事・所得と資産選択』(放送大学教育振興会2008年)、『アーミッシュの謎』(共訳、論創社1996年)、『アーミッシュの学校』(共訳、論創社2004年)、『アーミッシュの昨日・今日・明日』(共訳、論創社2009年)、『生活経済学』(放送大学教育振興会2012年)など。

趣味:毎日家計簿をつけること。ただし買い物好きなので家計チェックは自分にはあまり生かせていないかも・・・・・

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