<第23話>平成の大横綱 金字塔への道(4) 2015/8/29

白鵬は「日本人以上の日本人」と言われますが、素直で謙虚な性格や彼を支え続けた奥さんの存在が大きいと思います。学習意欲が人の何倍もある。大相撲の深い歴史を調べたり、勉強をしているのです。

一番印象に残っているのは、平成18年3月場所後に大関に昇進したのですが、その伝達式での口上です。彼は「全身全霊」という言葉を使いました。そこで、本人に会って、直接聞いてみたのです。

2006年3月場所後の大関昇進伝達式で口上を述べる白鵬

「全身全霊という言葉はだれかに使うように言われたのですか」という問いに対し、「いいえ。3つ4つ選んで考えました。その結果、あの言葉を自分で選びました」と答えたのです。さらに問いかけました。「同じような意味合いで、もっと難しい言葉を使った人がいますが」と言葉を止めたのです。
彼の顔を見ました。すぐ返ってきたのが「不惜身命、貴乃花さんですね」。その回答に私は驚きました。この男はすごい賢い力士だなぁと。いかに彼が学習しているかですよ。
「全身全霊」は一般的にわかってもらえる言葉ですが、「不惜身命」はお寺のお坊さんじゃなきゃ言いません。彼は「不惜身命」の意味もわかっていたのです。「全身全霊」の深い意味も理解した上で、口上で使ったのです。

国技といわれる大相撲の伝承されてきた部分がどういうところにあるかということも彼は十分わかっています。平成26年11月場所で大鵬の優勝回数32回に並んだときの優勝インタビューにも私は感心しました。

「この国の魂と相撲の神様が認めてくれたから、この結果があります」

大鵬に並ぶ32度目の優勝を決め、涙をぬぐう白鵬。「この国の魂と相撲の神様が認めてくれたから、この結果があります」とインタビューで答えた(共同)

日本の風土、文化、伝承をしっかり学んでいる証でしょう。日本人でも言えない言葉。日本人以上の日本人だと言われる所以です。

32回優勝した日に、「これまでの優勝の中で一番印象に残っているのは?」との質問に「それはきょうですよ」とスパッと答えたんですね。「基本をしっかりやってきたからです」とも言いました。
そのときに「もうこれ以上はありません。これからはどれだけ維持することができるか。皆さんが応援してくださることによって、モチベーションが上がります」と珍しく横文字を使いましたね。

「昭和の大横綱は大鵬さんと言われますが」と話を振ると「平成では自分」と言い切りました。それぐらいの自負を持っているってことですよ。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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