<第16話>昭和の大横綱との思い出(中) 2015/6/27

名実ともに「柏鵬時代」がやってきました。
初対決は昭和35年1月。柏戸は小結2場所目で、大鵬は新入幕の初日から快進撃の11連勝で迎えた12日目。めまぐるしい攻防の末、柏戸が下手出し投げで先輩の貫禄を見せました。

昭和35年1月場所の初対決

柏戸が大関になったのが35年9月場所。翌11月場所は大鵬が13勝2敗で初優勝を果たし、20歳6カ月の史上最年少(当時)で大関に昇進しました。

その後も2人は熾烈な出世争いを繰り広げ、昭和36年9月場所では大鵬、柏戸、平幕明武谷の優勝決定戦で大鵬が優勝し、場所後に柏戸と横綱に同時昇進しました。

昭和36年9月場所の優勝決定戦、うっちゃりで大鵬(右)に軍配

大鵬が21歳3カ月、柏戸22歳9カ月の若い横綱の誕生です。栃錦も若乃花も30歳を過ぎてから綱を張ったのとは好対照です。

好敵手がいたからこそ、お互いがより光り輝くことができた。大鵬にとって柏戸は恩人であり、柏戸にとっても大鵬は恩人だったわけです。おまけに2人がそろって横綱になったのですから。はじめは先輩格の柏戸のほうが強かった。対戦成績でも柏戸のほうがリードしていましたが、大鵬はあっという間に並んで追い越します。
柏戸は横綱になったものの、けがや故障がちで休場が続きます。大鵬は昭和37年7月場所から6連覇を達成し、柏戸に大きく水を開けました。「柏鵬時代」と沸き立つ中、大横綱への道を歩んでいきます。

「柏鵬時代」といって忘れられないのは、昭和38年9月場所の千秋楽です。柏戸はリハビリから3場所ぶりに復活し、無欲で土俵にのぞんだ結果が14連勝。大鵬はすでに11回の優勝を誇り、一歩抜きん出て、優勝してしかるべき存在として見られての14連勝。その両者が結びの一番で土つかずのまま対戦することになったのです。横綱同士の全勝対決は昭和35年3月場所の栃若以来でした。

昭和38年9月場所千秋楽、柏戸の復活優勝の瞬間

この大一番は柏戸が渾身の寄りで勝って、16場所ぶり2度目の優勝を全勝で飾りました。
大方の予想では、当然、大鵬が勝つだろうと見られていました。「自分は何度も優勝していたので、私の時代、大鵬時代と思っていた。それが柏戸関に負けた。恥ずかしい。慢心していた。奢りがあった」と大鵬はしみじみと述懐していました。

自分とさらに向き合い、より大きな存在にしていった場所なんです。大鵬の相撲人生を語る上で、終生忘れることのできない一番だったと語っています。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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