名古屋市地下鉄 東山線初の冷房車が引退に 2015/8/29

さよならマークを掲げて走る5000形

名古屋市営地下鉄の東山線は、かつて「黄電(きいでん)」と呼ばれる真っ黄色の電車ばかりでした。名古屋市出身の画家・杉本健吉氏が、昭和32(1957)年11月に名古屋で地下鉄が走りはじめるにあたり、地下だけに明るい色が良いだろうと選んだ、ウィンザーイエローと呼ばれる「菜種色」でした。

当時の電車には、冷房装置が積まれていませんでした。特に地下鉄は、地下は涼しいとの理由と、いったん暖まってしまうと冷やすことができないという理由で、全国的に冷房装置は積まれないことになっていました。

その流れを変えて、東山線に冷房車が登場したのは昭和55(1980)年7月のことでした。5000形という銀色の車体で、それまで黄色い車体ばかりだった東山線においては、異彩を放つ存在でした。

また、新車であると同時に、冷房車であることもその車体色を見れば一目瞭然でしたから、当時の東山線利用者はたいそう喜んだものでした。

その5000形は最大で23編成まで増えましたが、いまや最後の1編成が残るだけとなり、その編成も8月30日のさよなら運転をもって引退することになりました。

いま、その最後の5000形が、「さよなら5000形」と書いたヘッドマークをつけて走っています。

左:車体側面の案内 右:ヘッドマーク

上の写真の右側が、そのヘッドマークを拡大したものです。さよなら運転がある8月30日を記したうえで、右下に「35年間ありがとう」とも記してあります。1980年7月〜2015年8月ですから、ちょうど35年間になります。

写真の左側は、その最終編成の側面にある出入り扉近くに貼ってある案内です。後半に、

東山線初の冷房車
東山線最後のチョッパ制御車

と記してあります。冷房車であることは前述しましたが、「チョッパ制御」というのは、鉄道趣味をそれなりにされている方でないと耳慣れない用語ではないでしょうか。

むかし、プロレスラーのジャイアント馬場氏が「空手チョップ」という技を使っていましたが、あの「チョップ」の変化形が「チョッパ」です。切り刻むというような意味で、電気を必要な量だけ切り刻んでモーターに届ける制御方法のことをいいます。多く切り刻まれた電気は電力量が弱く、刻む量を減らしていくにつれて大電力となります。

半導体が進化する中で登場した抵抗制御に変わる制御方式でしたが、いまではパワーエレクトロニクスの分野がさらに進化しましたので、使われなくなった技術です。

左:5050形 右:N1000形

5000形を引き継ぐ東山線の車両は、この5050形とN1000形の2形式です。どちらもステンレス車体ですので、ちょっとキラキラとした見た目です。5000形はアルミ車体なので、鈍い光り方をしていました。

制御方式はどちらもVVVFインバータ制御と呼ばれるもので、半導体を使って電圧と電流を小刻みに変えていく制御方式で、5000形のチョッパ制御よりもさらに省エネになりました。さらに、回生制動という、モーターを発電機にすることでブレーキをかけるとともに電気をつくる仕組みも備えています。最新のハイブリッド自動車が備えて、走行距離を伸ばしている装置です。

この分野では、自動車よりも鉄道車両の方が、早くから実用化をしていたことがお分かりいただけると思います。ちなみに、5050形の登場は平成4(1992)年、N1000形の登場は平成19(2007)年です。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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