リニア・鉄道館に行こう(27) スハ43形優等客車 2015/7/5

リニア・鉄道館に保存されているスハ43形321

華やかな車両がならぶリニア・鉄道館において、少々地味な雰囲気があるこのスハ43形客車ですが、かつて特急「つばめ」に使用されたこともある形式です。

戦後に優等列車が再び走ることになって設計・新製された車両のうちの一形式で、リニア・鉄道館のスハ43形321は、1954(昭和29)年に新潟鉄工所で造られたものです。当時は蒸気機関車牽引が当たり前でしたので、この茶色い塗装が基本でした。

その後、電車や気動車が登場すると、スハ43形の設備は見劣りするようになります。この頃には、電気機関車やディーゼル機関車が牽引するようになっていましたので、1961(昭和36)年からの近代化工事に合わせて、より明るい青い車体へと塗り替えられていきます。

客室窓の上下に、ウィンドウ・シル,ヘッダーと呼ばれる補強板が付けられていることが上の写真で判ります。20mの長い車体が、中央で垂れ下がったりすることがないようにと付けられたもので、その後に登場する10系軽量客車や、20系以降の新系列客車からは見られなくなるものです。

余談ですが、上の写真の客車の手前に、踏切装置が写っていますよね。これは、2012(平成24)年6月30日まで、熱田駅の南約400mのところにあった御田踏切で使われていた、JR東海最後の手動踏切です。

台車からのベルトドライブによる発電装置

客車は機関車に牽引される車両ですので、独自に電源をもっていません。しかし、室内灯・尾灯・車内放送などに使う電気は必要ですので、自前で発電していました。台車の車軸にベルトを巻き付けて、発電機を回すのです。ここで発電された電気は、いったん蓄電池に蓄えられた上で使われていたのです。

リニア・鉄道館のスハ43形は、そのベルトドライブによる車軸発電機の様子を直に観察しやすいようにと、照明で明るくしてあります。見過ごしがちな装置ですが、同館に行ったら、ぜひ忘れずに見てきて下さいね。

ボックスシートが並ぶ車内。丸型の蛍光灯と扇風機が見られる

車内をみてみましょう。座席はボックスシートですが、優等列車用に前後幅を従来より15mm拡大して、向かい合って座る人との間に少しゆとりをもたせています。廊下側に頭もたせがついているのも、優等列車用ならではです。

天井には丸型の蛍光灯が2列に並んでいるので、当時としてはかなり明るい車内となっていました。一方、いまや珍しくなった網棚と扇風機がついているところも見逃せないところでしょう。これらは、1964(昭和39)年にオハ47形98となっていた当時の様子を再現しているそうです。

座席の窓側下部には、栓抜きと灰皿がある

上の写真は、ボックス席の窓側にあるテーブルの下部を撮影したものです。左下に「JNR」マークのついた灰皿が見えます。当時は、喫煙が当たり前で、禁煙車などありませんでした。そこで、各座席にはこのように灰皿が用意されていたのです。いまも古い車両に残っていることがありますが、かなり珍しくなっていますよね。

その灰皿のすぐ上、テーブルの下部に突起物が見えます。いまの若い方だと、これが何なのか理解できないのではないでしょうか。飲料水が瓶入りだったころ、その瓶の栓(王冠と呼んでいました)を抜くためについていた栓抜きです。

清涼飲料水は、缶入りを経ていまやペットボトルで販売されるのがあたりまえとなっていますが、ビールはもちろんのこと、ジュースもコーラも瓶入りだった頃、この栓抜きは長距離旅客にとっての必需品でした。

いまでは、この栓抜きがついている車両を走らせている鉄道に行くツアーで、敢えて瓶入りの飲料を調達して、栓抜き体験をさせるような旅行会社の鉄道ツアーも時折見られます。これも、時代を感じさせるものですよね。

リニア・鉄道館では、栓抜きと灰皿も見落とさないようにしてください。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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