働きながらがん治療 2014/9/3

ここまで少し専門的な話が続きましたね。創薬化学は私の研究分野なので、お伝えしたいことはたくさんありますが、今日は、がんの創薬研究に携わる者の端くれとして、がん患者の生活について考えてみたいと思います。

今、がんは二人に一人が生涯でかかる可能性がある病気ですから、誰にとっても決して他人事ではありません。

働き盛りにがんにかかったら
厚労省の調査によれば、現在働きながらがん治療を受けている人は全国で約32万5千人に上り、一方で就労可能な年齢でがんに罹患し、仕事を辞めている人は、毎年少なくとも20万人以上いるとみられています。

がん患者の就労・就労支援の現状

もし働きながら治療を受ける事が可能なら、治療費のこと、生活のこと、家族のこと、仕事のこと・・・様々なことを考えて、多くの方がそれを望むでしょう。

事実、がん対策に関する世論調査によれば50%の人ががんによって就労困難になった際の相談・支援体制の整備を要望しています。

現在では副作用の少ない分子標的薬が多く開発され、副作用を軽減するくすりもあることから、がんセンターを初め全国の多くの病院に通院治療センターが開設され、患者の生活の質(QOL)を尊重した外来化学療法が積極的に行われています。

また放射線治療も多くの場合、外来治療が可能であり、最先端の重粒子線治療も通院で行われています。このように、働きながら受けられるがん治療の選択肢は複数あるのです。

がん患者の就労支援
先日、キャンサーソリューションズ 代表の桜井なおみさんのお話を伺う機会がありました。

桜井さんは、ご自身もがんサバイバー(がん体験者)であり、その経験から、がん罹患をめぐる様々な課題を解決して、がん患者が自立して生きられる社会をつくろうという強い信念のもと、がん患者の就労支援を行う会社を設立し、様々な活動を行っています。

その中で、がんにかかると、患者本人だけでなく患者を支える家族の仕事も影響をうけ、社会的、経済的な損失は甚大で、国としての対策が緊急の課題であることを強く訴えておられます。

一方、国も遅ればせながら今年の2月に、「がん患者・経験者の就労支援の在り方に関する検討会」を厚労省に発足させ、桜井さんもそのメンバーに選ばれております。そして、つい先日、8月20日にその報告書がまとめられ、公開されました。

それによれば、本年6月に閣議決定されたがん対策推進基本計画の重点課題として「働く世代へのがん対策」が位置づけられ、3年以内にがん患者らの就労に関するニーズや課題を明らかにし、社会的理解の推進や就労支援策を講じることが提言されました。

また、各地でがん対策推進条例制定の動きが活発になっており、すでに34都道府県でがん対策に関する条令が制定され、内容も徐々に進化しています。

さらに、がん患者の生活や就労を支援する様々なサポート体制も構築されています。( がん情報サービス参照)

がんは不治の病ではありません。がんと共に働き、生きる・・・そういう時代が始まっています。

永澤秀子 岐阜薬科大学教授

岐阜薬科大学卒業、京都大学大学院薬学研究科修了(薬学博士)後、慶應大学医学部助手、ジョン・ホプキンス大学客員助教授、徳島大学工学部助教授を経て2006年より岐阜薬科大学教授。日本女性科学者の会 (SJWS) 理事。

現在、創薬化学大講座薬化学研究室を主宰し、総勢28名のスタッフと学生を率いてがんの創薬、ケミカルバイオロジー研究を行っています。

本ブログでは私たちの研究室のメインテーマでもある「創薬」の話題から、薬がどのように生み出され、私たちのもとに届けられるかをわかりやすくお伝えします。

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