<第18話>名古屋場所、白鵬優勝の可能性90% 2015/7/10

今年の名古屋場所は照ノ富士が新大関として土俵に上がることで、大きな期待が寄せられています。大関は通過点としてすぐにでも横綱を狙える逸材だからです。
先場所の優勝の勢いを持続できるかどうか。プロの世界は甘くないから、連続優勝というのは難しいでしょう。

朝稽古で汗を流す照ノ富士

ただ、最後まで優勝争いに残るだけの活躍は十分期待できるので、横綱への足がかりは作ると見ています。対戦相手も研究し、「打倒照ノ富士」に燃えるはずで、攻めに徹した相撲をどれだけ取れるか。受け身になると、やられますよ。腰が伸びてしまうから。攻められても一呼吸入れて、残す気持ちが大事。引いたり、叩いたりしないことです。

一方、先場所最後まで優勝すると思われていた白鵬が思いがけず、4敗もしてしまったのは意外でした。気持ちの強い横綱だから、きっと巻き返しを図るに違いありません。35回目の優勝を成し遂げる可能性は90%あると見ています。本気で集中力を高めて、場所に臨んでくれるかに注目しています。
途中で負けが続いたりすると、気持ちが以前と違ってくるのではないかと、心配はしますが。

稀勢の里と稽古する白鵬

問題は鶴竜と日馬富士です。
鶴竜は2場所休場し、土俵から遠ざかっているだけにかなり厳しいことを覚悟しなければならない。進退を懸けるくらいの気持ちで臨まざるをえないでしょう。
日馬富士は、主武器である右の突き放しを信条とするだけに、右ひじを手術したことがかなり堪えるのではないでしょうか。下から押し上げて、右手をまっすぐ伸ばして突き上げる、その腕が果たしてどこまで力強く伸びるか。それがかなわないときは前途多難です。
2横綱の成績如何では、相撲の地図がガラガラッと変わってしまうこともあります。

あとは日本人の優勝に期待したいですね。稀勢の里が果たして、名古屋場所でどれだけ頑張るか。先場所もあと一つ勝っていれば優勝決定戦だったのに、予想外の相手に星を取りこぼす相撲は情けない。ムラがあるのが壁を破れない最大の理由ですが、とにかく慌てないこと。勝とうという気持ちが強すぎて、日本中の「横綱の期待」を背負わされているのは気の毒な面もあるが、そこを乗り越えてこそ真価が発揮できるのです。早く壁を破ってほしい。名古屋場所と秋場所あたりが正念場です。ここで答えが出せないと、一気に世代交代が訪れるでしょう。

昨年の名古屋場所で土俵を沸かせた豪栄道と琴奨菊ですが、その後、不振なのは歯がゆいばかりです。琴奨菊は目一杯の相撲を取っていますが、満身創痍の状態だから、大きな期待を寄せるのは酷です。一番でも多く、得意のがぶり寄りを見せてほしい。豪栄道はもっと勝てるはずの大関。気持ちがはやりすぎて、焦りが負けにつながっています。せっかくの粘り腰と重心の低さを生かした投げ技があるのだから、もっとどっしり構えてほしい。そうすれば2桁以上十分勝てます。

遠藤は先場所強行出場して6番勝ったのが自信になっているでしょう。相撲勘も戻っています。番付が前頭12枚目とかなり下がっていますから、2桁勝たないとおかしいです。それだけのものは十分持ち合わせています。うまくいけば11勝、12勝、優勝争いするぐらいの力はあるはず。相撲の取り口が正攻法で、常に前に出る気持ちがある力士なので、先場所終盤あれだけ頑張れたのだと思います。三役と対戦しても互角に戦える力士ですから、「台風の目」になる可能性はあります。

巻き返しを期す遠藤

逸ノ城は、体重をあと10キロ絞り込めば変わってくると思います。今でもそこそこ勝ちますが、大勝ちするかといえば、まだ難しい。
相撲界では、入門して稽古、稽古、稽古で鍛え、いったん減量してから太ると強くなる、本物になると言われています。今のままでは時間がかかるでしょう。けっして変化したり、引いたりしないこと。どんどん前に出ること。一度逃げて勝つと、癖になりますから。

名古屋場所というのは、北の湖や千代の富士が場所後、横綱に昇進したのをはじめ、平幕優勝があったり、数々の歴史的な出来事が生まれています。今場所はどんな盛り上がりを見せてくれるのか、大いに期待しましょう。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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