<第21話>平成の大横綱 金字塔への道(2) 2015/8/15

白鵬は体質的に出世すべくして生まれた申し子のような力士です。それに至るまでは、一途に本筋の稽古をしてきました。単調単純ですが、繰り返しを飽きることなく続けることが出世への道なのです。
いまは稽古量が減った、減ったと言われています。事実、減っていますが、それを補って余りある四股、鉄砲の準備運動をじつに入念にやっています。相手を求めて、取っ組み合いの稽古も大事ですが、汗をしっかりかく、基本に沿った身体づくりも大切なのです。

丹念に四股を踏む白鵬

旭天鵬も40歳になって、事前の準備運動をものすごくやっていました。白鵬はそれを上回るだけの準備運動をやっています。彼と話をしていると出てくる言葉は「事前の準備運動を丹念にやっている」です。はっきりと言い切っています。
20代前半のころの稽古とは質、良とも変わっているのです。

いま角界で最も稽古量をこなしているのは稀勢の里です。だれに聞いてもそう答えます。ただ、質が足りない。工夫が足りない。

熱のこもった稽古をする白鵬と稀勢の里

その点、白鵬は行き届いています。稽古の量も大事ですが、質も問われるのです。稀勢の里が歯がゆい理由です。本人もわかっているんですよ。応用力、目的意識が大切なんです。千代の富士もそうでした。琴風対策など徹底していた。ああいう人はそういません。押し相撲に弱かったからと負けん気が強く、対策を練ったんですね。それで開眼したのです。

白鵬の特徴はケガや故障がきわめて少ない。
ただ、大関になる前、九州場所前に足を骨折して休場しましたが、あれは悔しかったでしょうね。私は博多・吉塚の彼の宿舎に見舞いに行ったのですが、10畳ぐらいの部屋にカーテンを閉めて薄暗くして、お父さんが隣で一緒に寝ていたんですよ。足に包帯を巻いていた姿は忘れられないですね。まさに失意の底にいる顔でした。モンゴルから心配してお父さんと2人だけで、いい男が、いい大人がねぇ。色気もなにもなかったですよ。

白鵬のケガらしいケガは、そのときだけですから。
最近、肘にサポーターを巻いていることはありますが、下半身は故障らしい故障がありません。丈夫で長持ちするわけですよ。
よくうっちゃりを多用する力士は足首を痛めることもありますが、白鵬はうっちゃりで勝つ相撲はほとんどなく、自分から攻めて勝っていますから、ケガや故障が少ないのです。受けに回って、逆襲を試みる力士はケガや故障が多いですね。

彼の負けた相撲は、思いがけず前に落ちたり、自分から寄って勢い余って土俵を割るという相撲ですから。足首をねじったり、無理して踏ん張って負ける相撲はありません。類いまれな彼の特徴です。柔軟さ、下半身の柔らかさが今日を作っていると思います。

とにかく研究熱心ですね。稽古の中で工夫する。ちゃんと考えながら、稽古の質を向上させているのです。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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