おおいぬ座とこいぬ座 2015/2/19

2月中旬午後8時ごろの冬の星空 

最も寒さを感じる2月、オリオン座が南の空で誇らしげにその雄姿を飾り、その周りを6つの1等星が取り巻いている。冬の星空は、どの季節のよりも美しい。

オリオン座の三つ星を南東の方向に延ばしてゆくと、ギラギラと青白く輝く、ものすごく明るい星にぶつかる。おおいぬ座のα星シリウスだ。等級はなんと-1.5等。1等星よりもさらに9倍以上も明るい星なのだ。

シリウスとは、“焼きこがすもの”という意味で、このすさまじい明るさをみごとに象徴している。また中国では、“天狼”と呼んで、獲物を狙うおおかみの、ぎらぎらした目を表している。

シリウスは、星座をつくっている星(恒星)の中で最も明るい。その明るさは-1.5等

ところで、古代エジプトでは、日の出直前にシリウスが昇るときを、新年と決めていた。つまり古代エジプトでは、1年が365日の太陽暦をすでに使っていたのである。

また日の出とともにシリウスが昇るころになると、ナイル川が洪水となって上流から肥沃な土を運んでくるということを告げる星として重要視されていた。

さて、シリウスが輝く星座を、おおいぬ座と呼んでいる。誕生はギリシャ時代になってからのことで、他の星座に比べると新しい部類に入る。以前からシリウスのことをキオン(犬の星)と呼んでいたことから、おおいぬ座ができあがったらしい。

おおいぬ座は、ギリシャ神話では絶対獲物を逃がさない猟犬ラレプスの姿

ギリシャ神話では、どんな獲物でも絶対に捕まえるレラプスという猟犬として登場する。ある日国中の牧場や畑をあらしまわる、大ギツネが現われた。しかもどんな罠を仕掛けようと、どうしても捕まえることができない。

そこで、猟犬レラプスが放たれた。ところが何日たっても、レラプスはそのキツネを捕まえることができなかった。なぜならこのキツネは、絶対に捕まらない運命を持ったキツネだったからだ。

いつまでも決着のつかないレースにあきれた大神ゼウスは、2匹とも石に変えて、レラプスだけを天に上げて星にしたということだ。

こいぬ座のプロキオンとシリウスとベテルギウスを結んでできる三角形が「冬の大三角」

冬の大三角をつくるオリオン座の赤い1等星ベテルギウスとおおいぬ座のシリウスと、もうひとつの1等星が、こいぬ座のプロキオンだ。 こいぬ座には、プロキオンのほかに三等星がひとつあるだけで、小犬の姿を描くことは難しい。おそらくおおいぬ座と対比させる意味で、おおいぬ座とともに生まれたのだろう。

プロキオンとは、犬の前という意味だが、古代エジプトでは、ナイル川の氾濫を告げるシリウスよりほんの少し先に昇るプロキオンを、まえぶれの星として大切にしていた。

凍てつく夜空を元気に駆ける2匹の犬を見上げながら、1年の健康を願うことにしよう。

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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