夏の大三角 その1 2014/7/2

7月の声とともに春の星座は西に傾き、夏の星座たちが勢力を増してくる。

暑い南風が灰色の雨雲を吹き飛ばしてくれると、待ちに待った梅雨明け・・・といきたいところだが、近年どうも梅雨明けがはっきりしない。かつては「梅雨明け10日」といって、梅雨が明けてから10日間は快晴の日が続いたものなのだが・・・。

ところで、7月の和名は「文月」。七夕にちなんでつけられた呼び名だと言われているが、稲に穂が実る時期だということから、「穂含月」がなまったものだという説もある。しかし文とは手紙のこと。牽牛織女への願い事を書いた手紙か、牽牛と織女の間で交わされた恋文と思う方がロマンがある。

快晴になった夜空には、東から夏の華やかな星座たちが元気よく登場している。春の星座たちは、夏の星座の露払い役であるりゅう座・ヘルクレス座・へびつかい座に蹴散らされ、まだ薄明が残っている西の地平線へと押しやられてしまった。

天の川は北の地平線から始まり、おりひめ星とひこ星の間を流れ、少しづつ幅を広げ濃くなりながら、東へ蛇行してさそり座といて座を浸して南の地平線へと流れて行く。「今年も暑い夏がやってきた」と思う瞬間だ。

夏の大三角は、こと座ノベガ・わし座のアルタイル・はくちょう座のデネブが作る三角。

じれったい薄明が終わり漆黒の闇が包み始める午後8時過ぎ、梅雨明けの東空に細長い三角形を作る三つの明るい星が目に入る。満天の星空の下なら、その三角の間を天の川が流れていることもわかるだろう。この三角が、「夏の大三角」

ベガ−アルタイル−デネブ 

である。

夏の大三角を作る三つの星は、どれも純白の美しい星。ただ明るさは微妙に違う。一番高いところで一番明るく輝く星がこと座のベガ。2番目に明るい星は、ベガの右下で輝くわし座アルタイル。そして3番目の星は、ベガの下で光るはくちょう座のデネブだ。

ベガは、七夕の織姫星でもある。西洋では、真夏の女王と呼ばれている。

ベガの「私を見て見て!」と言わんばかりの輝きには、清楚と高貴が漂っているが、それを裏付けるように「真夏の女王」「夜空のアーク」という名前ももらっている。

しかもほぼ天頂に南中するのだから、「なんて小生意気な星」とさえ思えてしまうのだが、その輝きを目にするとあまりに美しすぎて、すべてを許してしまう。それに、ベガは「真夏の女王」にふさわしい実力と魅力も持っている。

まずベガの明るさは0.0等。等級を数学的に決めたとき、偶然にもベガが0.0等という明るさで、ものさしの基準になってしまった。また、現在の北極星はこぐま座のα星だが、地球の歳差運動により12000年後には、ベガが北極星の座を手にすることが約束されている。

さらに太陽系は、秒速19kmでベガに向かってると聞くと、「ああベガ様、もうどうにでもしてくれ」という気分になってしまいそう。

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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