アレルギーを克服するために (4) 気管支喘息と吸入ステロイド 2015/9/10

呼吸をするときの空気の通り道を気道といい、気管から肺までを下気道と呼びます。気管支喘息は慢性的な下気道の炎症が特徴の疾患であり、気道平滑筋が種々の刺激に対して過敏に反応して収縮し、気道を狭くして呼吸困難を誘発します。

気管支喘息は代表的なアレルギー疾患ですが、アレルゲンに対する IgE 抗体が病態形成に関わるアトピー型とアレルゲンの関与が確認できない非アトピー型とが区別されます。

いずれの場合にも気道は過敏に反応して呼吸困難を誘発し、重症の場合には、狭くなった気道を粘度の高い痰が塞ぎ、死に至ることもあります。

最近、気管支喘息の患者さんの薬物治療に対する満足度が高くなってきました。また、喘息発作で救急搬送される患者さんの数も、喘息で亡くなる患者さんの数も減少しています。

その背景には、吸入ステロイドが使用されるようになったこと、治療ガイドラインが作られ、どこでも適切な薬物治療が受けられるようになったことがあると思われます。

では、吸入ステロイドとはどのようなステロイドでしょうか。ステロイドは炎症を強力に抑制しますが、いろいろな副作用を発現することも知られており、副作用を心配して使用を敬遠する患者さんも少なくありません。

吸入ステロイドは副作用の発現を小さくするように工夫されたステロイドで、アンテドラッグと呼ばれます。

体内へ吸収された後も安定で効果が持続する薬が良い薬であると考えがちですが、吸収後に速やかに失活するステロイド (アンテドラッグ) は全身性の副作用の軽減に効果的です。なお、体内に吸収された後に代謝されて活性体になる薬をプロドラッグといいます。

吸入によって気道に到達したステロイド (アンテドラッグ) は組織中へ浸透し、その場で効果を発揮します。一部の薬物は気道に分布する血管の中へも浸透し、血液に入って全身に運ばれますが、循環する間に速やかに代謝されて効果を失います。

血液中へ薬物が取り込まれることを吸収といいますが、アンテドラッグは吸収されると壊されやすく作られており、適用した部位以外ではほとんど作用を示しません。従来のステロイドに比較すると全身性の副作用は大幅に軽減されています。

ステロイドは病気を治してしまう薬物ではありませんが、炎症を抑制する効果が確実で強力ですので、副作用を軽減する工夫をしながら上手に使うことが大切です。

稲垣直樹 薬学博士 岐阜薬科大学薬理学研究室教授

岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了後、岐阜薬科大学助手に採用 (薬理学)。講師、助教授を経て平成 17 年教授昇任。平成 19 年より岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科教授を兼担。薬学博士。

岐阜薬科大学薬理学研究室は昨年開講 50 周年を迎えました。開講当初よりアレルギーの基礎研究を継続しており、実験動物を用いて病態モデルを作成し、病態モデルを用いて治療薬の開発を目指しています。特にアトピー性皮膚炎に伴う痒みに関心を持っています。

本ブログではアレルギーについて理解を深めていただくため、いくつかの話題を取り上げ、簡単にご紹介いたします。

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