日本で唯一の焙煎士【大坊勝次氏】焙煎講座 2015/4/22

旧 大坊珈琲店:大坊勝次氏

いつもありがとうございます。先回はコーヒーを選ぶときに最も重要な焙煎のお話をさせていただきました。

近年はコーヒーブームと言われています。また、自家焙煎ブームともいわれていて、多くの方々が自家焙煎の店をオープンしたり、趣味として自分で焙煎をして楽しんでいます。

私が33年前に自家焙煎を始めたきっかけは、当時取引していた大手ロースターK社では、焙煎後すぐの新鮮な豆が入手できず、仕方なしに「自家焙煎店」という未知の世界に足を踏み込んだのです。

当時は今のようにインターネットもなく、あるのは唯一「喫茶店経営(柴田書店)」という月刊誌だけでした。店の営業がありましたので修業に行くこともできず、その少ない本の情報だけを頼りに、誰にも教わることなく始めました。若いって恐ろしいですね!今から考えるとぞっとするような無謀な事を平気でしたものです。

当然うまくいくわけもなく試行錯誤と失敗の日々でした。

一番大変だったことは、肝心の良質な生豆(なままめ)が手に入いらないという事でした。当時、コーヒー事情は大手ロースターの独占状態でしたので、自家焙煎店(マイクロロースター)は小さいながらも同業者になるのですから、どこも生豆を分けてくれませんでした。また、そういった圧力などで商社などからも買うことが出来ませんでした。

唯一買うことが出来たのは、商売にはまったく関係のない地域、東京や横浜などの離れた都市のロースターからでした。しかし、良い豆はなかなか分けていただけず苦労しました。なかには詐欺のような会社もあり、まったくいい加減な豆を高い値段で買わされたりもしました。
今思えば、そんな貴重な生豆でしたので、必死に豆の面や香りを観察し勉強し修得したように思います。

しかし、それも経験!と割り切って必死にやっていると、世の中は捨てたものではありませんね。ちゃんと助けてくれる方が現れるのです。良い豆や情報を提供してくれる横浜のロースターの工場長(井沢さん)に出会うことが出来ました。今でも親切に面倒を見ていただいた方々の御恩は忘れることがありません。

焙煎は本当に難しく毎日が勉強と経験の毎日でした。自家焙煎の珈琲店を生業としていましたので、むしろ、楽しいというより苦しいということが多かったように思います。今の方々は、何でも簡単にそろいますので本当に恵まれていると思います。

生豆はどんなものでもネットで買えますし、焙煎機にしても世界のありとあらゆる機種が実践してから買うことが出来ますし、焙煎にしてもある過ぎるくらいの情報があります。

当時、焙煎を志す方は、ほとんどの方が200gほど焙煎できる手網焙煎器か500gほど焙煎できるサンプルロースターといわれている手回しロースターから始め、焙煎を覚えたたものでした。

それらでうまく焙煎できるようになると、その後、3kgや5kg、10kg焙煎可能な機械式の焙煎機(日本に2社しかなくてどちらかから選ぶしかありませんでしたが・・)を購入して機械焙煎でコーヒー豆の豆売り販売を始めるという道筋でした。

「手網一年、手回し一年」

私は、自家焙煎店を目指し習いたいと訪ねてくる方に必ず課す課題です。今は、焙煎セミナーなどという職があり、専門家が素人にいきなり機械焙煎を指導して1週間くらいですべてを習得させ、その後、機械の提供から、豆の提供や開店の手伝いまで、すべてのノウハウをお金だけ出せば親切丁寧に教えてくれます。

実際、全国にはそういった多くの自家焙煎の店が数多くオープンしています。もちろん新鮮で良いコーヒーを提供する店が出来るのですから悪いことではありません。

ただ、珈琲の基礎となる知識と経験が不足していますので、教えていただいた味創り、焙煎しかできません。新しい味創りや自分の味創りを目指そうと思うと応用が利かず、自分の焙煎を目指した時に行き詰まってしまうように感じます。

植物でもそうですが、大きくなるには、まず、地を耕し、根をしっかり張る事から始めないと成長はありませんね。

地を耕し、しっかり根を張る土台を造ることは大変な労力ですし、時期(四季)というものがありますので時間がかかります。その部分が将来的には最も重要となるのです。

手で焙煎する工程は、全神経、五感を使って行いますので、土台をしっかり作ることが出来、焙煎のなんたるかを教えてくれます。こう言っていると

「いまはそんな時代ではないですよ!」
「何を面倒で古臭いことを!」

などと反発を食う時代でもありますが、物を創造(クリエイト)するということは進めば進むほど、知れば知るほど大変になります。

初めのうちはいろいろなことが簡単に進んでいくのですが、進めば進むほど世界が広がり、自分自身が何処に行ったらよいのか途方に暮れる時が来ます。その時に自ら考え経験した指標をしっかり持った(身に付けた)方は迷うことがありませんので、常に前に進むことが出来ますが、教わっただけで指標を身に付けていない方は迷います。迷うと人間は止まります。一度迷うと茶畑に入ったようにゴールが何処すらも分からなくなります。

実は、焙煎にはこれで良いというゴールはないのですが、それすら混とんとしてしまうのです。

先日、東京から、大坊勝次氏をお呼びして「焙煎講座」を4月6,7日と二回行いました。一回に15名ずつで募集したのですが、私の珈琲教室の生徒さんで満員になりましたので、ここでは紹介できず残念でした。

大坊氏の愛機 特注1kg手廻しロースター

大坊さんは38年前、自家焙煎を目指して、多くの方(私も・・)が行った手回しのサンプルロースターを購入して始めたそうです。通常はその後、機械焙煎機に移行するのですが、何年たっても大型の機械焙煎に移行せず、とうとう38年間、店を閉店するまでそのサンプルロースターで、多くの方々に感動を与え賞賛されるコーヒーを提供しました。

言葉にすれば簡単ですが、38年間、それも一日5時間も自ら回し続けるということは、それだけでも誰にも真似できない本当に大変なことなのです。誰にも教わることもなく、ただひたすら自分の五感で感じながら豆と対話し経験を積んでいく・・・、相当な体力と気力がいる作業です。

日本で唯一の焙煎士と言えるのでしょう!なぜなら、実際にそれをやった方は今迄に誰もいないのですから。

当日は、大坊氏の愛用の焙煎機を持ち込み、実際に焙煎機を回しながらいろいろな事を語っていただきました。出来上がったコーヒーはすぐに大坊さんに淹れていただき全員で飲みました。その後、大坊氏が東京から持ってきたブレンドをもう一杯飲みました。

参加された方は、大坊氏の歴史と技と情熱をしっかりと目に焼き付け心に留め舌に記憶したことでしょう。機械焙煎の全盛期に、すべてが手創りの手間も暇もかかる極上の珈琲を堪能した「至福の時間」でした。

ありがとうございました。

岡希太郎氏の新刊コミック 「珈琲一杯の元気」

【予告】
「珈琲と健康、ドリップコーヒーの秘密のお話」
講師:岡希太郎(東京薬科大学名誉教授)
日にち:4月28日(火曜日)
時 間:7:00〜9:00
場 所:待夢珈琲店
参加費:1000円(ギシルコーヒー付き)
定 員:50名(定員になり次第締め切ります)

電話予約でお願いします。待夢珈琲店(0572-68-7516)まで。

コーヒーの効用を語らせたらこの方の右に出る方はいません。コーヒーと健康の著書もたくさん出版されていて、3月20日には「珈琲一杯の元気」という コーヒーコミック本まで出版されました。

岡希太郎「珈琲一杯の元気(直筆サイン入り)」は当店にて販売しています。価格:700円(税別)

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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