リニア・鉄道館に行こう(21) 国電の始祖モハ1形式 2014/11/16

名古屋工場で修復した直後のモハ1形式 [1997.1.14撮影]

国電という言葉をご存知でしょうか。

国鉄時代に、首都圏と京阪神などの通勤用電車が走る区間を総称していました。ただし、通勤用でも中距離電車は対象でなく、山手線・京浜東北線・中央線といった3扉以上のロングシート車が長い編成を連ね各駅停車で頻繁に走る区間を指していました。また、その区間を走る電車も国電と呼ばれていました。

その国電の始祖といわれるのが、リニア・鉄道館に展示されているモハ1形式モハ1035です。

モハ1形式は大正時代に3期に分けて製造されていますが、その2期目にあたる1921(大正10)年に製造されたモハ1026-1058のうちの1両です。1期目にはなかった、乗務員室への独立した扉が設けられています。

客室は3扉ロングシートで、つり革がズラッと並んでいる形が、その後の国電の基本形となったことから、国電の始祖と呼ばれているのです。

なお、製造当初は国鉄ではなく鉄道省だったため、省電とか省線と呼ばれていました。また、1920(大正9)年の鉄道省発足以前は鉄道院で、院電とか院線と呼ばれています。国電と呼ばれるようになったのは、戦後に国鉄が発足してからのことです。

そのため、国鉄がJRになった際には国電に代わる呼称としてE電が考案されましたが、これは定着せず死語となり、それに代わる言葉も見当たりません。

室内も、製造当初のとおりに復元されている。

リニア・鉄道館のモハ1035は、鉄道省が製造した木造電車で唯一現存するものです。首都圏で活躍後に、飯田線の前身の一つである三信鉄道に譲渡され、その後、大井川鉄道に移ったうえで廃車となりました。それをJR東海が譲受して、1997(平成9)年に名古屋工場で原形へと復元しました。

復元後は飯田線の伊那松島運輸区の庫内で保存され、イベント時に公開されていましたが、リニア・鉄道館が開設されるにあたり移動してきたものです。

車内に入ると、木造車だけに木目がきれいで、ほれぼれとするほどです。ずらりと並んだつり革の上には、明かりとりのためのモニター窓が並んでいます。このために、外観ではダブルルーフとなっているわけです。

また、いまや絶滅の危機に瀕している網棚もあります。最近は網棚と呼ばず荷物棚とか荷棚と呼ぶことが増えているようですが、網棚の語源となった昭和時代までの網を編んだ荷棚は、ぜひいまも若い方々にも見ていただき、認識して欲しいところです。

驚くほど簡素な運転台

先に、モハ1形式では乗務員室が独立した扉を有するようになったと記しましたが、そこにある運転台は、上の写真のとおり驚くほど簡素なものです。機器類のシンプルさはもとより、椅子も実にシンプルなことが判ります。

写真には写っていませんが、乗務員室扉の上部には扉開閉装置もありません。というのも、大正時代にはドアエンジンがなく、扉は手動で開け閉めしていたためです。冷房装置ももちろんないため、運転席前方の窓が客室窓と同様に開けられるようになっていることも、写真から見て取れます。ワイパーがないのも、いまとなっては不思議ですよね。

連結器は当初から自動連結器で登場していますが、これもモハ1形式の2期目の製造車からで、1期目の車両は、2期目が製造された時期に自動連結器へと付け替えられています。

このように、まさに発展途上の段階にあった電車の様子を、現物を目の前にして理解できるのが、リニア・鉄道館の楽しさであり有意義さといってよいでしょう。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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